時代挑発の軌跡 メイプルソープ回顧展

グッゲンハイム美術館開幕

 20世紀後半に活躍した米国の写真家、ロバート・メイプルソープ(1946〜89)の回顧展「暗黙の張力(インプリシット・テンションズ):メイプルソープ・ナウ」が1月25日、グッゲンハイム美術館(五番街1071番地、86丁目角)で始まった。アンディ・ウォーホルやパティ・スミスなど当時の著名人のポートレートや花、ヌードの白黒写真だけでなく、同性愛などを撮影した写真で、20世紀後半を代表する最も挑発的な芸術家の一人とも言われるメイプルソープの作品と、それらが現代の写真に与える影響を概観する。
 クイーンズ出身のメイプルソープはブルックリンのプラット・インスティチュートでグラフィックアート、絵画、彫刻を学び、カメラを手にしてからはセルプポートレートなど写真で才能を開花させた。「数百年前に生まれていたら彫刻家になっていただろう」と本人が話すように、そのヌード写真は人間の肉体を美しく写し取っている。同美術館は1993年にロバート・メイプルソープ財団から数百枚の写真と製作品の寄贈を受け、彼の死後30年を経て一部を公開する。
 同展は2部に分かれ、第1部は7月10日(水)まで、第2部は7月24日(水)から2020年1月5日(日)まで開催。2月にはドキュメンタリー映画上映など関連イベントもある。
 入場料は大人25ドル、学生・シニア18ドル、12歳以下は無料。開廊時間は午前10時から午後5時30分まで(火・土曜は8時まで)。土曜の5時からは任意入場料。問い合わせは電話212・423・3500、詳細はウェブサイトwww.guggenheim.orgを参照。

「昭和の鴎外」が日本語る

河村 雅隆・著 文芸社・刊

 著者の河村雅隆さんは、元NHKのプロデユーサーで、ながらく報道関係の仕事をされてきた人だ。ニューヨークにもテレビ・ジャパンを放送するNHKコスモメディアの前身、ジャパン・ネットワーク・グループの副社長として2007年から2010年まで駐在した。現在は名古屋大学名誉教授として教壇に立っている。この本は、前半三分の一が大学受験から大学生へと進む青年、正道の心の葛藤と生活が描かれ、それは、なかば、私小説的な色合いを持たせながらも作者の観察眼の鋭さと描写力で日本国内の日本の青年の等身大、しかも1970年代前半あたりの頃の日本の風景と時代を色濃く描いた作品だ。東京生まれ、東大経済学部を出てNHKに入局、ニュース報道番組の最前線で活躍してきたエリート報道人としての物の考え方などが、前半の小説部分でもルポルタージュのようなリアリズムで迫ってくる。
 そして三分の二は、エッセーの短編として文芸と芸術に関わる文章群がぎっしりと詰まっている。「個性とは何か」「日本人はなぜ印象派が好きなのか」「重い社会、軽い社会」「ダメモト社会・イギリス」といった駐在経験のあるロンドンやニューヨークでの出来事や人々とのやりとりのなかから日本社会と日本人を複眼的に表現していて興味深い。
 特に、「個性とは何か」という問いについて、ヨーロッパは米国以上に個人主義が徹底しているということ。ニューヨークもかなりなものだとは思うが、フランスやイギリスは、その比ではないようだ。芸術面では大規模な美術館に行くとそこにある膨大な宗教画、鮮明で綿密に描写された写実画、肖像画の多さに作者は面喰らう。が、写真のない時代の絵画芸術に求められたものが現代とは違うこと、また、後世に残り伝えられている名作大作の後ろには膨大な数の無名のさまざまな忘れ去られた名作や作品があることも想像させる。
 自由に描くこということが制約されたルールの中でままならない状況であればあるほど、そこに人間としての自由な表現を織り込むことができるのだと筆者は綴る。がんじがらめの制約の中にこそ、芸術家としてのアーティストとしての力量を発揮できる舞台があるのだと。規定概念を打破するところに芸術が存在するなら、破るべきものがない自由の場ではアートの存在自体が成り立たないのではないかという筆者のアンチテーゼでもある。海外に暮らし日本との違いを綴った森鴎外の文章もなかで時折引用するが、鴎外と現代の作者がオーバーラップする。
 海外で日本語に接する機会は、日本語放送やインターネット、現地で発行されている日本語情報紙や新聞、日本から送られてくる新聞の国際版などあるが、この本は、日本の大企業と社会、東日本と西日本、同じ国内でありながらも企業文化や社会のありかたの違う日本の重たい空気の環境とリスクを自己責任で負わされながらも個人主義で空気自体は軽い欧米社会の人々との生きる哲学の違いが読み取れる。(三)

NY日本食組合を

JRO調理技能検定講習会で
衛生局の規制緩和交渉に一致団結して取り組む

田村JRO常務理事
 日本食レストラン海外普及推進機構(JRO)は、1月29日午後、イーストビレッジの茶蔵で日本料理の調理技能認定制度に関する講習会を開催した。

実験前衛映画の父メカスさん死去

商業主義に反旗貫く
世界映画界の巨匠逝く

米国の実験・前衛映画界のゴッドファーザーと称されるジョナス・メカスさんが1月23日、ニューヨーク市の自宅で亡くなった。96歳だった。

ハピネス Ka-Na

 シンガーソングライター Ka-Na(植村花菜)がイーストビレッジのライブハウス「ジョーズ・パブ」で新曲「ハピネス(Happiness)」収録のニューアルバム記念コンサートを開催した。

川島さんに勲章伝達 日本語教育に貢献

 平成30(2018)年春の叙勲で旭日単光章を受章した川島敦子・スー氏(ニューヨーク市立大学ハンター校日本語及び日本文化科名誉科長)に対する伝達式が1月25日夕、大使公邸で開催された。

エドガー賞  評論・評伝部門候補に 北大の竹内康浩教授・作

『マークX』誰がハック・フィンの父親を殺したか

 米ミステリー作家協会(MWA)が1月22日、米国の推理小説界で最も権威があるエドガー賞の候補作品を発表、北海道大大学院・竹内康浩教授の『Mark X: Who Killed Huck Finn’s Father?(マークX 誰がハック・フィンの父親を殺したか)』が評論・評伝部門にノミネートされた。