「エクス・マキナ」「アナイアレーション」など近未来の闇をスリル満点に描き出すアレックス・ガーランド監督の最新作。
分裂したアメリカを舞台に抑制されていたイデオロギー、あるいは単に溜まっていた不満が爆発したのか文明社会は根本から揺さぶられていく。ジャーナリストたちはこの大きな歴史的瞬間の記録を残そうと奮闘する。映画を見る観客は彼らの視点を通し、SFの世界というより近い将来の起こりうる現実を疑似体験することになる。
ガーランドは脚本も担当、主人公のジャーナリスト、リーには「メランコリア」(2011年)でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞しているキルステン・ダンストが円熟味のある演技を見せる。共演はケイリー・スピーニー、ワグナネウ・モーラら。
権威主義的大統領が長期在任し、アメリカはもはや一つの国として機能せず次々と政権から離反する州が出始める。中でもカリフォルニアとテキサスは反乱軍を結成し、ワシントンDC目掛けて進軍中だ。
戦場カメラマンのリー(ダンスト)とロイター通信の同僚ジョエル(モーラ)はニューヨークでの惨状を取材した後、DCに向けて出発する。反乱軍がホワイトハウスを襲撃する前にDC入りし、大統領がこの状況にどう立ち向かうのか、自分たちの目で確かめるためだ。
2人で行くはずだったが、ニューヨークタイムズ紙のベテラン記者サミーとフォトジャーナリストを目指すジェシーも同行することになる。途中、彼らが目にするアメリカはさまざまな形の対立を写しだす。人種への偏見をもろに出し暴力行為が平然と行われる町、自衛力を持ってノンポリを決め込み、まるで何事もなかったかのような暮らしをしている町もあった。リーたちはその全てにレンズを向ける。
合衆国の崩壊が始まる過程やカリフォルニア、テキサスという政治色が相反するブルーステートとレッドステートの連合がいかなる理由で生まれたのかなどは観客の想像にゆだねられているが、ポピュリズムを含む政治はもとより、人種差別、反ユダヤ主義や反イスラム教徒の宗教問題、中絶問題など多種多様の社会問題を抱えるアメリカの現状を見れば想像する材料は十分だ。1時間49分、R。(明)
■上映館■
Regal E-Walk 4DX & RPX
247 W. 42nd St.
AMC Empire 25
234 West 42nd St.
AMC Loews 34th Street 14
312 W. 34th St.