【今週の紙面の主なニュース】 (2019年3月23日号)

今週のデジタル版はこちらから

https://www.nyseikatsu.com/editions/718/718.pdf

(1) 民主の新星、大統領選出馬 ベト・オルーク元下院議員表明(1面)
(2) 春告げる 聖パトリックデー(1面)
(3) MEN’S COLUMN 現代美術家 伊藤知宏さん 日常空間を異化する表現追う(3面)
(4) 視座点描 「危機」の正体(4面)
(5) ジャパンナイト ジャパンデーの夜に 5月12日(4面)
(6) ダイヤモンド街の男 深夜に宝探し 歩道の溝の中に ダイヤや金くず(5面)
(7) NYに感謝の心込め 日系団体や企業 90人がボランティア(7面)
(8) ハローキティ、ハリウッドへ(7面)
(9)  高齢化の意識調査 NY日系人会が報告書(10面)
(10) NYで食彩45 ガーナ ジョロフライス(14面)
(11) 美少女戦士セーラームーン米国上演”Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live
2・5次元ミュージカル29日と30日NYで 仕掛人の2人に聞く (15面)
(12) NY生活ウーマン 特殊効果製作者 土持 智加さん CMなどの特撮現場で本領発揮(17面)
(13) デュオ夢乃10周年 カーネギーで拍手喝采(25面)
(14) 荒野のラジカリズム展 60年代の日本の美術家たち ジャパンソサエティーで開幕(26面)
(15) シネマ映写室MOVIE The Hummingbird Project 夢の先に何が見えるか (26面)

古都アングレームの休日(前編)

ジャズピアニスト浅井岳史の南仏18旅日記(1)

 パリから南仏に移動して3日目。昨日は深夜にコンサートから帰宅したので、当然朝寝坊をした。ホストのオロールはいつも置き手紙をダイニングテーブルに置いてくれる。そこには、「アングレームのシャラント川に歩いて行くと気持ち良いよ。で、川を歩くと日本のアニメの学校があるわよ。そこから、アングレームのダウンタウンに行けるよ!」とあった。
 早速、朝食を済ませて、カメラを持って出かける。この街は初めてではないので、いろいろな所を知っているが、川に行ったことはなかった。27歳のソルボンヌ大学出身のオロールは農業政策の仕事をしているだけあって、自然が好きで、特に川が好きなようだ。日本でもアメリカでも護岸工事をしてしまった川がほとんどだが、フランスは川岸が昔のままの形で流れている。そのせいか深い緑の水の綺麗さと合間って、それだけで歴史を感じてしまう。
 そのシャラント川に歴史的な橋がかかり、歴史的な建物が並ぶ。急にデザインが格好良いモダンな建物と古い石造りの城壁が見える。総合イメージの学校や、美術の学校に混じって、「Human Academy, L’Ecole Japonaise de Manga, Anime, Jeux Video」というビルを見つけた。そうなのだ、このアングレームは実はヨーロッパでは有名な漫画のメッカで、多くのアニメスタジオがある。当然他の国からも多くの生徒が勉強に働きに来ている。道路標識が吹き出しで書かれているところに街ぐるみの気合いを感じる。いつぞや、イタリアから来たというアニメーターに出会った。そして、日本のアニメを学ぶための学校が、この古都アングレームにある。私はアニメファンではないのだが、きっとその道の方はご存知だと思うが毎年アニメフェスティバルも行われているようだ。しかもこの学校、12世紀の修道院の跡地に建てられていて、いまでもその建物の石の壁が残されている。古都の遺産を大切にしながらきちんと現代のアートを研究するその姿勢は素晴らしい。村おこしの格好のケースではないか。
 さて、歴史の街アングレームはヨーロッパの他の歴史的な街と同じように小高い丘の上に立つ城壁都市である。と言うことは、この修道院跡の学校から街の中心地まで、かなりの丘を登らなければならない。いつもは車で何気なく通っているが、今日は歩いて登る。
 息切れと戦いながら、ほぼ垂直の崖を30分登るとそこには、白い石の建物が綺麗に並ぶ中世の街がある。お腹が空いたので、一番近いベーカリーに入る。とても親切なおばさんがサンドイッチをくれた。パリに比べると驚くほど安い! 田舎はいいなぁ。
 ここまで来るともう何度も見ているが、市役所に行かなくてはいけない。先ほどの学校が過去と現在の賜物であると言ったが、ここにも中世の砦と近世のネオゴシック宮殿が見事に調和した荘厳な市庁舎がある。なんとフランソワ一世の居城であったのだ。フランスの王朝はサリック法を厳守してイングランドとは違い男性存続である。従って、王朝はカペー家、バロア家、ブルボン家しかない。が、そのバロア王朝の最後のブランチをバロア・アングレームという。ちなみに、現在のニューヨークを発見した最初の西洋人は、このフランソワ一世の資金援助を受けたイタリア人のベラザノで、それ故にニューヨークは最初ヌーベル・アングレームと呼ばれた。
 荘厳な建物の前にある女性の像はフランソワ一世の姉、マルガリータ・デュ・バロア(ナバール)である。ボッカチオのデカメロンから触発され、文才あふれる彼女はヘプタメロンという物語を著した。デカメロンと同じ形式で10人の貴族が洪水の避難先で一日一話を披露するという構成である。その登場人物一人ひとりに曲をつけるプロジェクトに取り組んだことがあった。そのうちの一曲がフレンチトリオでレコーディングされCDに入ってリリースされている。Hircamという曲で方々で好評を頂いたが、フランス人の誰もが曲名は愚か、ヘプタメロンの存在を知らなかった(笑)。
 さて、近くにBio(フランスではOrganicのことをこう呼ぶ)の店があったので、農業政策に従事するベジタリアンのオロールのために、Bioな野菜を買って料理をして差し上げようと、新鮮な野菜と果物を買ってバックパックに直接詰めて家に帰る。
 彼女が仕事から帰ってきた。初めて見るドレスアップした彼女にビックリしながら夕食を準備していると、いきなりガスが止まってしまった。どうやらプロパンガスがなくなったようだ。仕方ない、半煮えのパスタと生の野菜を並べて、庭で夕食。なんとかなるものだが、明日はプロパンガスを買いに行かねばならないようだ。
 優しい彼女は、仕事の疲れにもかかわらず、食後に車で夕陽を見に連れて行ってくれた。近くに、フレアックというまた古い街があって、そこに12世紀のノートルダム聖堂と市役所と小さな城がある。二人で綺麗な街を散策する。さらに彼女は、近くに流れる溜息が出るほど美しい川に連れて行ってくれた。そして夜10時、二人で川縁に座り、沈む直前の陽の光を見事に反射する美しい川面を眺めていた。ちょっとロマンチック過ぎ(笑)。   (続く)
浅井岳史、ピアニスト&作曲家 / www.takeshiasai.com

春告げる聖パトリックデー

 ニューヨークの春を告げる風物詩となっている五番街のセントパトリックデー・パレード。1762年にアイルランドの兵隊が五番街を行進したのが最初。以来、257年続けられているニューヨーク市の春の伝統行事だ。社会人の音楽隊や高校のバトンチーム、ブラスバンドが腕の見せ所とばかり16日、大行進した。なかでもアイリッシュ系が多いニューヨーク市警察(NYPD)の吹奏楽部は、警察ブラスバンドとしても世界的に高い水準を誇っている。普段はパトロールに厳しい目を光らせている警察官たちも、どことなく穏やかな表情を見せていた。

日常空間を異化する表現追う

現代美術家
伊藤 知宏(いとうちひろ)さん

 文化庁の新進芸術家研修制度で昨年9月から1年間、ニューヨーク市に滞在する現代美術家の伊藤知宏(ちひろ)さん(38)。大胆な黒い縁取りの絵が特徴的で、音楽家や料理人とのコラボレーション、文筆業など活動は斬新で多岐にわたる。ブルックリンのスタジオで2月18日に取材した。 (小味かおる、写真も)

▽ニューヨークでもお忙しい毎日?
 そうですね、今回の研修テーマは「フルクサス」の研究と自分の制作活動。ポルトガルでの個展は10回目なんですが、近いので今回初めて行きます、明後日から。トマティーヨでいう中南米の野菜の絵=写真=を建物の窓にコマ送りのように展示します。それに、挿絵や文章の連載が数本。
▽ご両親が彫刻家で芸術は身近に?
 両親が楽しそうにやっていて、教わるということはなく小さい頃から描いていました。デビューのグループ展は武蔵美(武蔵野美術大学)の時、個展は卒業後に阿佐ヶ谷のギャラリーカフェ「西瓜糖」で。そこでは3年で11回も個展をやって、描くものがなくなって「そこにあるものを描く」を始めたんです。
▽1960年代の芸術活動「フルクサス」に興味を持たれたのは?
 大学受験の頃、『スタジオボイス』っていう雑誌で特集があって。その頃は黒い色は他の色を殺してしまうからと周囲の人は使っていなくて、やさしい表現が流行り始めていた頃で、黒い色を使っていた僕は、君のは表現じゃないって言われた。でも「フルクサス」の人はみんな黒を使っていてすごく救われた。
 ニューヨークで何か新しいことをやろうと、先日はダンスを見ながらアイフォーンで点や線で描いて、それを拡大して水彩にしたんです。どんなに忙しくても、ちょっとしたことでも作品が作れるような考え方と構造の研究として「フルクサス」がいい。例えば、草間彌生さんの絵画は無駄がない。自分のイメージを「点」ってことにして、色も絵の具2色買えばできるし経済的にもよくできている。そういうものを分析して自分にとり入れて文章や映像にして、「世界に出るためにはそういう基軸が必要だ」と日本の若い人に伝えたい。日本ではアメリカとまったく美術業界のルールが違うため、自国への作品制作になってしまい世界のアートの戦いに勝てない。
▽「人の目と犬の目が同じになる時、アートが生まれる」という発言について。
 現代美術って頭でひも解いていく要素が強い。作る側としてはそれをぶっちぎって頭だけでなく行動のエネルギーでと思うんですが、直観に従うだけではだめ。特にこっちに来ていろいろなアーティストに「アメリカの現代美術はロジックが大事だから解説を読め」と何度も言われた。考え抜いた作品が直観すぎると言いたかったんでしょうけれども、僕も以前より少しだけ作品について考えてから制作するようになりました。
■ことば■ フルクサス=1960年代初頭から、イベントを中心に日常的空間を異化するような「行為」を表現形式として、さまざまなジャンルで活動した前衛的芸術家たちのグループのこと。(ブリタニカ国際大百科事典小項目事典より)

ジャパンナイト ジャパンデーの夜に 5月12日

 今年で第13回目を迎える野外イベント「Japan Day@セントラルパーク」は5月12日(日)にジャパンランとジャパンデーフェスティバルの2本立てで開催される。日本文化紹介と日米市民交流が目的。
 今年は夜の部門「ジャパン2019」が加わり、人気アーティストらのコンサートがマンハッタンの2か所で行われる。
 出演アーティストは、昨年デビュー20周年を迎え、第60回日本レコード大賞を受賞した日本の歌姫のMISIA。ラルク・アン・シエル(L’Arc-en-Ciel)のリードボーカリストHYDE。日本の和楽器とロックを融合させた「和楽器バンド」、米国で大人気のパフィー・アミユミなど。
 MISIAの公演は、12日(日)午後9時(開場8時)から、ソニーホール(西46丁目235番地)で開催。特別ゲストにパフィー・アミユミを迎える。入場料は40〜45ドル、VIP券もある。発売は3月22日(金)午前10時(東部時間)から。ウェブサイトはwww.ticketmaster.comを参照。
 HYDEと和楽器バンドの公演は、、12日(日)午後6時(開場5時)からプレイステーションシアター(ブロードウエー1515番地)で開催。入場料は35〜40ドル、VIP券もある。
発売は3月22日(金)午前10時(東部時間)から。ウェブサイトはwww.axs.comから。
 同イベントは、国際交流基金、ディスクガレージ、ゴージャスエンターテイメント、 Cool Japan Music が主催、木下グループが協賛している。
 また、昼に開催されるジャパンデー@セントラルパークの開催概要は近く発表されるが、日本からの有名エンターテイナーの出演が予定されている。

ダイヤモンド街の男 深夜に宝探し

歩道の溝の中にダイヤや金くず

 マンハッタンの五番街と6番街に挟まれた47丁目の1ブロックは、通称「ダイヤモンド街」と呼ばれる宝石商店街になっている。宝石、貴金属、時計、コインの店がひしめきあう。ニューヨークのダイヤモンド取り引きの8割がこの1ブロックで行われているといわれる。
 その宝石商店街の深夜午前零時過ぎ、小さいライトを口にくわえ、ブラシとちりとりで歩道の溝を掘っている男がいた。ラフィ・ステパニアンさん(50)。2011年から8年間、深夜のこの通りで2、3時間歩道の土をブラシで集めて、その中から1ミリ以下のダイヤモンドのかけらや金や宝石のくずを集めている。いままで拾ったダイヤモンドで一番大きかったのはハーフカラットのダイヤ。8年間で集めた総カラット数は約55カラットに上る。金は44オンス拾って既に換金した。総額にして時価1万3000ドル分の金を含む加工金属を収穫したという。このほか銅やニッケル、色のついた宝石各種の屑も見つかるそうだ。この通りは路面店に限らず、ビル全体が貴金属の工房になっているため、昼も夜も宝石商や職人の往来があり、ビルの出入りが激しい。靴の底についたダイヤの屑や、運び出す時に落とした宝石などさまざま。8年間で警察に不審に思われ職務質問を受けたことも4回あまり。説明すると、空き缶を道路で拾っているのと同じ行為として黙認してくれるという。春の今は、冬の間に落ちた金属の屑が一番集まるかき入れ退き時だ。深夜の宝探しは続く。(三浦良一記者、写真も)

NYに感謝の心込め

日系団体や企業参加 90人がボランティア

 ニューヨーク日本総領事館、NY日系人会、三菱UFJ銀行とコミュニティー団体が集まり11日、「3・11ボランティア活動」を市内3か所で行った。これは東日本大震災から8年たち、3月11日は被災地を思い、東日本大震災へ多大な支援をしてくれたニューヨーカーに感謝の気持ちを示すためにニューヨーク日本総領事館の呼びかけで始まった活動で、総勢90人のボランティアが参加した。
 前日の10日、折り紙セラピストのジュリー・アズマさの自宅で折り鶴300個が作られ、翌11日午前、ミッドタウンの三菱UFJ銀行で、越和夫常務の指揮で「ライズ・アゲインスト・ハンガー」支援1万以上の緊急食が作られた。午後はウエストハーレムの食糧福祉施設で260人分の食事が鶴の折り紙と一緒に提供された。
 ボランティア参加団体は、NY日本総領事館、NY日系人会、三菱東京UFJ銀行、米国三井物産、ジャパン・ソサエティー、日本人医師会、NY日系ライオンズクラブ、ニューヨークでボランティア、補習授業校同窓会、米日協会(JACL), JETプログラム同窓会NY支部、オリガミ・セラピー協会。

高齢化の意識調査 NY日系人会が報告書

漠然とした不安感を抱きながら平穏に過ごす実像浮き彫り

 ニューヨーク日系人会(JAA)邦人・日系人高齢者問題協議会は13日夜、第71回目となる2019年度の第1回会合を開いた。昨秋に行ったアンケート調査の結果報告書が発表された。同報告書は「在ニューヨークの日本人・日系人の高齢化に関する意識調査〜訪問介護の在り方を探る〜」と題され、調査実施責任者である桃山学院大学の遠山(金本)伊津子教授が報告書の内容を伝えた。
 同調査は40歳以上の日本人・日系人に対して郵送・手渡し・Eメールを通じて調査票を配布、回収率約30%で計610の回答が得られた。回答を分析した結果、ニューヨーク近郊の日系コミュニティーは、(1)散在(一つの地域に集住していない)している、(2)在米20年以上の人が85%と在米年数が長い、(3)老後の生活は公的年金などで経済的に安定している人が半数以上いる、(4)高い英語コミュニケーション能力を持つ、(5)医療保険加入率が高いなどの5点が明らかになった。
 遠山教授は、「一見問題がないようにみえる」と前置きしつつ、(1)不健康感と不幸感がある、(2)日常生活に対する漠然とした不安がる、(3)日本的ケアの要望、(4)可能な介護の自己負担額が低い、(5)日本への永住帰国を決めている人が約20%とコミュニティーに流動性がある、という5点を紹介した。そして、「今回はかゆい所に手が届いていないという感じかもしれないが、それは次のステップとしたい」と締めくくった。
 同報告書はJAAホームページ(www.jaany.org)からダウンロードできるほか、4月11日から28日まで開催されるJAAさくらヘルスフェアでも無料配布される予定。同会合には約20人が集まった。帰国が決まったニューヨーク日本総領事館の石塚勇人領事部長と着任した大橋建男領事部長が挨拶、新メンバーが紹介された。3か月に1度、会合が開かれる予定。
  (小味かおる、写真も)

美少女戦士セーラームーン米国上演

“Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live
2・5次元ミュージカル29日と30日NYで
仕掛人の2人に聞く

小佐野文雄氏

松田 誠氏
 2・5次元ミュージカル「Pretty Guardian Sailor Moon The Super Live」が3月29日(金)午後8時と30日(土)午後1時と5時の全3公演、タイムズスクエアのプレイステーション劇場(ブロードウエー1515番地)で上演される。
 月刊誌『なかよし』(講談社刊)で、日本で1991年から連載された武内直子原作の少女漫画「美少女戦士セーラームーン」。「2・5次元ミュージカル」は新ジャンルのエンターテインメント。漫画やアニメは2次元で舞台は3次元なことから、ミュージカルライブパフォーマンスは2・5次元と呼ばれる。日本では専用劇場が設けられるほどの人気だ。
 今回の米国公演はワシントンDCで3月24日にプレミア公演、その後ニューヨーク公演と続く。制作:ネルケプランニング、ニューヨーク公演プロデューサー:上羅尚治(ネルケプランニング)、吉井久美子(ゴージャスエンターテイメント)。日本語上演、英語字幕付き。講談社のセーラームーン原作編集担当の小佐野文雄氏とネルケプランニング会長、2・5次元ミュージカル協会理事長の松田誠氏に今回の公演について聞いた。(本紙・三浦良一)

「最高のパフォーマンスを生で」
講談社 小佐野文雄さん

本紙 小佐野様、数ある日本製漫画、アニメの海外進出作品のなかでも、この美少女戦士セーラームーンが世界中でヒットして支持された理由はなんだと思いますか?
小佐野 確かに、大変ありがたいことに「美少女戦士セーラームーン」は、アメリカはじめ50か国以上の国々で出版されたりアニメが放映されたりしています。派手なコスチュームや華麗な変身シーン、かわいいキャラクターたちなどが受けたという方もいらっしゃいますが、私としてはベースにあるシンプルでわかりやすい物語性にあるのではないかと思っています。 
本紙 アメリカのファンにこの作品、ステージを通して最も伝えたいことは何ですか?
小佐野 ミュージカルを含め、既に25年以上上演しているステージをアメリカの地で本格的に上演できることを大変うれしく思っています。アメリカのファンの皆様に楽しんでいただけるようストーリーはわかりやすく派手で元気の出るパフォーマンスを準備しています。これぞ美少女戦士セーラームーンの世界と生で感じていただけるのではないかと思っています。
本紙 米国の読者、会場に足を運ぶお客さんに一言お願いします。  
小佐野 念願のワシントンおよびニューヨーク公演がついに実現できることとなり、この上ない幸せです。どちらの公演も多くの方に足を運んでいただけると聞き身の引き締まる思いです。最高のパフォーマンスをお届けできるよう役者もスタッフも精いっぱい頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたします!

「日本発、本物の醍醐味をぜひ」
ネルケプランニング 松田誠さん

本紙 松田様、今回の2・5次元ミュージカルはニューヨーク、ワシントンDCの人たちの目にどんなふうに映ると思いますか?
松田 今回、初の米国公演を行う「Pretty Guardian Sailor Moon The Super Live」は、世界中で長い間、多くのファンを魅了し続けている「美少女戦士セーラームーン」が原作です。昨年のパリ公演もお客様から「日本から本物がきた!」「ずっと待っていた」と言っていただきました。原作はアメリカでも長い間、多くのファンに愛されている作品です。厳しい目を持ったニューヨーク、ワシントンのお客様にも、原作同様、日本発の作品として、本物として受け入れていただけると自負しています。
本紙 2・5次元ミュージカルの海外での拡大の可能性はいかがでしょう?
松田 まずはこうしたエンターテイメントがあるということを知ってもらいたいと考えています。今回は日本政府の意向で国際交流基金が行っている「Japan 2019」の公式企画として、米国公演を行うことができました。来年、2020年は東京オリンピックもありますので、今後も新たな日本文化の普及と言った観点から、こうした公の企画があればぜひ参加できればと思います。
本紙 米国の読者、観客の皆様に一言お願いします。
松田 日本が誇る漫画、アニメ、ゲームを原作とした2・5次元ミュージカルが、初の米国公演を行います。「美少女戦士セーラームーン」の原作の世界観を十分に楽しんで頂ける作品です。ぜひ楽しみに待っていてください。

当日券販売へ

 入場料は30ドルから75ドルで、すでに前売り券は完売しているが、主催者側では、一般向けに新たに当日券を若干数販売する見込み。詳細は電話888・929・7849、ウェブサイトhttps://sailormoon-official.com/stage/superlive/usを参照。

勉強はコスパ最強の娯楽

河野 玄斗・著
KADOKAWA・刊

 とかく現代は誘惑が多い。テレビをつければさまざまな番組が放送されているし、動画投稿サイトで映像が見放題、SNSでいつでもどこでも誰かと話せてしまう。それらの娯楽についつい時間を費やしてしまい、勉強、とりわけタメになる何かを身に着けることを怠ったために後で痛い目を見る人も多いのではないか。
 この本は勉強の効率を突き詰め、誰でもすぐに使え、必要なことすべてを網羅的に、かつ、詳しく記した実用書である。学生であれば受験勉強、大人であれば資格勉強など、誰にでも勉強する機会はあるはずだが、ついつい誘惑に負け娯楽に走ってしまう、そんな人に読んでもらいたい一冊だ。
 著者は小学2年生で公文の中学数学基礎課程を、小学3年生で高校数学基礎課程を終えた現役の東京大学医学部学生である。これだけ聞くと、「天才だから頭のつくりが違う」と思いがちだが、中学受験で第1志望校に落ちるなどの失敗経験もあるので、とてつもない努力家なのだと感じる。また、東大2年生の秋から司法試験の勉強を始め、たった8か月で司法予備試験(法科大学院に進学しない人が司法試験受験資格を得るための試験)に一発合格し、4年生の時に司法試験にも一発で合格している彼だが、司法試験勉強中の医学部の定期テストではギリギリ単位が取れる程度の点数を目標にしていたというのを聞くと、ごく一般的な学生という印象を受ける。では彼にあって他の人にないものとはなんだろうか。それは勉強を楽しんでいることである。
 どうしたら彼のように勉強を楽しめるようになるのか。答えはこの本に書かれている。本書では誰もが知っているPDCAサイクルの大切さを導入部分で語った後、勉強する意義やモチベーションを保つポイント、「逆算勉強法」といった勉強を楽しむコツや効率的に学ぶノウハウを紹介。さらに勉強を成功に導く4つのテクニックと高校生向けに主要5教科(国語、数学、英語、理科、社会)の受験対策や司法試験体験談も収録している。
 彼は闇雲に勉強するのではなく、目標を見据え計画したものを実行し、その改善点を見つけて次の計画に反映させることを繰り返すことが大切だと語る。目標は、「国を良くしたい」、「困っている人を助けたい」といった崇高なボランティア精神でなくても構わない。例えば、お金が欲しいから、将来高学歴な人と結婚したいからなど、俗っぽくても害がなければ良いというのである。それが誰かのためになれば結果オーライであり、さらに自己肯定感や幸福感といった自分のためにもなる。
 何事も楽しめるかどうかは自分次第。今、何をすることが自分の幸福に繋がるのか考えて優先順位をつけ行動することは、結果として失敗したとしても悔いは残らないものである。娯楽の多いなか、後回しにしがちな勉強を楽しいものと捉え行動することでより良い自分になれるなら、むしろ勉強こそコスパ最高の娯楽であるといえる。(西口あや)

CMなどの特撮現場で本領発揮

特殊効果 製作者
土持 智加さん

 コンタクトレンズの箱に水しぶきを飛ばしたり、シューズに色つきの煙をもくもくと掛けたり、水の入った水槽にインクを流すことで雲のように見せたり…。土持智加(つちもち・ともか)さんは、何気なく見ているコマーシャル映像やポスターなど広告の裏側の仕事である特殊効果や小道具作りに携わる。
 岡山県で生まれ育ち、高校時代に1年間の交換留学でオハイオ州に来たのが渡米の第1歩。姉の大学留学に続いて自分も外国に行きたいと思い、アイオワ大学へ進学してプレエンジニアリングと心理学を学んだ。機械工学を専攻したいと2010年、ニューヨーク工科大学へ転校。卒業してエンジニアとして最初に就いたのが発電所デザインの仕事で、「ぜんぜん楽しくない」と思い数か月で辞めた。続いて、商品の模型などプロトタイピングを請け負うスタジオでインターンとして雇われるが、そのスタジオが引越すことになり無職に。そして、近所にあって仕事上でも面識のあった特殊効果製作会社スウェル(青木まこと社長)の戸を叩いた。当初はパートタイムで働き、専門学校にも通ってグラフィックデザインを学んだ時期もあった。 
 地味な仕事で、重い水を運ぶなど肉体労働だ。撮影では1テイクごとに水槽の水の入れ替えをするなど根気も要る。ペンキを使う仕事はいろいろな所についてしまって大変だ。撮影が長引くことも多く、友達に会うなどプライベートの予定は組みにくい。取材日も夜遅く撮影現場から弊社へ直行してくれた。しかし、小道具や仕掛けを作る仕事では、機械工学やグラフィックデザインの知識を生かせるし、毎回異なる仕事に関わり新しい技術も出てくるので、「飽きることがない」と話す。
 ブルックリンのグリーンポイントにある特殊効果製作会社スウェルで働いて6年、パートタイマーやインターンが出入りするが基本的にフルタイムのスタッフは社長と二人。紙媒体が減り、特殊効果を手がける人が次々に引退する今、スウェルのような会社は稀少価値で、とくに同社は、長年の経験から撮影時に起こる予想外のことに臨機応変に対応できると業界では定評があるという。
 余暇は、近所の公園でぼーっと過ごしたり、天然石のジュエリーを作ったり。旅行も好きで、昨年はネパールへ出かけた。「そういう時は早めにお休みをいただきます」。(小味かおる、写真・三浦良一)