しゅわぶ美智子・著
IBCパブリッシング・刊
日本人は、英語がうまく話せない。と言うより、言語能力よりもそもそもコミュニケーション能力が低いのではないか。そんな思いにいくつかのストレートな答えを出してくれる本だ。
アメリカで異文化コミュニケーションのコンサルタントとして長く活動してきた著者のしゅわぶさんは、この本をまず、英語で執筆した。それを日本語に和訳して日英対訳の形で日本人向けの本としてまとめている。なので、直訳英語で話すと、誤解を招くことがある。文化に起因する誤解を避けるための言い回しや、視線などの非言語コミュニケーション、また対話向上へのヒントに加え、日本人が陥りがちな「きちんとした英語を話す」ことへの恐怖心を解きほぐすエッセンスを盛り込んで紹介している。
初対面の人と何を話すか。日本人から「あなたはメキシコ料理が好きですか」といきなり唐突に聞かれたとする。聞かれた方はまず、「え、なんで?」「どうしてそんなことを聞くんですか」と思うのが普通。その質問の裏にあるココロは何?となる。それが分からないと的外れな答えをするのが怖いから。ところが、アメリカ生活が長い読者の方なら経験あると思うが、アメリカ人だったら、とにかく聞かれたことに素早く機転の効いたジョークも入れて会話のキャッチボールを始めてしまう。で、永遠とメキシコ料理の話をしているのかと思うと、そうではなく、「義母がやけに好きで、親戚が集まるといつも大騒ぎなんだ、子供が集まると親は教育ローンの話題で持ちきりなんだ」といった具合に話題はどんどんそこから発展していく。
電車の中で切符を切る車掌が乗客と延々と会話を楽しんでいる光景なども日本人なら違和感を感じるが、要はそこが超えなくてはならないカルチャーの要衝なのかもしれない。
文化の違う様々な地域で相手との信頼関係を構築する究極の方法はまず、失敗を恐れず、相手の文化に興味を持ち、その好奇心を梃に積極性をもってその地域の人たちと交流する姿勢が大切だと説く。
また、お互いの文化の強みを合わせ、多様性を受け入れることでさらに交流を深化させる知恵へとアップグレードとしてゆき、失敗を恐れず、失敗から偏見へと傾斜せず、お互いの異なる文化という2点を結び付けていくことが大切だと説く。1992年に青山学院大学大学院を修了後来米。ニューヨークで会社勤めをした後、97年から大学院で専攻した異文化ビジネスを生かし、異文化コンサルタント、トレーナー、コーチとして活躍している。
「日本人の英語対話力は向上しつつあるが、世界の英語力が急激に伸び、その結果、日本人は分かりにくいという評判がますます定着しつつあることに危惧を抱いた」のが執筆の動機だそうだ。(三浦)