【編集後記】

【編集後記】



みなさん、こんにちは。ニューヨーク日系人会(JAA)の第54回奨学金授与式が5月31日にハーバードクラブで行われ、今年の秋から米国の大学に進学する若者14人に総額7万8000ドルの奨学金が贈られました。当日のゲストスピーカーには日本の高校時代に学年のビリから1年間で偏差値を40上げて慶應義塾大学に現役合格し、この夏、2年間留学したコロンビア大学大学院をオールAで修了した小林さやかさんが、勉強することで得る人生の喜びについて講演しました。今週号5面で掲載しています。それによると、小林さんは、これまで500回以上の講演に招かれて体験談を語っているそうで、コロンビア大学大学院で2年間過ごして感じたことは、日本の社会が、若者にとって自信を持てない社会であることだそうです。教師も親も生徒や自分の子供を、謙遜したつもりで人前で「うちの子なんて」と他人に卑下して話したりすることがあるが、それがどれほど子供本人の心を傷つけるか大人は知るべきだと。ニューヨークは真逆で誰もが自信にみなぎっていると。「頑張ればできるという挑戦の精神を持って、達成感を味わうことこそが、本当の幸せ、ハピネスである」とも述べていました。確かにお金も自由もないのは現実問題としては辛いですが、お金と自由があっても、何もすることがないのはきっともっと辛いかもしれません。小林さんのように難関大学を見事突破した時の達成感、幸せ感は相当なものだったと思います。受験も今は昔、試験とは縁遠くなってしまった人も、身近な好きなことで何か目標を設定さえできれば、他人と比較する必要のないセルフハピネスを手に入れられるかもしれませんね。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2024年6月8日号)

(1)トランプ氏有罪の背景と影響  1面と4面

(2)ハリソン笑顔で日本祭り大盛況  1面

(3)「進撃の巨人」10月NY上演 チケット発売開始  3面

(4)オーバーツーリズム批判と文化摩擦  4面

(5)第54回JAA奨学金 新大学生14人に授与  5面

(6)TOKYOの今を売る  STUDIOUS  TOKYO   7面

(7)源吉兆庵五番街店オープン 洋風新商品も  8面

(8)中川直人の9.11 作品「森の星たち」語る  10面

(9)つげ義春の妻が描いた絵日記  11面 BOOKS

(10)訪米武士の子孫NYでジャズ歌手 大久保真理さん  19面

トランプ氏有罪の背景と影響

大統領選前提の評決

 トランプ前米大統領が不倫の口止め料を不正に会計処理したとされる事件で、ニューヨーク州地裁の陪審は5月30日に有罪評決を下した。これを受けて量刑を決める審理が7月11日に行われる。トランプ氏は31日、記者会見し、「不正な裁判」であり「口止め料ではなく秘密保持契約だった。完全に合法で、誰でもやる一般的なものだ」と改めて無罪を主張、控訴する意向を示した。

 一方、バイデン大統領は31日、「法の上に立つ者はいないという米国の原則が再確認された。評決が気に入らないからといって、不正だと言うのは無謀であり、危険で無責任だ」と述べた。

 ニューヨーク州の場合、業務記録改ざんの量刑は最高で4年とされている。多くの法律関係者が、トランプ氏のような過去に犯罪歴がなく、業務記録改ざんの罪で起訴された人物が刑務所に送られることは極めて珍しく、罰金刑などがより一般的だとしている。しかしホアン・マーシャン裁判長が量刑を決めるにあたり、2016年の選挙との関係を踏まえた業務記録改ざんの重大性を考慮するのではと言われている。

 トランプ氏は刑事事件で有罪評決を受けた、米国史上初の大統領経験者となったが、米国の憲法の大統領選の立候補の条件に犯罪歴による制限はなく、有罪になっても出馬できることから11月の大統領選に向けて立候補は継続する。トランプ氏とバイデン氏が合意した6月27日開催の第1回大統領候補者討論会も予定通り行われるものと見られる。

 事実上の一騎打ちとなる11月の大統領選に向けて、トランプ氏とバイデン氏の支持率は拮抗している。リアルクリアポリテックスが算出している5月10日から31日までの9つの世論調査平均では、トランプ氏46・9%、バイデン46・3%でその差0・6%。ケネディ、スタイン、ウエスト候補を入れた場合でトランプ41・9%、バイデン39・7%とその差2・2%。評決前のABCの世論調査では、トランプ支持者のうち有罪であれば4%が支持をやめる、16%が考えると回答しており、裁判が与える影響は無視できない状況だ。

 トランプ氏に対するダメージは大きいと見られるものの、トランプ陣営によれば評決からの24時間でオンラインでの小口献金が5280万ドル(約83億円)に達したという。またその3分の1が新規参加者だという。有罪評決が支持者の結束を強めている格好だ。

  軽犯罪か重犯罪か

 

 トランプ氏は2016年大統領選挙期間中、当時の顧問弁護士マイケル・コーエン氏(2018年に税法違反や詐欺、選挙資金法違反などで有罪となり3年間服役。刑期は終了)を介してポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏に不倫の口止め料として13万ドルを支払った。口止め料だったことを隠すため、トランプ氏が業務記録の改ざんを承認したとされる。ニューヨーク州法では口止め料自体は違法ではなく、また業務記録の改ざんは「軽犯罪」に過ぎない。せいぜい罰金刑止まり。 法律専門家からはトランプ氏が抱える4つの裁判のなかでも、重罪とするには「無理筋」との声が少なからずある。「進歩派」を自認するボストン大学ロースクールのジェド・シュガーマン教授はニューヨーク・タイムズに4月23日に寄稿した一文で、「ニューヨーク州の判例には、一般市民を欺いたという解釈を認めた例はない」と指摘、「このような広範な『選挙干渉』理論は前例がない」などと疑問を呈している。

州最高裁が最終判断か

トランプ氏の有罪評決

 トランプ氏の弁護団は陪審裁判をスタテンアイランド区で行うことを希望したが却下され、予定通りマンハッタン区で行われることになり、選ばれた12人の陪審員が審理した。評決は全員一致でなくてはならず、一人でも反対すると陪審裁判やり直しだが、12人全員が有罪と認めた。

 有罪評決を受け、ボストン大学ロースクールのジェド・シュガーマン教授はニューヨーク・タイムズに4月23日に寄稿した一文で、は、「今回の裁判では選挙詐欺の側面は政治的効果のために誇張されていた」とした上で、「重罪での起訴に値する根本的な犯罪は、ついに明確にされなかった」と指摘。「検察の勝利は、突き詰めれば、リベラル寄りの司法管轄区で裁判を起こし、有利な陪審員を選んだことが理由だと考えられる」と述べた。

 トランプ氏側は控訴するのは確実で裁判は11月の大統領選後も続く見通し。州最高裁までいくものと見られる。トランプ氏の盟友で弁護士出身の共和党のマイク・ジョンソン連邦下院議長は、最終的に連邦最高裁が評決を覆すだろうとの見方を示している。

ハリソン笑顔で日本祭り大盛況

地元現地校の日本人高校生が企画

 ウエストチェスター郡ハリソンで2日、駅隣接のハリソン図書館前の公園を会場にハリソン日本祭りが開催された。快晴の日曜日とあって、大勢の日米市民が詰めかけて大盛況となった。地元ハリソン高校の日本人生徒たちのボランティアによって企画、準備が進められた手作りながら、総合商社をはじめとする大手進出日系企業や食料品店、学習塾、寿司店、リムジン会社など日系社会からも手厚い金銭的支援が寄せられた。企業協賛金と収益の一部は、今年1月に発生した能登半島地震の被災者への義援金となる。(写真上:NYの盆踊りグループBon-Dan NYCのリードで東京音頭などを踊る若者たち(2日午後1時30分、写真・三浦良一)

 ハリソンは、ここ数年で子育て世帯の日本人人口が急速に増えており、会場はさながら日本のお祭り会場のような賑わいとなった。書道や折り紙などの体験と展示を通して日本の文化と理解を深めてもらうための文化ブース、輪投げやヨーヨー釣りなど日本の伝統的なゲームのほかステージパフォーマンスなどのプログラム、焼き鳥、お好み焼き、焼きそば、おにぎりなどお祭り食べ物ブースが並んで長蛇の列となった。地元の消防、警察も全面的に協力した。

 とうもろこしと焼き鳥を焼いていたハリソンの日本食料品店「おいしんぼ」の店主、高田英紀さんは「パンデミック前のハリソン日本祭りをなんとか復活させたいと思っていたら、日本人高校生たちが中心になって実現してくれました。町に笑顔と元気が戻ってきて嬉しいです」と話していた。

「進撃の巨人」10月にNYで上演

チケット発売開始

 人気漫画「進撃の巨人」を舞台化した「進撃の巨人 -ザ・ミュージカル-(ATTACK on TITAN: The Musical)」が、10月11日(金)から13日(日)まで、ニューヨーク・シティーセンター(西55丁目131番地)で上演される。同作は2009年〜21年まで「別冊少年マガジン」(講談社)で連載され、コミックス累計発行部数1億4000万部を突破した大人気漫画。

 昨年1月に大阪・東京にて上演された際には、漫画の中から出てきたようなビジュアルの完成度がSNS上で話題を呼び、最新テクノロジーやギミックとアナログな演劇的手法が融合した舞台演出、舞台上に出現する巨人の圧倒的な存在感や、音楽・ダンス・アクションを交えた多彩な表現など、そのクオリティの高さから初日開幕後に口コミが広がり、満員御礼で千秋楽を迎えた。日本初演に引き続き植木豪が演出を手掛け、エレン・イェーガー役を岡宮来夢、ミカサ・アッカーマン役を高月彩良、アルミン・アルレルト役を小西詠斗、リヴァイ役を松田凌、エルヴィン・スミス役を大野拓朗が務める。NY公演では、ジャン・キルシュタイン役を松田昇大、コニー・スプリンガー役を高橋祐理が新たに演じる。

原作の諫山創氏よりコメント:東京公演を見た時、舞台の迫力に圧倒されました。ミュージカルという表現方法が『進撃の巨人』という作品にぴったりだと思いました。演者さんのアクションと歌が、原作ともアニメとも一味違う新しい『進撃の巨人』にしてくれています。とても素晴らしい舞台に仕上げていただきましたので、早くニューヨークの皆さんにも見ていただきたいです。公演開始を楽しみにしていただければと思います。

 入場料は55ドル〜。チケットは6月3日正午よりウェブサイトhttps://attackontitan-themusical.com/にて発売開始。

オーバーツーリズム批判と文化摩擦

 日本への訪日外国人(インバウンド)観光客の数は、既にコロナ禍前のペースを上回っている。2024年に入って3月には、初めて単月で300万人の大台に乗せ、4月もこれに続いている。この勢いだと、2024年は年間で3500万人前後となるかもしれない。そうなれば新記録である。岸田総理は2030年には訪日6千万人を目指すと豪語しているが、今のままで拡大が続けば達成は視野に入ってくる。

 そのためには、羽田、成田、関空だけでなく地方空港発着便の充実が必要だ。また、一部地域に集中するインバウンドを他の地域へと分散する体制も求められる。具体的には、東北、中四国などの観光開発は急務だ。また、全国的に富裕層向けの宿泊施設を充実させなくてはならないし、そのためには宿泊や料飲部門での高付加価値創出ノウハウも必要となってくるであろう。駅や街路にあふれるスーツケースなどロジスティクスの問題もレベルアップしなくてはならない。

 こうした実務的な課題に加えて、この春先頃から「オーバーツーリズム」つまり、過度の観光化による弊害への批判が高まっている。勿論、その多くは実務的に解決すべきであるし、解決可能な問題だ。例えば観光バスの路駐が迷惑という批判には、駐車場の拡大や誘導で解決すべきだ。ゴミ公害への批判も多いが、化学兵器テロを恐れるあまり、世界基準からすると異常なまでにゴミ箱を減らした政策を修正すべき時期が来たということだろう。

 問題は、実務的な対応では済まない、いわば「文化摩擦」が起き始めているということだ。例えば、大規模ではないものの、一部で深刻な被害が出ている問題として「路上飲み」問題がある。特に昨年、2023年の後半に東京の渋谷で発生し、社会問題になった。原因は、深刻な誤解から来ている。欧米では、公共の場所における飲酒は違法行為として厳しく取り締まられている。アジアでもシンガポールなどでは、公共の場で酩酊状態とみなされれば即逮捕されてしまう。つまり路上飲みが禁止されているというのが「当たり前」という感覚がある。

 その束縛感を前提とすると、日本の場合は「お花見の宴会」などの習慣があるなど「どうも違う」ということが興味を喚起してしまうようだ。その上で調べてみると、日本の場合は公共の場での飲酒は違法ではないことがわかり、更にはコンビニなどでは安く酒が手に入ることを知ってしまう。そこで実行に進む連中が出てくる中で、「日本では路上飲みが楽しめる」的な勝手な情報がSNSで拡散されることになった。このため、渋谷では深刻な被害が起き、最終的にハロウィンの禁止にまで至った。とにかく、公共の場での集団飲酒というのは、完全にマナー違反だということを徹底するしかないだろう。

 この春、大きなニュースになったのは富士山の撮影スポット問題である。例えば、車道の反対側から撮影すると、青いデザインの平屋のコンビニの上に富士山が乗っているように見える場所が人気化した。これとは別に、富士山に向かって真っすぐに延びる通り沿いの商店街の看板などが「昭和を感じさせる風景」だとして、人気となった例もある。両者の共通点としては、交差点内で立ち止まったり、車道を渡ったりする危険行為が横行したことだ。このために、コンビニでは富士山の「目隠し」という対策に追い込まれたし、交差点の場合は警備員が配置された。

 このニュースは、日本国内の報道では「迷惑行為の横行」と手厳しい。また肝心のコンビニ本社が「目隠し」措置でブランドが毀損されるとは判断していないように、国内世論は「目隠し」対策は仕方がないという意見が大勢のようだ。だが、ここにも文化の違いから来る誤解がある。日本だけでなく、韓国でも中国でもそうだが、東アジアでは基本的に歩行者の車道横断や信号無視は違法行為として社会的には白い目で見られる。だが、欧米、特にアメリカではこの感覚は大変に希薄だ。それこそニューヨークの場合は、歩行者が信号を守らない「ジェイウォーク」が名物となっている。そこには、歩行者であっても自分が世界の中心であり、利便性で譲歩する気は更々ないという個人主義がある。そして事故が起きたら自己責任という理解に加えて、歩行者と自動車はアイコンタクトや身振り手振りなど当事者間の信頼関係やコミュニケーションで安全を確保するという感覚がある。

 要するに自動車専用の分離帯のある高速道路でもない限り、「絶景を撮影する」という「正当な」目的のためなら堂々と車道を横断するし、交差点内でも撮影しても全く何の反省もないし、また理解されると思っている。言い方を変えるのなら、規範に従属することで解決する種類の問題ではないと感じているのだ。これも全くの誤解であり、日本の交通ルールに関しては政府などの公式サイトで徹底するなど周知に務めるべきだ。ルールを広めないで一方的に迷惑行為をする「ならず者」扱いをするようだと、かえって反発を招くだけであろう。

 いずれにしても、絶望的なまでに製造業を空洞化し金融やテックの競争力で遅れを取る日本は、当面は観光業で稼ぐしかない。悔しいし、怒りも感じるがこの事実は否定できない。訪日客の消費は既に年5兆円規模とGDPの1%を担うに至っており、政府にはこれを3倍増させる計画もある。オーバーツーリズム反対などと言っている余裕は日本経済にはない中では、問題は一つ一つ潰していくしかなさそうだ。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

第54回JAA奨学金、新大学生14人に授与

 ニューヨーク日系人会(JAA)の第54回奨学金授与式が5月31日ハーバードクラブで行われた。ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット3州内に住む高校3年生でこの秋に米国の大学に進学する日本人・日系人に生徒14人に総額7万8000ドルと2枚の航空券が授与された。大学院生には第18回本庄奨学金として5人に総額3万ドルが授与された。式典では佐藤貢司JAA会長の挨拶に続き、ニューヨーク日本総領事館の遠藤彰首席領事が祝辞を述べた。

 基調講演者として日本の高校時代に学年のビリから1年間で偏差値を40上げて慶應義塾大学に現役合格し、この夏、2年間留学したコロンビア大学大学院をオールAで修了した小林さやかさんが、勉強することで得る人生の喜びについて講演した。(講演要旨別項)

 第54回JAA奨学金(総額7万7000ドル)の受賞者は次の通り。

 (1)村瀬ファミリー賞(1万2000ドルと全日空の日米往復航空券)レイア・リーさん(バーゲン郡アカデミー)ブラウン大学。(2)MUFG賞(1万ドル)ジェーン・ミツコ・ロビンソンさん(ハンターカレッジ高校)コロンビア大学。(3)カクタ・エリ賞(8000ドル)ジュリア・ケイトリン・ミヤサカさん(ダルトンスクール)ミシガン大学。(4)富川宗次博士賞(7500ドル)タイ・ナカムラさん(バーゲン郡アカデミー)コロンビア大学。(5)米国三井物産財団賞(5000ドル)アヤ・インディー・シュワルツさん(ジョン・ジェイ高校)ハーバード大学。(6)米国オリエントコーポレーション賞(5000ドル)アキ・デンスモアさん(ニューパルツ高校)フロリダ工科大学。(7)江見啓司ロバート医学博士賞(5000ドル)ソニア・ポロックさん(ローレンス高校)カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)。(8)一戸&堀重賞(5000ドル)エミリー・カワカミさん(ジェリコ高校)ペンシルベニア大学。(9)永松ジョージ医学博士&永松和子賞(5000ドル)ジェイク・ステックさん(サクセス・アカデミー高校)ニューヨーク州立大学。(10 )遊馬やよいメモリアル賞(5000ドル)イブ・カミドイさん(ノーザン・ハイランズ地区高校)ミシガン大学。(11)NHKコスモメディア・アメリカ賞(3000ドル)マーチン・バセットさん(フォート・リー高校)ロチェスター工科大学。(12) 西宮伸一大使賞(3000ドル)マヤ・アイラ・マッコースカーさん(ラザフォード高校)ミシガン大学。(13)斉藤もと賞(2500ドル)アンドリュー・コジマさん(セント・ジョセフ高校)テキサス大学。(14)全日空ジャパン・トラベル賞(JAAから1000ドルと日本往復航空券)ジョセフ・サイトウさん(エッジモント高校)ジョンズ・ホプキンス大学。以上14人。

大学院生5人に本庄奨学金

 第18回本庄奨学金受賞者(大学院生対象総額3万ドル)の受賞者は次の通り。

 (1)エレノア・レノーさん(ラトガース大学大学院)7000ドル。(2)ウォルター・バスカークさん(コロンビア大学大学院)7000ドル。(3)クレア・ナカムラさん(コロンビア大学大学院)7000ドル。(4)ツグタ・ヤマシタさん(コーネル大学大学院)3000ドル。(5)ディーナ・ナーディーさん(コロンビア大学大学院)3000ドル。以上5人。

アパレルセレクト店

NYソーホーに出店

 マンハッタンに東京発のアパレルブランド・セレクトショップ「STUDIOUS TOKYO」(ハワード通り33番地)がソーホー地区に5月11日にオープンした。「from JAPAN to the WORLD」を企業理念として掲げ、日本で売れているハイエンドなメンズファッション15ブランドをニューヨークで販売を開始した。展開するブランドは「SOPHNET.」「UNDERCOVER」 「N.HOOLYWOOD」 「White Mountaineering」など、国内外のSTUDIOUS TOKYO既存店舗において世界中から来店する顧客に支持されているメンズカジュアルを並べている。出店するソーホー地区は名だたるメゾンブランドや気鋭のブランド、セレクトショップが軒を連ねるエリア。同店マネージャーの田中肇さんは「トレンドに敏感なニューヨークの人々が集まるエリアで、TOKYOブランドの今をお届けしていく。日本で販売しているものをそのまま持ってきており、日本や中国の店舗を訪れたことのある顧客が来店している。NYで実際に顧客がどういう好みを持っているのかを見極めながら、初年度売り上げ2億円程度で黒字に持って行きたい」と話す。Tシャツなど150ドルくらいから。営業時間は正午から午後8時。

(写真)東京の15ブランドの前に立つマネージャーの田中さん

中川直人の9・11

作品「森の星たち」を語る

 5月はヘリテージ月間。国立911記念博物館では、5月28日に日本人アーティストの中川直人さんと元港湾局警察署の警部補で、中国系のデービッド・リムさんの講演会が開かれた。

 中川さんは、1962年に500円だけを持ってニューヨークへ来米した。「期待に胸を膨らませ、アーティストとして成功すると決めていました」4年後の1966年にシアトル生まれで日系2世の建築家ヤマサキミノル (1912〜1986)の設計が、世界貿易センタービルに採用されたニュースが発表され、心を躍らせた。戦後の日本は貧しくアメリカでのヤマサキの活躍を誇りに思った。当時はローワーマンハッタンのチェンバーズ・ストリートにスタジオがあって、ツインタワーが上へ上へと建設されていく様子を人工のキリマンジャロのように美しいと眺めていたという。

 中川さんの作品「Stars of the Forest: Elegy for 9/11」(森の星たち: 911への哀歌、2001年、キャンバスにアクリル、76×108 inch.)は、2019年に所蔵していたギンズバーグ家から博物館へ寄贈され、同時多発テロ発生から20年後の2021年に常設展示された。飛行機がタワーに突っ込んだのをみる直前、絵の具を混ぜていた。ハドソンバレーに浮かぶ美しい星形の苔を描いていたのだが、テロを目撃したことにより、この絵はアメリカを讃え、犠牲者を哀悼する作品となった。色は国旗の赤・青・白を使い、星は犠牲になった人々の魂だ。そして勇気、決断、強さ、愛の象徴としてうっすらと十字架が見える。

 彼は、現在も人生の意味を追求する絵を描き続けている。「193+2」(2020年)は国連加入の国々をそれぞれ国花で表している。「People of the World」(2022年)ではAIロボットを含めた地球上の全ての人々80億人を1枚の絵に表され、黄色と青はウクライナに捧げている。(佐藤恭子 キュレーター)Jake Price撮影

源吉兆庵五番街店、オープンし人気

洋風の新商品も発売

K.MINAMOTO 5th Avenue New York
マンハッタン店舗2店に

 株式会社源吉兆庵ホールディングス(本社:岡山県岡山市、岡田憲明)は、5月31日ニューヨーク五番街店をオープンした。開店と同時に商品を買い求める客で賑わった。同店は1993年にシンガポールへの出店から海外出店が始まり、今回の五番街店を加えて現在8か国地域36店舗で世界展開している。米国には94 年に「U.S.A. K. MINAMOTO CO., INC.」を設立。97 年にはロックフェラーセンター横に旗艦店「ニューヨーク・フィフス・アベニュー店」を出店。2013 年に閉店、「ニューヨークマジソン店」に移転した。マジソン店は引き続き営業する。五番街の新店1階には新ブランドコーナーの「K.MINAMOTO 5th Avenue New York」が併設された。日本人特有の四季を愛でる繊細な発想と、独自の鮮度を活かした果実菓子製造の技術はそのままに、製法、素材共に、和洋の垣根をいっさい取り払い、新たにオリジナリティ高い魅力的なお菓子「グローバルスイーツ」を世界へ展開していく。乳製品やチョコレートなどを使用した、世界各国で広く受け入れられている洋菓子の風味、食感だけでなく、見た目にも美しくおいしいお菓子創造へK.MINAMOTOは、新時代への挑戦であり世界の吉兆庵として五番街から歩み出す。新店舗のロケーションが、五番街の48丁目と49丁目の間という一等地の目抜き通りだけに、日本文化発信の場所としては最適。ビルの2階以上はテナントを募集中だが「茶道やいけばななど、日本文化を体現できる場所として活用できれば嬉しい」(岡田社長)という。

つげ義春の妻が描いた絵日記

藤原マキ・著  ライアン・ホルムバーグ・訳

DRAWN & QUARTERLY・刊

この本は、早逝した「状況劇場」の女優で、つげ義春の妻、藤原マキが綴る絵日記とエッセイ『私の絵日記』の英訳本だ。つげとの間にもうけた一男つげ正助との愉快な会話、散歩、初雪、オトウサンのスイトン…。家族や友人との日常の中で感じるささやかな幸せを愛らしい絵とのびやかな文で描き、多くの読者の心を掴んできた名作だ。そのほか「もらい風呂」「ダルマストーブ」など、著者が子どもの頃の懐かしい風景を絵と文で描写している。著者は1941大阪生まれで99年にがんで亡くなっている。結婚前に関西芸術座で演劇をんだあと、唐十郎率いる劇団「状況劇場」で「腰巻きお仙」に出演するなど舞台女優として活動し、漫画家つげ義春と結婚。本名は柘植真喜子(旧姓・藤原真喜子)で、つげが1976年に出した単行本『懐かしい人』(二見書房)と『義男の青春』(講談社漫画文庫)におかっぱ頭の女性として何度も登場する。

 この本に出会ったのはニューヨークのブルックリンのグリーンポイントの古い独特の街並みの一角にあった書店だった。店内でうろうろしていると誰かに一瞬呼ばれた気がして振り返るとこの本が目に飛び込んだ。「ここよ」と囁いているような表紙。漫画家つげ義春の妻の描いた絵本ではないか。「なんでこんなところに」という千載一遇の思い。つげといえば、すでに60年代に青林堂の月刊漫画『ガロ』で活躍、作品『ねじ式』は哲学的文学要素を含んだ難解漫画の頂点として世界的に有名だった。絵日記を見て、意外に素朴で楽しい平和な家庭生活を送っていた時期もあったんだなと不思議な安堵感を覚えた。つげ作品と併せて読むと楽しさが増す。 (三浦)

日米交流原点の訪米武士、子孫NYでジャズ歌手に

大久保真理さん

 ニューヨーク在住の日本人ジャズ歌手、大久保真理が26日(水)ザ・ズーチャー・ギャラリーで公演する(詳細は10面イベントガイド)。日本人の生まれながらにもっている感性を生かしながら世界の音楽シーンに通用する現代の本格的な歌(ヴォーカルアート ・ 声楽)を志す。

 イタリアでベルカント修行中にジャズ界の巨匠オーネット・コールマンにその才能を認められ、さまざまな世界のジャズフェスティバルで氏との共演を果たした。オーネット・プロデュースによるCD「 Cosmic Life」も好評発売中だ。今回は、大久保独自のヴォーカルスタイル(オペラ+ジャズ+現代音楽)に オーネット・コールマンが曲を書き下ろしてのライブパーフォーマンスとなる。

 大久保は、160年以上昔にさかのぼる日米友好の原点となる歴史を背負う稀有な存在の歌手でもある。本紙2020年1月1日号に掲載された「海を渡った日本の侍たち」特集記事からそのエピソードの一端を紹介する。

 万延元年遣米使節団は、幕末の幕臣・外国奉行の新見豊前守正興(しんみぶぜんのかみまさおき、40歳)を正使に、副使の同じく外国奉行の村垣淡路守範正(むらがきあわじのかみのりまさ、48歳)と小栗豊後守忠順(おぐりぶんごのかみただまさ、32歳)を筆頭に約80人の侍が米国海軍の蒸気船ポーハタン号に乗り、1860年1月に品川沖を出発した。3月8日にサンフランシスコに到着し大歓迎を受けた。サンフランシスコに9日間滞在した後、船でパナマとキューバを経由してワシントンDCに向かった。ワシントンでは3月28日に第15代大統領のブキャナン大統領に公式に謁見している。一行はワシントンDCに3週間滞在し、6月16日にニューヨークに到着。NYでは街を上げての大歓迎を受けた。ブロードウエーでは正装した侍たちが練り歩く「侍パレード」が行われた。1860年6月19日付ニューヨーク・トリビューン紙には、ニューヨークに来た70人の侍のフルネームが掲載され、それぞれの役目と人物像が紹介されている。

 村垣は、渡米滞在中にかなり詳しい日記を残している。「町を歩くと新聞記者が駆けまわり、3、4階は女性が窓から身を乗り出して手を振り、鐘をならし花を車に投げ入れた。花を贈るのがこの国の敬意を表す習わしだと理解したが、キッスには閉口した」と。 

 その村垣範正の弟、忠篤が江戸幕府の徳川家康の旗本だった大久保彦左衛門の親戚に婿養子として入って生まれた忠弘のひ孫にあたるのが、ニューヨークでジャズ・ボーカリストとして活躍する大久保真理だ。「おまえさんのご先祖は、江戸幕府の使いとしてアメリカに行ったのだよ。覚えておきなさい」渡米前に母親にそう言われたという。 

 田園調布小、中学校、都立駒場高校、東京藝術大へ進み、オペラ科卒業後はローマでベルカント修業中にジャズ界の巨匠オーネット・コールマンに才能を認められ、オペラ歌手からジャズシンガーを目指してニューヨークへ。「先祖に武士がいることは心強い。誇りを持って、胸を張って、わたしはパイオニアではないけれど東西の架け橋を越え、グローバルの枠からも出て、ユニバーサルな歌を歌っていきたい」と語った。(三浦良一記者、写真は本人提供)。