【編集後記】 みなさん、こんにちは。ニューヨークで公演された蜷川幸雄演出の「王女メデイア」「Ninagawa マクベス」、野田秀樹演出の「彗星の使者」BAM公演、セントラルパークでの梅若六郎による薪能。どれもが、日本の伝統文化と現代芸術を見事に表現した舞台。それら数々の話題の舞台をプロデュースした演劇プロデューサーの仙石紀子さんが9月30日、ニューヨークの病院で亡くなられました。享年83歳でした。今週号の1面に速報と社会面5面にカタガミ・ユーコさんによる追悼記事が掲載されていますのでぜひご覧ください。厳しい批評眼を持つニューヨーカーに本物の日本の古典芸能や先端芸術を紹介しただけでなく、「オズの魔法使い」「ビッグ・リバー」などブロードウエーの秀作を日本に紹介しました。そして、イーストビレッジにあるラ・ママ実験劇場の財政危機時にはNPO法人を立ち上げ支援しました。日本からやって来る多くの若手製作者たちの作品の本紙記事にも快く舞台評やコメントを数多くいただきました。1970年代から2000年までの20世紀後半の4分の1が、勢いのあった日本の芸術文化の大きな一つの塊の時代だったように思えます。インターネットも携帯もない時代、その真ん中の時間をニューヨークから日米交流に尽力されました。今より不便な時代だったのに、なんだか舞台のスポットライト、役者の表情、仙石さんの声、どれもが焼き付くように記憶に残っています。現代の便利この上ないYouTubeにはない、不便だけれどもリアルな舞台の魅力をきっと誰よりも感じてライフワークとして生き遂げた方でした。仙石さん、ありがとうございました。天国で安らかにおやすみください。「三浦さん、まだ、間に合う?」締め切り間際にかかってくる電話の声が聞こえるようです。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)