【編集後記】 みなさん、こんにちは。深刻なヘイトクライムが止まりません。暴行行為をする人のみならず、事件場面に居合わせながらも何もしない人たちが多いことが問題となっています(本紙今週号12面に詳報)。3月29日にはミッドタウン西43丁目360番地で65歳のフィリピン系の女性が男に蹴るなどの暴行を繰り返されて地面に倒される事件がありました。当時、現場前のビルにドアマン2人が勤務していましたが、暴行を阻止することや911に連絡するなどの行動を起こさず、さらには迷惑が被らないように、犯人が立ち去った直後ドアを閉めてしまいました。その時、被害者の女性はまだ歩道に倒れたままでしたが、駆け寄って助け起こすことはしなかったのです。翌日午後、事件があったビル前でマンハッタン区長が記者会見し、市内アジア系コミュニティー団体のメンバーたちが差別に対する抗議スピーチを行い、日系のスキ・ポーツさんが「アジア系社会への無関心、無視が差別の元凶だ」と怒りをあらわに強く訴えました。アジアコミュニティーの中で何かあっても「ジャパニーズ」の顔が見えないと常日頃思っていましたが、久々に「日本・日系人」の発言が、アメリカ社会が注視する事件の中心でクローズアップされたのはとても心強いものがありました。犯人は31日早朝、事件現場に近い西40丁目のホームレスシェルターで逮捕されました。NYPDのヘイトクライム特別捜査班は現在までに30件以上のアジア系住民に対する事件を捜査しているとのことです。ニューヨーク総領事館が犯罪被害に遭わないためのアドバイスを以下の項目で発表しています。参考にされてください。(1)アジア系住民を狙った犯罪が増えているので、外出時は可能な限り、一人ではなく、複数人で行動する。(2)コロナ禍以降、暴力事件等が発生しても感染への恐怖から周囲の支援が得られない可能性がある。 (3)地下鉄は可能な限り避け、バスの利用を推奨する(シティバイク等も有効な移動手段)。 (4)地下鉄を利用する際は、ホーム中央付近に設置されているMTAサインボード等の近くで待つようにする(線路突き落とし事案防止、犯人から逃げる際の障壁として利用可能)。 (5)MTAサインボードが近くに無い場合は、壁際やMTA職員から見通せる場所で待つ。(6)駅構内に交番があるときは、警察官の所在を確認してその近くで待つ。 (7)可能な限り車掌が乗っている車両を選んで乗車する。ドアを叩くことで車内の異常を伝えることができ、車掌の通報で早期対処が見込まれる。(8)公共交通機関利用中には、周囲の状況把握ができないおそれがあるので、けっして携帯電話の画面を注視しないこと。 ということだそうです。私もマンハッタンの歩道を歩いていて前から不審者風の人が歩いて来るのが見えると、いきなり殴られたり、襲われたりしないか、かなり警戒しながらの毎日です。特に最近は歩いている人の誰もが不審者に見えて困ります。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)