パム・グラウト・著
サンマーク出版・刊
本書は、言い訳ばかりする自分から脱却し、本当にやりたいことをするためのノウハウを1年かけて教えてくれる本だ。
アメリカの田舎、カンザスという小さい町で牧師の娘として育ち、成績は常にオールA。どこから見てもマジメな優等生だった本書の著者パム・グラウトは、幼いころから自由で情熱的な人生を夢見ていた。時折突拍子もないことをしては周囲を楽しませるような少女だったが、大人になり働くようになると、そういった行動を控えるようになる。しかし、次第に本当の自分を隠し退屈な自分を演じることに息苦しさを感じるようになり、もっとワクワクするような人生を送ることを目標に掲げ会社を辞める。
その後の著者はというと、ニューヨークタイムズ・ベストセラー作家となった。これまでに著作が18冊あり、脚本を7作も手がけ、2つのアイフォーン・アプリを製作した。彼女はいま、本当の自分を取り戻し、ワクワクするような体験をしているようだ。
私たちの誰もが、「本当の自分」を持っている。今から1年間、読者は自身の創造性を高め、「本当の自分」を取り戻す旅をすることになる。自由になった読者は、まったく新しい自分を発見し、今までとは違う目で世界を眺めるようになるだろう。冒頭でも述べたように、本書は自由になるための本で、アートのすべてを網羅している。1週間に1つずつプロジェクトを実行していき、1年を通して全部で52個をこなすことになる。プロジェクトは、文章を書くこともあれば、絵を描くこともある。パフォーマンスアートに挑戦することもあれば、歌うこともある。もちろん、新しいビジネスを発明することも立派なアートである。
「やりたいことがあるが時間がない」という言葉をよく聞く。私自身、良く使ってしまう言い訳だが、SNSに写真を投稿したり、友人とチャットしたり、スマホゲームをする時間はあるのに、時間がないとはどういうことだろうか。それは筆者によると、やっかいな「完璧主義」のせいだという。特にその完璧主義は大人になるほど顕著で、例えばあなたが絵を描きたいと思ったらまずどうするか。本格的な画材道具を揃えて、絵画教室に通わなきゃいけない、でもそんな時間は日々仕事や家事に追われていてないから、もっと余裕ができてからしよう、などと考えてしまってはいないだろうか。
思い出してほしいのだが、幼いころは誰でも、絵を描きたいと思ったらいつでも描けたはずだ。鉛筆やクレヨンなど描けるものはなんでも握って、紙やアスファルト、時には家の壁紙までもキャンバスにして好きな色で描きたいものを描けたのだ。創造があふれていた。
もしあなたが今、とてもやりたいことがあって、でも先述のような「完璧主義」のせいでなかなか始められていないのだとしたら、今すぐに本書のプロジェクトに取り組んでみてほしい。1年後には必ずやりたいことをしている、本当の自分になれているはずだ。(西口あや)