心に太陽 冬も夏に

暖冬のニューヨーク
このまま、雪も降らずに
すんなり春とはいかないだろう
でも、暗く長い夜にも朝が来るように
冬のあとには春が来る
心に太陽を持てば
気分は一気に夏になるかも

(元旦、フロリダ州クリアウォータービーチで、
写真・三浦良一)

編集後記 1月1日号

みなさん、こんにちは。今年の新年号では、2部構成の最初の号で「自分を磨く」というテーマで、企業や社外のネットワークで、勉強会で、自己管理から成功体験を身につけて「個人力」をいかにつけていくかという取材をして、メインに国連職員として活躍する日本人やプロフェッショナルたちの個人体験などを紹介しています。もう一つの号では「人生いきいきを準備する」と題して、在米邦人の高齢化と老後の準備、年金、相続、帰国、介護といった問題に「アメリカに住む日本人」という観点から考えてみました。日本の専門家の皆さん10人以上がいろいろなアドバイスをしてくれています。新年号で記事を書いてくれている画家の横尾忠則さんは6月には83歳になるそうですが、書いていることはとっても若者の心です。いまから35年以上も前にロサンゼルスで初めてお目にかかったとき、その時まだ彼は50歳前だった訳で、私もまだ20代でしたが、取材でお会いした時にこんなことを言っていたのを今でも覚えています。「肉体は若さを保って、精神は老人みたいに達観した感じになりたいんだ」というようなことでした。普通は、サミュエル・ウルマンだか偉い人が言うように「青春とは年齢ではなく精神のありかただ」というように精神の若さを大切にするということに重点をおくはずなんですが、私もその時「おー、いいねえ、肉体だけは若さを保って、爺さんみたいに早く世の中を達観できる感じになりたいわ」と思ったものでした。そしていま、その爺さんの一歩手前まで来た現在、全然世の中を達観できていない自分に気がつきます。この先なにが待っているのか。ドイツのアウトーバーンを制限速度なしで走れる車をとヒトラーが命じて造らせたフォルクスワーゲンのビートルという車は、ガソリンが最後の一滴が無くなるまで時速130キロのスピードで走れてタンクが空になるとエンジンがプスッと止まるという、いかにもドイツ人が造りそうな車でした。ピンピンコロリじゃないですが、私もフォルクスワーゲンみたいに走っていきたいと思いました。今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。それでは、みなさんよいお年を。(「週刊NY生活」発行人兼CEO三浦良一)

国際機関にやりがい求めて

邦人職員を増員
2025年まで1000人に

国連職員座談会
(出席者、順不同、敬称略)
川村泰久  日本政府国連次席大使
道券泰充  国連開発計画政策専門官
市川奈緒美 国連児童基金 エグゼクテ ィブ・マネージャー
加川文子  国連フィールド支援局地図班チーフ
山川望  国連管理局内部監査室監査官
田川慶  国連アフリカ特別顧問室プログラム担当官
邦人職員の昇進に期待 川村
日本と国際社会橋渡し 田川
社会的使命に挑戦実感 山川

 国連関係機関に勤務する専門職以上の日本人職員数は2017年12月末現在で850人。このうち部長級のD1レベル以上の幹部職員は84人。日本政府は2025年までに職員数を1000人に増やすことを目標にしている。男女比を見ると女性の比率が61・3%と男性を上回っているが、幹部職員では44%に留まる。最近の傾向として国際機関に応募する日本人の数が少なくなっているという。
 各国が国連に負担している分担金の比率からすれば、国連事務局における日本人職員の好ましい採用数は167人から226人とされているのに対し、17年末時点では79人だった。全体的な日本人職員数の増加や、幹部職員数の増加を可能にするためには、応募する日本人の数を増やすことが今後の課題となっている。
 月例的に川村泰久次席大使主催でやっている中堅・若手邦人職員数名との座談会、ざっくばらんな意見交換会が12月7日午後に川村大使公邸で開催された。

出席したのは5人。道券康充さん(国連開発計画本部政策プログラム支援局・統合と調整支援ユニット政策専門官 危機リエゾンと調整担当)、市川奈緒美さん(国連児童基金本部事務局長室エグゼクティブ・マネージャー)、加川文子さん(国連フィールド支援局情報通信技術部地理情報課・地図班チーフ)、山川望さん(国連管理局内部監査室内部監査部年金基金課・監査官)、田川慶さん(国連アフリカ特別顧問室・調整・アドボカシー・プログラム開発ユニット・プログラム担当官)。  各出席者に国連でのやりがいについて聞いた。

国際社会に貢献を実感 道券
自分らしさを生かせる 市川
常に新しいこと学べる 加

 道券さんは「誰かのために役立っているということが生きがい。ネパールと東チモールの平和構築に携わったが、現地のニーズと本部のリソースを摺り合わせて本部にどのような支援ができるのかや、日本とUNDPとの連携で国際社会で役立っていると思える時に働きがい感じる」という。
 市川さんは「本部のグローバルな視点と現地のローカルな視点とを合わせたグローカルな視点をどう生かすか。帰国子女なのでどこにいても自分らしくいられることを大切にしているが、ていねいさや根回しといった日本人らしさを喜ばれることもあるし、日本人らしくなくても自分らしさで仕事ができる国連は働きやすい」という。
 加川さんは「子供の頃から地図が好きだったので、いまこうして、地理を専門に自分の好きな分野で働けていることと、新しいことを仕事で学べる喜び、世界のどこかで関わった地図が国際社会のどこかでブロックに積み木にひとつのように役立っていると思うとやりがいを感じる」と話す。
 山川さんは「国連に来る前は米系の投資銀行のハゲタカファンドでゴルフコースの買収などをしていた。人間の金欲はきりがなく充足するということがないことを痛感し、自分がやりたいことと企業理念が合致しないと生きがいを感じられないと思った。現在、監査の仕事で内部通報者の保護システムに挑戦してやりがいを感じている」という。
 田川さんは、三菱信託銀行勤務から青年協力隊を経てPKOで、コンゴ・コートジボワール在勤をへて2013年から国連アフリカ特別顧問室勤務。「青年協力隊時代に人間として生きるということはどういうことかを体験し、現在はアフリカ会議のお手伝いをして日本の考えを橋渡ししたりすることでやりがいを感じている」そうだ。
 これから国連入りを目指そうとしている人たちからみて「天井人」のような「事務総長」や「事務次長」といった高官でなく、「経験や志」を共有できるような比較的「手の届く」人たちからの助言は有益だ。
 当日国連職員と率直な意見交換ができたという川村大使は次のように語る。「座談会では、国連が求める人材については、地理情報など黙々と仕事をこなすようなものもあれば、女性へのハラスメント問題対応能力を求められるものもあり、さらには国連事務総長の新たな技術戦略や金融イノベーション対応の即戦力が必要とされているところもある、などが報告された。国連で働くことについて『華々しく国際会議で発言して議事をリードする』とか『途上国の過酷なフィールドで難民支援をする』といった画一的なイメージで見て最初から応募を諦めることなく、国連には実に多種多様なニーズが存在しているので、自身の関心や適性に応じて積極的にチャレンジしていくことの重要性を痛感した」と話す。
 このほか国連の仕事の多様性について日本政府国連代表部と国連に関心を持つ日本人ともっと情報を共有していくことが重要との声や、欧米諸国のやり方に倣い、日本人も国連ボランティアとしてまずフィールドに入り、その後のキャリアにつなげていくことがよいとといった提言もあった.。

邦人職員数の推移

北米伊藤園 新俳句グランプリ2018

3部門で金・銀・銅9人

川越範子さん 日本語部門
Earl Keenerさん 英語部門
水流カイラーさん 18歳未満部門

日本クラブで表彰式

北米伊藤園新俳句グランプリ2018の表彰式が12月14日、日本クラブで開催され、3部門(日本語俳句、英語俳句、18歳未満部門)の金・銀・銅賞と、学校賞が発表された。金賞は、川越範子さん、アール・キーナーさん、水流(つる)カイラーさん、銀賞は、市川泰子さん、ガーリー・ガイさん、中島瑞貴さん、銅賞は、アチュートパンダさん、フアンラナさん、プリス・キャンベルさん。受賞者には、表彰状と副賞のアマゾンエコー、伊藤園お茶ボトルケースが贈られた。
学校賞は、12句がセミファイナリストに選ばれたボストン日本語学校に贈られた。
特別協賛の北米伊藤園エグゼクティブ・バイス・プレジデントのロナ・ティソンさんは、「日本では伊藤園のお茶と俳句は密接な関係。米国でのグランプリは8年目だが、今後もっと広めていきたい」と挨拶、各審査員が講評を話した。
日本語部門は、「年末年始に古暦の余白を見ながら、いろいろあったなあと過ぎ去った日々に思いを巡らせて詠んだ」(川越さん)、「娘が大学の寮に移り、彼女の住んでいない部屋にふと入って感じた思いを歌った」(市川さん)など欠席者からは挨拶文が寄せられ、銅賞のアチュートさんは、「湖面に投げた小石の波紋のように俳句愛好家が大きく大きく世界中に広がってゆくことを夢に見ております」と英語で挨拶した。
英語部門受賞者3人は欠席で、「天から降る雪の神聖さ。母親がよく美しすぎて歩けないと言っていた思い出」(キーナーさん)、「この世にあるすべての命への賛歌」(ガイさん)、「早朝、サボテンの花から飛び立つ蜂を見るのが楽しみになった」(キャンベルさん)などの挨拶文が寄せられた。
18歳未満部門の3人も欠席で、「先生から直接的な言葉をなるべく使わずと言われ、目を閉じてハロウィーンの夜を想像して書いた」(水流さん)、「忙しそうに蜜を集めるハチたちをみた時のこと」(中島さん)「長い吹雪の後、町が白で覆われ静かな様子を書いた」(フアンさん)との挨拶文が寄せられた。フアンさんの代理で担任のブロック由利子教諭が出席した。
本グランプリは、2018年1月から10月まで実施、毎月各部門7句ずつセミファイナリストを選び、その中から受賞者を決定した。総計1110句(日本語178、英語251、18歳未満681)の応募があった。
表彰式後には、俳人の大高翔さんが「席題句会」を主催した。1枚の絵を観て、俳句をつくるという趣向で、受賞者の家族やグランプリ関係者、常連セミファイナリストらが、好きな句を選んで評し合い、和やかに俳句の世界を楽しんだ。

金賞 日本語部門

余白にも 苦楽の日々の 古暦
ー 川越範子 PA州

 

 

金賞 英語部門

walking on new snow
as if I were the guest
of honor
ー Earl Keener, WV
(厳かに主賓のように踏む新雪)

金賞 18歳未満部門

くりぬいた かぼちゃが照らす 帰り道
ー 水流カイラー(サンアントニオ日本語補習校5年、11歳)TX州

2・5次元ミュージカル セーラームーン 3月29・30日にNYで

 2・5次元ミュージカル「プリティー・ガーディアン・セーラームーン:ザ・スーパー・ライブ」が3月29日(金)午後8時と30日(土)午後1時と5時の全3公演、タイムズスクエアのプレイステーション劇場(ブロードウエー1515番地)で上演される。  月刊誌『なかよし』(講談社刊)で、日本で1991年から連載された武内直子原作の少女漫画「美少女戦士セーラームーン」。「2・5次元ミュージカル」は新ジャンルのエンターテインメントで、漫画やアニメは2次元でライブパフォーマンスや舞台は3次元。日本では専用劇場が設けられるほどの人気だ。
 本プロダクションは同漫画が初めて出版されてから25周年を祝うプロジェクト」(トリ)の一環として製作。2018年8月31日にアイア2・5シアター東京で開幕、パリでは「ジャポニスム2018:響きあう魂」公式企画として11月3日と4日にトリを務めた。今回の米国公演はワシントンDCで3月24日にプレミア公演があり、ニューヨーク公演と続く。制作:ネルケプランニング、ニューヨーク公演プロデューサー:上羅尚治(ネルケプランニング)、吉井久美子(ゴージャスエンターテイメント)。日本語上演、英語字幕付き。
 入場料は30〜75ドル。詳細はウェブサイトhttps://sailormoon-official.com/stage/superlive/usを参照。

第15回「ことばの泉」年間大賞入賞作品発表

第15回「ことばの泉」年間大賞入賞作品発表

■応募総数約900点、掲載作品189点、第一次審査通過15点から選ばれた優秀6作品

本紙創刊と同時に始まった児童生徒の作文コンクール「ことばの泉」は今年で15回目を迎えました。ニューヨーク近郊の3州をはじめテネシー州、ミシガン州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州など遠方からの応募も増え、年間応募数はおよそ900点を数えました。
今期の年間大賞は2017年11月第一週から昨年10月末までに掲載された189点から、第一次審査として編集部が15作品を選出。その15作品を対象に審査員5名による厳正なる最終審査が行われ、年間大賞6作品が選ばれました。
昨年12月7日、審査員の方々を招いてニューヨーク日系人会にて表彰式が開催されました。本号では表彰式の模様と、入賞作品全6作品を発表します。入賞者の皆さん、おめでとうございます。

最優秀賞 「アメリカ人になると」

ニューヨーク補習授業校小6 藤田 修敬

在ニューヨーク日本国総領事館の阿部康次主席領事より最優秀賞の表彰状を受け取る藤田修敬さん

 ぼくは日本人です。東京で、日本人の母から生まれたからです。ぼくは、三才のときにニューヨークに来ました。だから、日本に住んでいたときのことは何も覚えていません。今は、日本語よりも英語を使うほうが便利ですが、それでも、自分をアメリカ人だと思ったことはありません。
 ぼくたち家族がグリーンカードを取ってから、そろそろ十年になります。両親が相談した結果、アメリカの市民権を取ることになり、夏休みに手続きを開始しました。書類を出すとき、母に「英語の名前を付けたいと思う。」と、聞かれました。正式に名前を変える最後のチャンスだというのです。「今の名前が一番自分に似合ってると思う。」 と、ぼくは答えました。ぼくは、アメリカ人になるということはどういうことなのか、書いてみたいと思います。
 まず、アメリカ人になると、選挙ができます。自分の考えに近い人を自分で選ぶことができます。去年、アメリカの大統領選挙があり、どんな人が大統領にふさわしいかについて、いろいろ考えさせられました。ぼくは、自分と違う考えの人をダメだと言ったり、イスラム教の人は全員悪者だと言ったりする人は、ふさわしくないと思っています。
 次に、アメリカ人になると、家族にアメリカの永住権を申し込むことができます。つまり、母がアメリカ人になれば、日本に住んでいる祖父母やおじさんもグリーンカードを取ってアメリカに永住できる可能性があるのです。また、アメリカで生まれなかった子どもにも市民権が与えられます。父母がアメリカ人になれば、ぼくも自動的にアメリカ人になります。
 それから、郵便局や図書館などで働く国家公務員の仕事をすることもできます。アメリカ人でなければできない仕事もあるので、これもベネフィットの一つです。
 しかし、アメリカの市民権を取ると、日本国せきを失うことになります。「アメリカに忠誠をちかう」という質問の「イエス」のらんにチェックを付けるとき、父も母もとてもなやんでいましたが、二つの国のパスポートを持つことはできないのです。
 ぼくがいちばん心配していることは、もし戦争が始まって、ぼくが18才になっていたら、アメリカ人としてアメリカの国を守るために戦わなければならないということです。アメリカと日本が戦争をしたら、ぼくは日本人と戦えるでしょうか。第二次世界大戦中、本当にそういうことを経験した日系人がたくさんいたそうです。戦後、日本は戦争をしないという憲法を守っていることを、ぼくは素晴らしいと思っています。
 できれば、アメリカも日本と同じように「戦争をしない」と決めてほしいと思います。そして、アメリカだけではなく世界中の国が「戦争をしない」と決めれば、本当に平和な世の中になるのではないでしょうか。
 アメリカ人になったからといって、ぼくの中身が変わるわけではありません。ぼくの心の中はやっぱり日本人のままだと思います。 (渡米9年)