ケント・ギルバート・著
祥伝社新書・刊
本書は2017年に単行本にて刊行された『中韓がむさぼり続ける「反日」という名の毒饅頭』(悟空出版)に加筆・修正を加えて新書化したものだ。著者のケント・ギルバート氏は「日本だったら何を言っても許されると思うな。中国、韓国こそ、歴史を直視せよ」と豪語する。「反日」の根本にあるものを探り、その目的を読み説くための一冊。アメリカ人の立場から冷静に、中国共産党の成り立ちと侵略の歴史、韓国が仕掛ける反日歴史戦を紐とき、東アジア情勢や日本の役割を分析している。
同氏は、中国は国内外での非道な振るまいをひた隠し、共産党への不満のガス抜きの道具として、また、韓国は、国内政治闘争の手段として「反日」を使っていると述べる。「はたして、中国と日本のどちらが真実を言っているのか、韓国と日本のどちらが民主的なのか、いまこそ国際社会に訴える時だ」と緊迫する香港情勢、米中貿易戦争など最新のトピックを交え、改憲論にも一石を投じている。
習近平国家主席は、2018年3月に憲法を改正して事実上の「皇帝」と化し、世界の恐怖感が一層高まった。中国人も恐らく内心ではそうだろう。米国では、中国共産党による米国からの知的財産の盗み出しが一向にやまず、再三の抗議にも関わらず改善しないため、鉄鋼製品を皮きりとして関税を上乗せしたり、AIや通信などの技術から中国企業を除外したりし始め「米中貿易戦争」という争いが始まっている。
米国と中国の軋轢が高まっているなかで、中国と日本の関係はむしろ逆に比較的、緩慢ながらも一時の領有権をめぐる対立時からみても一歩後退している状態に見える。
そして、韓国では、2018年10月に大法院(最高裁)で日本製鉄や11月には三菱重工に元「徴用工」に損害賠償を命じる判決が確定し、1965年の日韓基本条約や日韓請求権協定で定めていたはずの事柄を実質的に無効化し始めている。著者は「近いうちに、日本企業の在韓資産が現金化されるかもしれない」と危惧する。
このほかにも15年の「慰安婦合意」の実質無効化や韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への「レーダー照射」事件、日本の戦略物資三品目の対韓国輸出規制強化に対する「日本製品不買運動」やそれへの対抗措置としての日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄をちらつかせるなど、一直線に反日への道を歩み続けた。
日韓についてはメディアもさかんに史上最悪の状態と報道しているが、著者は、「韓国の反日など、いくら日本人が頭にきても、よほどのことでもない限り、放置しておいても構わないものなのに対し、中国が現在、表面上反日色を抑えているからといって決して油断してはならない」と警告する。「一帯一路」をはじめとする政策、そして他国に対する態度や考え方は「世界秩序を揺るがす危険なものだ」と警鐘を鳴らす。日本の中から見えるアメリカ人の視点による中国・韓国分析として興味深い。(三)