日本から活動弁士が来米、小津映画上映会

 小津安二郎(1903〜1963)監督生誕120周年を記念した映画上映会「OZU120」が29日(木)まで、フィルムフォーラム(ウエストハウストン通り209番地)で開催されている。(国際交流基金とフィルムフォーラムの共催) 

貴重なサイレント映画15本を含めた現存するすべての作品30本以上を紹介する特集で、大多数の作品を35ミリで上映している。

片岡一郎氏

 19日(月)と20日(火)は、日本から活動弁士の片岡一郎氏を招いた上映会も決定した。片岡さんは1977年東京生まれ。日本大学芸術学部演劇学科を卒業。02年、活動写真弁士の第一人者である澤登翠に入門。レパートリーは日本映画・洋画・中国映画・アニメ・記録映画と多岐に渡り、総演目数は約350作品。執筆や舞台出演、声優業もこなす。2019年のNHK大河ドラマ『いだてん』や、同年に周防正行監督による映画『カツベン』にて出演、時代考証、活動弁士の実演指導をした。

 片岡さんは、19日午後8時15分から『生まれてはみたけれど(I was born, but…)』と『突貫小僧(A straight for ward)』の2本立て、20日は午後6時20分から『その夜の妻(That night’s  wife)』にて語りを披露する。また、19日はNY在住の無声映画伴奏家、松村牧亜さんがピアノの即興演奏をおこなう。

 入場料は一般30ドル、会員20ドル。チケット・詳細はウェブサイトhttps://filmforum.orgを参照。

OZU120 活動弁士上映作品

▽生れてはみたけれど(1930年)=19日(月)午後8時15分=写真=

 小津監督のサイレント期を代表する傑作で、サラリーマン社会の悲哀を子供の視点から描いた喜劇映画。良一と啓二の父は、重役の岩崎の近くに引っ越して出世のチャンスをうかがっている。だが兄弟の前では厳格そのもの。引っ越しで転校した兄弟は悪ガキ仲間と友達になり一緒に遊ぶようになる。ある日みんなで「うちの父ちゃんが一番えらい」と自慢する話が出る。兄弟も自分の父親が一番えらいと信じて疑わなかったが、ある日、岩崎の家へ行って見せてもらった16ミリ映画の中で、父は岩崎の前でお世辞を言い、動物のまねまでしてご機嫌伺いをしていた。

▽突貫小僧(29年)=19日(月)2本立て

 路地で子どもたちがかくれんぼで遊んでいる。そこへやって来た人さらいの文吉、子どもたちのひとり鉄坊に目をつけて「楽しいところへ連れていってあげよう」と鉄坊を連れ出す。その途中、鉄坊がぐずり出し、菓子パンやらおもちゃを買い与えてようやくおとなしくさせた。しかし今度は変装用の付けひげをむしり取られるなどのいたずらに手を焼く。警官が近くにいることもあって文吉は気が気でない。文吉はようやく親分の権寅のところに鉄坊を連れてきたが、腕白ぶりを発揮し、悪さのし放題。「どこかへ捨ててきてしまえ」という権寅に、文吉は再び元の場所まで鉄坊を連れて戻る。 

▽その夜の妻(32年)= 20日(火)午後6時20分

 雑誌『新青年』1930年3月号に掲載されたオスカー・シスゴールの短編小説『九時から九時まで』を原作に野田高梧が脚色した作品。橋爪周二は病床に伏している娘みち子の治療費を工面するため、ビジネス街に拳銃強盗に入る。金を盗みだした後、追う警官隊から逃れタクシーで妻子の待つ家へ向かう。周二は妻のまゆみに奪った金を渡し、みち子の病気が治ったら自首すると告げる。その時、周二が乗って来たタクシーの運転手が訪ねてくる。実はタクシーの運転手に変装した刑事の香川だった。