高齢者社会化が進む近未来の日本。75歳で生死を選択できる制度が始まるという想定の映画『PLAN75』がニューヨークで4月21日に公開され、23日まで早川千絵監督が観客との質疑応答に参加した。
早川監督がまず、本作は老人問題ではなく弱者に不寛容になってきた日本社会について描きたかったこと、2016年に日本で起こった身障者施設での45人殺傷事件に特に衝撃を受けたとを語った。フィリピンから来て日本の介護施設で働いている若い女性が登場人物の一人だが、日本社会で失われているコミュニティや家族のつながりが日本在のフィリピン人たちの間にある対比を描きたかったと述べた。
会場を埋めた観客からは、家族の力が強いフィリピン社会ではプラン75のような制度は創られないだろうとフィリピン人が語っていたインタビュー記事を読んだが、このアメリカでは日本のように起こりうるだろう、アメリカ人として身近な問題に感じられたという意見が出た。監督は、海外で上映して来て色々な国で、映画で描かれているようなことが起きるだろうという感想が出たことを紹介した。
日本社会は若者より老人を優先して老人に対して親切だという印象を持っていたというアメリカ人に対して監督は、最近の日本では国はいざとなったら助けないので自己責任で対処するようにというメッセージが強くなって来ているように感じていると答えた。
プラン75制度の担当者は応募者数を確保するノルマがあるのかという質問に対して監督は、応募者数を増やせば表彰されるという設定だと答えた。
撮影や音楽が素晴らしかったという感想に対して、撮影の浦田秀穂はシンガポール在、音楽のレミ・ブーバルはフランス人で、二人とも登場人物から距離を置き観察するスタイルで、センチメンタルにならないように留意したそうだ。
会場外でも監督と話をしたい観客が途切れず、上映後も長い間監督は観客に囲まれていた。(平野共余子)
同映画は好評のため、グリニッチビレッジのIFCセンター(6番街323番地)で5月11日(木)まで上映期間が延長になった。
(写真)上映劇場IFCの前に立つ早川監督(4月21日、写真・木元美佳)