高野菜々NYライブ

広島の平和も堂々と熱唱

 1年間のニューヨークでの文化庁新進芸術家海外研修をしてきた俳優でプロデューサーの高野菜々が、帰国前の総仕上げとなるライブコンサートを17日、ニューヨークのヘルズキッチンにあるライブハウス「ドント・テル・ママ」で行った。

 ステージで、14歳の時にミュージカル「キャッツ」を観て、あまりの衝撃に全身が震えたのを覚えていて「こっち(客席)じゃなくて、あっち(舞台上)に行くんだ」とその瞬間ミュージカル俳優になることを決意したエピソードなどを披露しながら、宝塚歌劇団入団の希望は、かなわなかったが広島音楽高校を卒業後に東京を拠点に全国で活動してオリジナルミュージカルを創作する音楽座ミュージカルの俳優兼プロデューサーとして自分の夢を叶えてきたことなどを紹介した。 

 ライブの第1部は、ミュージカルCATSの主題歌や虹色のシャボン玉を美しい歌声で会場を魅了した。実は、公演前に高野はある選曲で悩んでいた。自分は広島生まれの歌手・エンターテイナーとしての自負から素直に「日本のオリジナル作品を世界に発信することだけでなく故郷広島で育ち感じた平和の尊さをミュージカル作品を通して発信すること」と心の中で常日頃思っていることを正直にストレートに話したい。しかしその思いが、広島の原爆「アトミック・ボム」をエンターテインメントの舞台で出すことが、果たして当地で受け入れられるのか、アメリカの世論の中に根強い「戦争終結のための正当な手段」という考え方を支持する人を刺激するのではないかと。

 しかし高野は静かに「過去は変えられないが、未来は変えられる」と前置きして、原爆で犠牲になった人への想いを綴った「1本のえんぴつ」を心を込めてそして堂々と歌った。会場から大きな拍手を受けた。

 第2部は、札幌出身の若手アルトサックス奏者として米国で活躍している寺久保エレナがゲスト出演し、ジャズのナンバーなどを披露した。高野はこの春に帰国し、9月にはミュージカル『生きる』(企画制作・ホリプロ)にヒロイン役での出演が決まっている。(三)