【編集後記】 みなさん、こんにちは。ひと頃、電子書籍ブームで、猫も杓子も本が発行されれば電子書籍化というムードがあり、個性溢れる街の独立系書店、個人経営の書店がどんどんと看板を下ろして、さらにここ3年のコロナ禍のパンデミックの波で大型書店の閉店が続いていました。ところが最近、そんなここ数年の流れに逆行するように、NYを中心に米国で書店復活の兆しが鮮明になってきています。大手書店のバーンズ&ノーブルが、コロナ禍で閉店したアッパーイーストサイド店を新たなロケーションで7月12日に再オープンすると発表しました。同社の出店規模は、2009年から19年まで年に1、2店舗程度でしたが、今年はすでに16店舗が開店し、NY市内で年内に新たに30店舗をオープンする予定です。NYタイムズの報道によると米国内で過去数年に新規オープンした個人経営の書店は300店舗を超え、今後2年間でさらに約200店舗がオープンすると推定されているそうです。そういえば、最近は、朝、夜のメトロノースの郊外通勤電車の中で、タブレットやキンドルではなく、本を開いて座席でゆっくり読書しているに人の姿を以前よりも多く見るようになりました。本を開くと活字がある。それは英語であれ、日本語であれ、紙に印刷(プリント・印字)されていて、今この文字、文章を見ているのは自分しかいない。誰かと同時この文章を共有はしていない。まるでレコード針を落として音楽を一人で聴いているような気分になります。きっと読書は個人的な愉しみなのかもしれません。そんなせいか、書店の棚の品揃えにも変化が見られるようです。今週号の1面に記事が出ています。私は今、同じ今週号の10面の書評を書いた常盤新平訳の「新版」『O・ヘンリー ラブ・ストーリーズ 恋人たちのいる風景』をゆっくりとページをめくりながら楽しんでいます。懐かしい『賢者の贈り物』だけでなく、初めて出会うストーリーを紙の印刷で読めることに喜びを感じています。なぜなら、そのページを開くと、印刷された言葉は、消えずにずっと、削除されることなく永遠にそこにあるからです。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)