1940年代末から60年代にかけた冷戦期にポーランド、ベルリン、パリ、ユーゴスラビアを舞台に繰り広げられる哀愁のラブストーリー。アカデミー外国語映画賞を受賞した。「Ida」(イーダ、2013年)のパヴェウ・パブリコフスキ監督が「イーダ」同様モノクロで描き出す詩的情景が心に響く。
禁断の恋でもなければ純愛でもない大人の恋物語。その情熱は時を経てもよどみなくあふれる。時には切なく、時には嬉々と心弾む愛の形だ。昨年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞。今年のアカデミー賞でも外国語映画賞にノミネートされており、アルフォンソ・キュアロン監督の「Roma」や是枝裕和監督の「万引き家族」などとオスカーを争う。
主人公はピアニストで音楽監督のヴィクターと歌手のズーラ。ズーラにはポーランドの人気女優ヨハンナ・クーリグ。「Elles」(ラヴァーズ・ダイアリー、11年)でポーランドのアカデミー賞助演女優賞を初め、ヨーロッパでは数々の賞を受賞。ヴィクターには渋さと甘さを併せ持つ身長2メートル近いトーマス・コット。クーリグとの相性も抜群だ。
ヴィクターは伝統的な音楽、ダンスなどのアートパーフォーマンス楽団の依頼でポーランドの田舎をまわり、若きメンバーを集めていた。オーディションでヴィクターの目を引いたのはズーラだ。歌も踊りも並みだったが彼女が放つエネルギーと自信そしてある種の魅惑が入団を決めた。
ズーラは過去に暴力をふるう父親に怪我をさせ女子少年院に送られたことがある。そんな家庭環境だからこそ、早く家を出たくてオーディションを受けたのだ。チャンスをつかんだズーラは歌も踊りもめきめき上達しグループの花形となった。
ヴィクターとスーラはいわば教師と生徒の間柄だが二人はすぐに恋に落ちた。しかしポーランド統一労働者党が主導する共産主義時代の中で楽団の上演作品にもっとソ連色を強めるよう圧力がかかるようになりヴィクターは西側に逃げようと決意する。むろんズーラも一緒にだ。しかし、舞台後、約束の場所に遂にズーラは現れなかった。以降、二人の15年間にわたる関わりは時と場所を変えながら不思議な進行を続ける。1時間半。R。
(明)
■上映館■ AMC Empire 25 234 West 42nd St. Cinepolis Chelsea 260 W. 23rd St. City Cinemas 1, 2 & 3 1001 Third Ave.