世界の中での日本舞踊を伝えて

日本舞踊家
伊藤さちよさん(藤間さちよ)

「今度のさろんで、私の創作舞踊で自身が踊るのは最後だと思います」というメールが来た。「ありがたいことに手話も含め、いろいろな方がコラボレーションしてくださり、全力投球で頑張ります」とあった。「さろんシリーズ」は日本の芸術紹介を目的とした公演とフォーラムで、一回一回、どのプログラムもテーマが違い、ユニークでスペシャルな内容。第65回目の公演となる「ヒューマン・スピリット」が9日、天理文化協会で開催された。
 人種や土地を問わず、同じヒューマンスピリットに焦点を当てた内容で公演最後で客席に置かれた赤い布切れをひとつに結んで環を作った。「最後のぼろ布は私自身絶望のぼろぼろでもあり、人類の歴史の悲劇の結果でもあり、救われるためには愛の絆が、結ぶことで、最後観客の一人ひとりが参加していただくのが大切というメッセージが伝われば」との思いがあった。
 伊藤さんが立ち上げた「サチヨイトーアンドカンパニー」は、日米の文化交流を目指し、1981年に設立された非営利法人団体。ニューヨーク市で恒例のブルックリン植物園桜祭りでの定期公演のほか、学校や美術館などの公共施設での公演、慈善公演としては市の子供たちのためのワークショップや養護施設訪問などを行っている。
 日本では、高等部からいた青山学院大学時代、授業が終わると近くの喫茶店で着物に着替えアメリカンクラブへ日本舞踊を教えに行っていた。同大を72年に卒業後、来米。アメリカンダンスフェスティバルで米国デビュー、73年に当時ジャパン・ソサエティーにいたシロタ・ベアテ・ゴードンに見い出され、アジア・ソサエティーから全米公演した。「日本の舞踊だけを知っていても比較文化として教えることができない」と世界の舞踊も研究して博士号も取得。長年ニューヨーク大学で客員教授を務め、ジュリアードスクールなど各地の大学で教授、2008年に約40年の日米文化交流貢献を称えられ外務大臣賞を受賞、11年にはカンパニーの30年の市への貢献を認められニューヨーク市長宣告賞受賞している。
 さて、今回自身最後と覚悟を決めて立った舞台。歌あり詩の朗読ありの盛りたくさんの舞台だった。翌日、メールが来た。「今回で最後、と考えていましたが、お客様からの良い評判が会場だけでなく、メールも多くいただき、エネルギーがチャージされました。躊躇です。頑張るしかないですね」とあった。まだまだいける気になったようだ。(三浦良一記者、写真も) 

北米最大の日本映画祭 ジャパンカッツ

7月19日から26本

 北米最大の日本映画祭、第13回「ジャパンカッツ」が7月19日(金)から28日(日)まで、ジャパン・ソサエティー(JS=東47丁目333番地)で開催される。アクション時代劇、家族ドラマ、コメディー、ドキュメンタリーや実験映像など、さまざまなジャンルの日本映画から26本の長編作品と16本の短編作品を全作英語字幕付きで紹介する。
 7月19日(金)午後7時からのオープニング作品は、米国初公開の矢口史靖監督によるミュージカルコメディー「ダンスウィズミー」。矢口監督と女優・三吉彩花をゲストに迎え、上映後にはオープニング・ナイト・レセプションも行われる。センターピースは24日(水)午後7時から、塚本晋也監督が出演、脚本、撮影、編集、製作を務めた注目作「斬、」を上映する。
 そのほか、小林薫&柳楽優弥の豪華ダブル出演、是枝裕和監督&西川美和監督の愛弟子・広瀬奈々子の監督デビュー作品「夜明け」(23日)、是枝監督が総合監修を務めたオムニバス作品「十年 Ten Years Japan」(20日)、新鋭・三宅唱監督による「きみの鳥はうたえる」(22日)などの話題作を上映。
 ドキュメンタリー映画は自殺志願者を支える牧師、認知症の患者を抱えた家族、全盲者の監督による映画制作の現場など日本が抱える社会問題や社会の中の弱者側を主体にしたヒューマニストな3作品を紹介。また、クラシック作品のリマスター版では、アニメーションの巨匠・手塚治虫の息子である手塚眞監督が1985年に制作した監督デビュー作品「星くず兄弟の伝説」(27日)を上映する。そして同映画祭の最後を飾るのは、若手女性監督・箱田優子の監督デビュー作品「ブルーアワーにぶっ飛ばす」(28日)。箱田監督と女優・夏帆、シム・ウンギョンをゲストに迎える。 
 入場料は一般15ドル、学生・シニア・障害者12ドル、会員10ドル。7月19日(金)と24日(水)の上映後パーティー付き上映会は一般21ドル、学生・シニア18ドル、会員16ドル。すべての上映会に入場できるオール・アクセス・パスは会員のみ210ドル。チケットは電話212・715・1258、またはオンラインから購入できる。全映画リストや時間などの詳細はウェブサイトwww.japansociety.orgを参照。 

組織を揺さぶる陰謀 Men in Black: International

 シリーズ4作目というよりリブート版かつスピンオフに近い。元々、アメコミをベースにしたM1B(メン・イン・ブラック)は1997年、2002年、2012年の3作でいずれも主役はウイル・スミスとトミー・リー・ジョーンズ。黒いスーツにサングラスといえばすぐにスミスの顔が浮かぶほどで新作で彼の顔が見えないのは少々寂しい気もするがクリス・ヘムズワースというビッグネームを配し、製作総指揮スティーブン・スピルバーグとくれば期待は高まる。が、結果としてはかつてM1Bに溢れ出ていたパロディー感が薄れ、張り合うエイリアンの奇抜さも今一つでどこにでもありそうなSFアクションに落ち着いてしまったのが残念。
 新材料と言えば男性社会のM1Bで女性の躍進が目立つこと。前作から続投のエージェントO(エマ・トンプソン)は007ジェームス・ボンドの元ボスMの役柄を思わせるベテランの貫録を発揮。凄腕エージェントH(ヘムズワース)の相棒Mには女優でミュージシャンのテッサ・トンプソンが抜擢され、勇敢な女性エージェントの存在感を示す。続編は「M&WIB」(メン&ウィメン・イン・ブラック)へとステップアップする可能性もあり。
 T・トンプソンは「Thor: Ragnaro」(マイティ・ソー/バトルロイヤル」(17年)や「アベンジャーズ/エンドゲーム」(19年)で女戦士ヴァルキリーを演じておりヘムズワースとは息もぴったり。共演はリーアム・ニーソン、レベッカ・ファーガソンら。監督は「The Fate of the Furious」(ワイルド・スピード ICE Break、17年)のF・ゲイリー・グレイ。
 過去に地球を救うほどの活躍をしたHは最近はいささか脱線気味。それでもロンドンでM1Bを揺さぶる重大事件捜査のために奮起一転。パートナーは新任のM。実はMは子供の頃にM1Bに遭遇している。記憶抹消は免れ、以来、憧れのM1Bエージェント目指して一直線に生きてきた。
 HとMは何にでも姿を変えることができるエイリアンと背後にいる黒幕のあぶりだしにかかる。
 Mになついてくるポウニーというどこかヨダ風のミニチュアサイズ・エイリアンがかなりのキャラクターだ。2時間。PG-13。(明)

■上映館■
Regal E-Walk Stadium 13 & RPX
247 W. 42nd St.
AMC Empire 25
234 West 42nd St.
AMC Loews 34th Street 14
312 W. 34th St.

大谷由里子さん x 重光悦枝さん 特別講演&交流会

ココロの元気、伝えます!

本紙で11年に亘ってコラム「大谷由里子の『ココロの元気』のつくり方」を連載中で、日本で地域の活性化やリーダーの育成活動に手腕を発揮し、日本国内各地や世界を飛び回っている大谷由里子さん。NY店も含め海外に750店舗以上の展開で、世界にラーメン文化を根付かせることに尽力している、味千ラーメン副社長の重光悦枝(しげみつ・よしえ)さん。世界で活躍する女性たちの出会いと交流の場を提供するため活動する団体「グローバル女子会」の理事でもあるお二人の来米に合わせ、特別講演会・交流会を企画しました。
重光さんには、NYで起きているラーメンブームよりずっと前から中国やアジア各国、そしてNYに進出。独自の展開で成功し、今や、日本国外で出店している日本の飲食店チェーンとして圧倒的に国外店舗数1位を誇る味千ラーメンの戦略を語って頂きます。
大谷さんには、世界各地の講演で「目からうろこが落ちた」と大評判の、笑いあり、そして参加者一人一人がすぐに実践できる形の「大谷流ココロの元気のつくり方」を語って頂きます。日本では、吉本新喜劇を取り入れたリーダー研修なども人気の大谷さんはNYでは9年ぶり3度目の講演となり、過去の講演はいずれも参加者の満足度が非常に高いものでした。
そして、お二人の講演が終了後は、「NYで新しいご縁をつくりたい」というお二人のご要望に応え、参加者の皆様との歓談の時間を設けています。是非、この機会を新しい人脈作りにご活用下さい!

日 時: 2019年6月26日(水)午後6時30分(6時受付開始)〜午後9時までを予定
会 場: Global Labo 545 8th Ave., #1410, New York, NY 10018 
        (8番街、37丁目と38丁目の間)
参加費: 20ドル
定 員: 30名 *要事前予約・前払制
(お申し込みの際に、クレジットカードでお支払いいただくか、小切手を送付下さい。
小切手の場合は弊社に到着した時点で正式にお申し込みとさせていただきます。)

オンラインでのチケット購入はこちらから

 

大谷由里子 有限会社志縁塾・代表取締役 奈良県出身。京都ノートルダム女子大学を卒業後、吉本興業へ入社。若手芸人を次々と売り出した「伝説の女マネージャー」として知られる。「よしもと印天然素材プロジェクト」では、ナインティナインや、雨上がり決死隊の売り出しに尽力。 2016年、法政大学大学院・政策創造研究科を修了。 また、「笑い」を用いた自立・自走の「人材育成法」は、NHKスペシャルや日本経済新聞など数々のメディアで話題となっている。「ビートたけしのいかがなもの会」(テレビ朝日)、テレビ寺子屋(フジテレビ)にも出演中。著書は35冊を数える。

重光悦枝 重光産業株式会社・代表取締役副社長 熊本県出身。熊本で創業し50年。熊本から世界へ、12の国と地域に広がる「味千拉麺」ほか、5ブランドのラーメン店・飲食店を展開している重光産業のスポークスパーソン。味千拉麺のマスコットキャラクター・チィちゃんのモデルでもある。 「食」は「人」に「良」と書く。安くておいしくて栄養があるラーメンは庶民の味方。世界に一人でも多くのラーメン大好き人間を増やし、そのことで平和に貢献する!という父の遺志を受け継ぎ、熱く、熱く活動中。出会いのご縁を大切に。今日も幸せなご縁に心から感謝して、ラーメンのEvangelist、チィちゃんです。

【今週の紙面の主なニュース】(2019年6月15日号)

今週のデジタル版は表紙をクリック↓

(1) 和菓子の心  三堀さんNYで実演披露(1面)
(2) 野球で北米結ぶ友情の絆 四国アイランドリーグplus 米カンナムリーグ6強豪と20試合予定坂口理事長に遠征の抱負聞く (2-3面)
(3)    イケメン男子 服飾Q&A69 ケン 青木  着心地の良いウールのスーツ(3面)
(4)    ヘリ白昼のビル街墜落 マンハッタン中心部 屋上に激突し操縦士死亡(5面)
(5) 米陸軍士官学校 車両事故22人死傷 (5面)
(6) 日本クラブ野球予選終了 堀田/静銀が決勝進出 準々決勝戦15日に開催 (6面)
(7) 歩行者天国は成功 タイムズスクエア 10周年、経済効果あり(7面)
(8) 「アマテラス」 27日からNYで ヒロトズショー 古典神話基にダンス公演(11面)
(9)  昆布の力と旨味を学ぶ ブーレー氏と奥井海生堂コラボ 三菱ケミカル・クリンスイの水もひと役(12面)
(10) NY生活ウーマン 舞踊家・振付師  池田 薫さん 日系強制収容の苦悩をダンスで(17面)
(11)  水戸発手づくり納豆 NY即売会で完売(25面)
(12) 夏夜のオアシス ミッド・サマー・ナイト・スイング(25面)
(13) 自立した女性描きたかった メトロポリタン美術館「あさきゆめみし」展示 源氏物語展 漫画家の大和さん講演(25面)
(14) シネマ映写室MOVIE The Secret Life of Pets 2ペットたちの冒険とチャレンジ(25面)
(15) NYジャパニーズ JAZZフェスト3日間連続スモークで(27面)

和菓子の心 三堀さんNYで実演披露

 アジアソサエティーで10日夕、和菓子を紹介するイベントが開催された。神奈川県横須賀市の製菓店「和菓子司いづみや」三代目当主で、自らを「菓道家」と名乗る三堀純一さんによる和菓子づくりの実演が行われた。三堀さんは、和菓子をつくる所作をアートとして発展させ、茶道や華道のように世界観や精神を感じてもらおうとオーストラリア・シドニーのオペラハウスなど海外を拠点に活動し、高い評価を受けている。 ニューヨーク総領事の山野内勘二大使が祝辞を述べ、和菓子は「静寂ともてなしの心」と説明、新元号「令和」の意味する美しいハーモニーに通じると紹介した。
 デモンストレーションで、ねりきりに繊細な模様を付けて行く様子が大画面のスクリーンに映し出されると会場の観衆の目が釘付けになった。実演後の質議応答で、三堀さんがなぜ日本国外に和菓子を紹介する活動を続けているかという質問に対し、「日本の子供たちは、和菓子よりもチョコレートやケーキのような洋菓子ばかりを食べている。浮世絵や酒、茶道のように海外からの逆輸入文化として和菓子を日本に紹介することで、最終的には日本の美しさを日本の子供に伝えたいという気持ちがあるからだ」と答えた。
 また、SNSで現在6個を駆使して和菓子の魅力を発信しているが、「今は作品よりも、キャプションが大切だと思っている。テクノロジーにはできないフィロソフィーだなと。そのうち、3Dプリンターで同じ形のものは短時間で何百も作りだせるようになるだろうが、大切なのはそれを作る心だ。AI(人工知能)には作り出すことのできない『僕にしか生み出すことのできない美味しい』を生み出していきたい」と講演を締めくくると、会場から大きな拍手が沸いた。
 実演講演のあと、レセプションがホールで行われ、作り立ての水羊羹とお茶が振る舞われた。会場では、キモノハウスの皆さんが着物姿で来場者をもてなして美しい華を添えた。

希望の 微笑み プエルトリカンパレード五番街で

 1898年に起こった米西戦争の際、プエルトリコの領有権はスペインからアメリカに移り、その後、何度も独立の動きや、州にする運動もあったが、結局プエルトリコは現在の「自治連邦区」という状態にとどまっている。毎年6月の第2日曜はプエルトリカンバレードが盛大にニューヨークの五番街で繰り広げられる。旗はとても大切な意味がある。1948年に独立の動きを抑えようという法律ができ、旗を所持しているだけで懲役10年という弾圧があった。57年に同法が廃止され、翌年からパレードが始まった。旗に対する特別の思いが全身に込められている。「明日への希望を忘れず」の心は受け継がれている。
(9日、五番街で、写真・三浦良一)

野球で北米結ぶ友情の絆 四国アイランドリーグplus

米カンナムリーグ6強豪と20試合予定
坂口理事長に遠征の抱負聞く

 日本のプロ野球独立リーグである「四国アイランドリーグplus」の選抜チームが、2016年に続き3度目の北米遠征のため来米する。6月中旬からニューヨーク、ニュージャージー、そしてカナダのケベックで米国のベースボール独立リーグ「カンナムリーグ」に所属する現地の6強豪チームと公式戦20試合を行う(本紙6月8日号既報)。四国アイランドリーグplus理事長の坂口裕昭さんに北米遠征の抱負を聞いた。
(聞き手・本紙 三浦良一)

本紙—9年前に四国とのかかわりができたきっかけを教えてください。
坂口—もともと企業再生などを扱う弁護士をしていましたが、2011年当時、経営危機の状況にあった四国アイランドリーグplusに所属する徳島インディゴソックス球団の立て直しを依頼され、引き受けさせて頂きました。私自身、子どものころから野球などのスポーツを通じて様々なことを学んできましたし、これからの日本の将来を考えた時、少子高齢化など多くの社会的な課題を抱える四国という地域で、スポーツを核に社会課題を解決する一助になれればと考え、挑戦することを決意しました。

本紙—四国アイランドリーグが他県の野球チームと違うところは何ですか?
坂口—我々の強みは、ずばり、創設から14年をかけて少しずつ築き上げてきた、四国の皆様との絆の強さです。まだまだ発展途上ではありますが、四国の皆様との強い絆をベースにして、単に野球の試合をするというだけではなく、社会課題の解決や周辺ビジネスの拡大という観点を強く意識した運営を心掛けており、この点が我々のリーグを特徴付けているのではないかと考えます。今回の遠征に象徴される海外との関係構築も、この運営方針に沿うものです。
本紙—今回の6月からの米国遠征で最も大切にしていること、重視しているのは何ですか
口—まず、一つ目は、選手たちの成長、という観点です。代表チームに選ばれた選手たちには、野球の本場で高いレベルの競技力に触れるとともに、慣れない環境の中で、一人の社会人としての人間性及び国際感覚を養って欲しい、と考えています。もう一つは、先に繋がる国際関係の構築、という観点です。単発のイベント事業として終わらせず、試合や様々な交流イベントを通じて、現地の皆様に、四国各県や日本の文化を肌で感じて頂き、この先も実際に、文化交流、ビジネス交流が続くような仕組みを作りたい、と考えています。
本紙—四国アイランドリーグplusが野球を通じてできる人と文化との結びつきについてお聞かせください。
坂口—単に野球の試合だけをしていても、本当の意味での文化的な交流は生まれないと思います。選手たちがスタジアムの中でお客様に最大限のファンサービスをするのはもちろんのこと、我々スタッフも含めて関係者全員が、スタジアムの外にも飛び出し、地域の皆様と直接触れ合うことではじめて文化的な交流は生まれます。
 野球などのスポーツが有する本質的な価値とは、あらゆるボーダーを飛び越えて、人と人が分かり合えるツールになり得る、という点にあると考えます。我々のリーグは、この価値を最大限活かせるような運営を心掛けています。
本紙—リーグの社会的役割は何だと思いますか?
坂口—単にスタジアム周辺で賑わいを創り出したりするだけではなく、実際に地域が抱える課題を主体的に解決できるような役割を果たさなければならないと考えています。たとえば、日本、特に、我々がホームグラウンドとする四国という地域では、少子高齢化が進んでいます。こうした環境の中で、子どもたちに夢を持ってもらえるように、挫折から這い上がってスターダムに躍り出るような選手を育成したり、高齢者の皆様が健康を維持できるように、生涯スポーツを推進するような活動に貢献したり、地域に経済的なインパクトをもたらせるように、周辺ビジネスの領域で新規事業を生み出したり・・・
こういった一つ一つのことを、景気に左右されることなく、地道に続けていくことこそ、我々に与えられた使命、社会的役割だと考えています。
本紙—リーグの選手育成実績についておきかせください。
坂口—我々は、リーグが創設された2005年から2018年まで14年連続で、合計62人の選手を日本のトップリーグに送り出しています。中には、日本代表チームに選出されたり、トップリーグで首位打者のタイトルを獲得したり、1軍に定着してコンスタントに結果を残したりするような選手も出てきました。
本紙—地域貢献活動についてどんなことをされてきてますか
坂口—我々のリーグに所属する選手たちは、野球で試合に出るだけではなく、毎年、四国全体で、年間を通じて700回以上の地域活動に参加しています。その内容は多岐に及び、地域の子どもたちを対象とした野球教室のほかにも、地域の皆様と一緒に清掃活動を行ったり、地元のお祭りに参加したり、高齢者の皆様に交じって農作業のお手伝いをしたり、地域のあらゆるところに顔を出し、対話をし一緒に汗を流しています。
本紙—海外遠征で、選手たちに期待することはなんですか
坂口—とにかく、全てに好奇心を持って、ポジティヴに捉え、真正面から課題と向き合うことにより、壁を乗り越えていって欲しいと思います。
本紙—試合を応援する米国在住の読者のみなさんに一言お願いします。
坂口—我々のリーグに所属する選手たちは、日々、夢と現実の狭間でもがきながら、頂点を目指しています。足りないところも沢山ありますが、人間味に溢れ、大きな夢を持っています。そんな選手たちが、がむしゃらにプレーする姿を応援しに、ぜひ、スタジアムへ足をお運び頂ければと思います。スタジアムでは、我々が四国で毎試合行っているように、試合後、選手たちがゲートで直接皆様をお見送りさせて頂きます。その際、一言でも、選手たちにエールをお送り頂ければ、望外の喜びです。我々スタッフを含め、代表チーム一同、皆様とお目にかかれる日を心待ちにしております。

着心地の良いウールのスーツ

イケメン男子 服飾Q&A69

 今回はウール/羊毛について書いてみます。皆様におかれましても普段ビジネス用からプライベートな御洒落用まで一番御利用されているのがウールを生地として用いたスーツ、ブレザーやジャケット、スラックスそしてコートなどではないでしょうか。
ウール、シルク(以上動物繊維に分類)、コットン、麻(以上植物繊維に分類)といったいわゆる「四大繊維」は私たち人類との関わりが長くまた深く、ウールについては9000年を越える歴史があると言われております。特に原毛が採れる羊は食用であることも大きなポイントでもありました。かつてのモンゴル帝国の世界制覇も移動する食料と衣料品の供給源でもある羊が騎馬隊と動きを共に出来たことが大きな理由であったのでした。
 ウールの歴史の中でエポックメイキングだったのが14世紀スペインにおけるメリノと呼ばれる高級種の羊の開発・改良であったと言われております。この種は毛の色がほぼ白、原毛の品質も素晴らしく、さまざまな色に染めるのが容易となり、インスタならぬ(笑)仕立て映えする生地が織られる様になったのですね。現代においてメリノ種の羊は主にオーストラリアとニュージーランドを中心に放牧、飼育されており、特に
オーストラリアにおいては9000万頭いると言われております。
 さて、ウールのどのような特性が長い間私たちに愛用されてきた理由なのでしょうか?
 まずコットンや麻と比べて、①シワになりにくく、シワとなっても回復が早い(スラックスのクリースもウールが一番取れにくいですよね)、②型くずれしにくい、③色の経年変化が極めて少なく色落ちがない、といった基本的な特徴がいくつもあるわけなのですが、中でも一番の良い点は身体に優しいということではないかなと。つまり寒い冬の時期には暖かく、そしてこれからの暑い時期には涼しいのです。ウールは外気が低い場合は身体の
熱を逃がさず、逆に気温が高い場合には汗など水分を吸収して身体の熱を発散させるのです。実はウールはコットン以上に水分を吸収出来、その上自ら蒸発させる機能もあり、そのため涼しく感じさせてくれるのですね。もしかしたら皆様も ウール地のスーツが水に濡れた際に意外に早く乾いたことに気づかれたことがあったのでは? 対してコットンのシャツやジーンズは乾くの遅いですよね。と言っても乾燥機が常識なアメリカでは関係ないですかね(笑)。そうそう、出来上がった製品のサイズが安定していることもまたウールの良い点でしょうか。
さあ これから夏本番、夏用ウール地ウール・トロピカルでカッコ良く、心地良く過ごしましょう!
けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス・カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ

ヘリ白昼のビル街墜落

マンハッタン中心部
屋上に激突し操縦士死亡

 マンハッタンの高層ビルの屋上に10日午後1時45分頃、ヘリコプターが墜落した。乗っていたのは操縦士のティム・マッコーマックさん(54)1人で、即死した。同日は朝からの雨で、摩天楼は激しい雨と濃霧で上空は視界ゼロに近い状況だった。事故の数分後に消防員が到着、同ビルや近隣ビルの人を避難させ、大破したヘリコプターの炎上はすぐ消火された。
 事故現場は7番街787番地、51丁目と52丁目の間にある54階建て「AXAエクイタブルセンタービル」の屋上で、同機はマンハッタン東34丁目にあるヘリポートから駐機場であるニュージャージー州のリンデン空港に帰る予定だったが、離陸した11分後に同ビル屋上に直撃した。複数メディアによると、離陸5分後に、同ヘリポートに「霧で航路が分からないので、引き返す」と連絡していた。連邦航空局(FAA)によると、マッコーマックさんは計器飛行証明を持っておらず有視界飛行のみの免許。同機は同日朝、同州ウエストチェスターから乗客1人を乗せ、マンハッタンまで飛び、霧が晴れるのを2時間ほど待っていたという。航空法規ではマンハッタン両側の川上空は高度1000フィート(約50階建てビルの高さ)を飛行するが、マンハッタンを横切る場合はさらに高度が必要だ。
 マコーマック操縦士は、不動産関連会社「アメリカン・コンチネンタル・プロパティー」付の個人所有ヘリコプターの操縦士として勤務5年目で、飛行歴の長いベテラン操縦士だった。リンデン空港長は、「これは着陸ではなく激突。操縦士は大変なことになるのを予想しただろうが覚悟して、最良の場所を選んだのだと思う。」と、その死を悼み、遺族も「彼は多くの人を巻き添えにしないようにした。ヒーローだ」と話している。
 同ビル7階にいた人は「小さい地震のようだった」と、5階にいた人は「マンホールの蓋が爆発したような音がした」と話している。また、東20丁目付近での目撃者は、「ヘリコプターが非常に低く飛んで、上がったと思ったら下がったのでイーストリバーに突っ込むと思ったが、そのまま北へ飛んでいった」話している。ニューヨーク州のクオモ知事は事故直後に「テロの可能性はない」と発表、テロとの不安を抱いた市民を安心させた。 
 マンハッタンでのヘリコプター墜落事故は5月15日に続きこの1か月間で2度目(週刊NY生活5月25日号既報)。利用客は観光飛行や週末のハンプトンの別荘への飛行、空港間の飛行などが主。2016年にニューヨーク市はヘリコプター企業との話し合いで、年間6000回を超える飛行を半減することを妥協させた。事故は珍しいものの、市民からの騒音や発煙に対する苦情は多い。

歩行者天国は成功

タイムズスクエア
10周年、経済効果あり

 ニューヨーク市の繁華街タイムズスクエアでの車両禁止(カーフリー)区域導入10年を祝う記念祝賀会「世界の交差点」が4日、導入当時のブルームバーグ市政下の市議や市職員らも参加し行われた。
 日本の歩行者天国にあたるタイムズスクエアでの「車両禁止区域」については、間違いなく成功しているとされている。導入同時の市交通委員だったジャネット・サディク・カーン氏は「これを最初に推し進めようとした時、当時のブルームバーグ市長は『これはクレイジーだ』と懸念していました」と当時の状況を振り返った。しかし専門家や提唱者の後押しを受けてデブラシオ市長に代わってからもスペースを広げ「広場化」を進めてきた。またタイムススクエア以外でも、アースデー(今年は4月27日に実施)はじめ年4回ほど、タイムズスクエア以南のユニオンスクエアまでのブロードウエーやワシントンハイツなども1日カーフリー・デーとして車両禁止区域にしている。
 車両禁止区域をもっと広げようという動きは現在も続いており、金融街やタイムズスクエアとヘラルドスクエアの間のブロードウエー、またロックフェラーセンターとトランプタワー周辺などを車両禁止区域する案も出されている。しかし、市当局はおよび腰だ。車利用者やビジネス関係者からの反対があり、また着ぐるみで観光客から強引にお金を取る行為やトップレスでうろついたりする人などの取り締まりにも腐心してきたからだ。
 地元組織タイムズスクエア・アライアンスは、同地区はこの10年で小売店のレント代は3倍になったものの、訪れる人は1日46万人以上と増加していることを指摘。ラスベガス・ストリップに次ぐ米国第2位(なお3位はセントラルパーク)となっている。交通機関が十分整備された区域では車両が入れないことによるデメリットはほどんとないという。
 同市当局は今年4月、交通状況をより詳しく調査し、バスの遅延問題などと合わせ、マンハッタン南部などに車両禁止区域の可能性を探ると発表している。

ラガーディア空港大改造計画 2022年完成、73都市結ぶ

 クイーンズにあるラガーディア国際空港はジョン・F・ケネディ国際空港、ニューアーク国際空港とともに、ニューヨーク都市圏の空港の1つ。多くの利用客を抱えるにもかかわらず、老朽化が進み、施設が汚い、充実していないなど悪評だったため、ニューヨーク州のクオモ州知事とジョー・バイデン副大統領(当時)が同空港の再建を企画。2016年6月から着工して、22年の完全リニューアルに向けて、現在も改修工事が進められている。
 リニューアル後は現在分離している4つのターミナルが1つにつながることに加えて、隣接するグランド・セントラル・パークウエーからの交通網も改善され、各ターミナルへのアクセスが容易となり、3000台の駐車場も新設される予定だ。また、それに伴い、滑走路にも余裕が出ることとなり、出発の遅れを減らすことが期待される。
 第1弾として、昨年12月1日にはセントラルターミナル(ターミナルB)の18搭乗口のうち11がリニューアルオープン。残りの7つある搭乗口も20年までに完成する計画だ。
 今後の主要工事は、デルタ航空が手掛けるターミナルCとDの再開発と統合となる。同社にとっては40億ドルをかけた、未だかつてない大規模プロジェクトといわれており、最先端のターミナルに生まれ変わる。
今次再建にかかる総額は80億ドル。このうち75%が民間資本によるものであり、大きな期待がうかがえる。
 同空港は1939年に開業。国内で最も忙しい空港の21位にランクインし、18年には年間3000万人以上の利用客が訪れ、約400万人が乗換に利用した。現在は4つのターミナル、合計79ゲートを11の航空会社が国内外73都市を結ぶ。また、年間6000トンの荷物、4000トンの郵便も同空港を介して輸送されている。