先月米国に住む男性から「海外に住んでいると、妻は将来国民年金を受給できなくなるのか心配です」との相談がありました。今回はこの問題を取り上げます。
日本では昨年12月「外国人労働者受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法」が成立し、本年4月1日から施行されます。実は政府はこの受け入れ拡大に備えて、保険料負担なしで年金を受け取れる「第3被保険者」となるためには日本国内居住(日本に住んでいること)を要件とすることを考えており、早ければ本年に国民年金法の改正の方向で検討に入ったと報道されています。
この記事を読まれて、将来米国に住む妻が国民年金を受け取れなくなるのではと懸念されているわけです。そこで第3被保険者制度についてご説明します。
国民年金の加入者は第1号被保険者(自営業者、学生等)、第2号被保険者(サラリーマン・OL、公務員)、第3号被保険者(会社勤務者の配偶者)に分かれます。第3号被保険者の制度が始まったのは1986年4月からです。厚生年金に加入する会社員(例えば夫の場合)が扶養する配偶者(妻)は国民年金の「第3被保険者」と呼ばれ、保険料を支払う必要はなく国民年金に加入しています。国民年金第3号被保険者の保険料は、配偶者の加入する被用者年金制度(厚生年金)から拠出金として負担されており、ご主人がご夫婦二人分の保険料を納めているわけではありません。そして国民年金の第1号被保険者には国内居住要件があります。つまり日本国内に住んでいることが加入の条件となります。ですから海外から国民年金に加入する場合は第1号被保険者ではなく任意加入者と呼ばれるわけです。第2号、第3号被保険者には国内居住要件はありません。
そこで現在外国人労働者の配偶者が海外に住んでいても、将来国民年金を受給できる状況となっています。このまま外国人労働者を大量に受け入れると、将来日本の年金財政への影響が大きいことが懸念されています。政府は現在健康保険が適用される扶養家族を原則国内に居住する人に限る方針を固めており、年金も同様に、国内に住む配偶者を対象とする必要があると判断し国民年金法の改正を検討しているということです。
以上が第3号被保険者の説明ですが、日本でサラリーマンの妻としてつまり第3号被保険者として国民年金に加入されていた方は既に保険料納付期間が確定されており、それ以降どこに住んでいようと関係なく受給年齢の65歳になれば国民年金を受給することができます。ですからご質問された方のご心配は必要ありません。ただ将来日本のサラリーマンの妻が海外に居住の場合、妻は第3号被保険者になれないことが起こるかもしれません。時代の流れと共に年金制度も変化していきます。
海外年金相談センター 市川俊治 https://nenkinichikawa.org E-mail: shunjiichikawa@gmail.com 〒162-0067 東京都新宿区富久町15番1-2711号 Tel&Fax 03-3226-3240