日米の認知の差を埋める必読書

北丸 雄二・著
人々舎・刊

 ニューヨークで暮らしていても「LGBT(Q+)」のことはよくわからない、いまさら聞くのも面倒だ、と思っている日本人コミュニティの住人は少なくない。けれどニューヨーカーだって30年ほど前までは同じだった。それが毎日毎日ニュースやトークショーや映画や演劇や本やらで自然とどんどん情報が蓄積され、結果、同性婚もOKだし、職場でもゲイやレズビアンをオープンにする同僚は増えた。街なかのカフェやレストランでは同性カップルが堂々と人生を楽しんでいる。この彼我の差はどこで生じてしまったのか?

 93年に新聞社支局長としてNYに赴任した著者は以後フリーランスになって25年間をここで過ごした。LGBTQ+に関する日米の認知の差の広がりをその目で目撃してきた著者は、85年のロック・ハドソンのエイズ死にその端緒を見る。アメリカの恋人とさえ呼ばれたこのハンサムな「異性愛男性」の死は「エイズ」を、そしてそれが纏った「ゲイのこと」を、多くのアメリカ人にとって初めて他人事から「自分に関係すること」にしたのだと説明する。

 その後の米国に起きたことは、私的な悲憤を公的な言語に換えて政治、経済、文化の全ての領域で日々アップデートされる情報の洪水だった。著者はそれを黒人解放運動や女権運動などの先例を引きつつ日本語の特異な言語環境にも触れて縦横無尽になぞりながら、私たち日本人が見落としてきた「もう一つの歴史」を丁寧に描き出してくれる。本書はだから通り一遍な「LGBTとは〜」といった既存書とは違って、人権問題に敏感なアメリカ人たち自身の数十年に及ぶ気づきを遅ればせながら私たちにも自然と追体験させてくれる時間旅行記でもある。

 日本に戻った著者のちょっとした異和感から始まる文章はあくまで平易で優しく、だが時に皮肉も効いて、450ページ近くもありながら最初から最後までぐいぐい読ませる。特派員としての体験や個人的な”ヰタ・セクスアリス”も処処に差し挟まれ、これも内容を他人事から自分事に思わせるのに貢献している。

 ただし、本書の真骨頂は第一部で解かれる「愛と差別」の歴史体験以上に、第二部の「友情」の解き明かしだ。ここでは『真夜中のパーティー』や『ブロークバック・マウンテン』など数々の米国映画やブロードウェイ劇などが日本の名作佳作との比較で解題され、アンドレ・ジッドの問題作『コリドン』まで引用しながら人間という性的存在の「正体」に迫っている。哲学者ミシェル・フーコーの「同性愛とは友情の問題である」というのはどういう意味なのか、そのゾクゾクする思考は最後にカート・ヴォネガットのある名言に辿り着く……読後、この世界が違ったものに映る、不思議な哲学体験でもある。

 日本では大手通販サイトや書店に並び始めて2週間余りで早くも重版が決まったとか。「LGBTQ+」問題に限らず、ニューヨークの「今」にキャッチアップしたい人には最適書だ。 

ライター、悠木みずほ)

食の屋台10月末まで

スモーガスバーグ4か所で

 初夏からスタートしたブルックリン名物の屋外フードマーケット「スモーガスバーグ」が、ウイリアムズバーグ(土曜)とプロスペクトパーク(日曜)にて毎週末開催されている。さらに今年からはマンハッタンのワールドトレードセンター(WTC:金曜)とニュージャージー州ジャージーシティ(土曜)も追加され、計4か所にて各所10月下旬まで行われる。

 パストラミ・サンドイッチの「バーグス・パストラミ」や、ドーナツ型スパゲティの「ポップパスタ」はウイリアムズバーグ会場にて。スパゲティをドーナツの型に入れて固めたようなポップパスタはトマトソースのほか、アーリオオーリオ、カルボナーラ味を販売している。色とりどりの小籠包を提供する「マオズバオ」はウイリアムズバーグ、プロスペクトパーク、WTCにて。会場のベンダーの詳細は公式サイトhttps://www.smorgasburg.com/ を参照。

NYファッション週間の主役

角ファッション動画DEチェック②

 NYファッションウィークの週末、ソーホーの街で明らかにオーラが異なる女性に出会った。マイアミから来た彼女はプロのファッションモデル。最終日である明日、ランウェイを歩くという。本日はオフでソーホーの街を散策していたところを快く街角インタビューに応じてくれた。「普段着なのに、よくモデルだって分かったわね」と、ほほ笑む彼女は服に限らず、寝具や香水、化粧品もバーバリーがお気に入り。一方で、一流ブランドに大金をつぎ込まなくてもファッションノバや、ブーフー(boohoo)、シーイン(SHEIN)のようなファストファッションで十分お洒落な着こなしは可能という。それを証明するように、本日は古着屋で購入したデニムジャケットに、アマゾンファッションのロンパーを着こなし、ターゲットで購入したコンバットブーツを履いている。ニューヨーカーにも人気のドクターマーチンのブーツを履きつぶしたので代わりに購入したという。   

 W2NXTの街角ファッションで若者に人気のあるターゲットは、パンデミック中も業績を伸ばす勝ち組量販店だが人気の理由は後の連載で詳述しよう。今回はプロのモデルお勧めのニューヨークの古着屋を紹介をしたい。一つ目は2nd STREET (2ndstreetusa.com)。マンハッタンに3店舗、ブルックリンにも1店舗展開しているが、実はここ、日本発のユーズドショップだ。もう一つはBeacon’s Closet (beaconscloset.com)で、ここもマンハッタンに1店舗とブルックリンに3店舗ある。プロの眼鏡にかなった古着屋に足を運んでお洒落を楽しもう。

(Wear2Nextチーム/アパレル業界関係者によるファッション研究チーム)

編集後記 9月18日号

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。また日本人がニューヨーク市内の地下鉄で暴漢に襲われました。レイバーデーの6日午後7時ごろ、レキシントンライン4番線に乗っていたニュージャージー州ジャージーシティー在住の自営業、若杉晃太郎さん(24)は、59丁目駅到着前に車内で座っていると、襲われる前にその男性が同じ車両にいること、その男が物乞いをしていることは認識していそうですが、自分の前を通る時には、話しかけず、目も合わせることはなかったとのこと。また、他の人に物乞いをしていたけれど、お金をもらっている様子は見られなかった。隣の車両に行くと思って彼の後ろ姿を見たのが襲われる前に最後に見た光景だったという。隣に座っていた友人によると、男は次の車両に移るドアのところにカバンを置き、いきなり走ってきて、座って携帯電話を見ていた若杉さんの頭部を殴り始めたそうです。詳しくは聞き取れなかったがFワードを叫びながら5回ほど殴り続け、若杉さんが膝で男を押し返した時に、別の男性が間に入って男を止めたが、その間に入ってきた男性は、信じられないことに若杉さんが殴られた瞬間、笑って拍手をしていたという。間に入る際も笑っていたように見え、襲ってきた男性をとがめなかったそうです。若杉さんは59丁目で友人と2人で下車し、警察を呼んで被害届を出しました。犯人は15日現在まだ捕まっていません。友人が機転を利かせて写真を撮影して犯人が写っています。被害を受けた若杉さんは、殴られたことで口内出血、頭部打撲、むち打ちの症状があるという。病院で精密検査を受けるためのドネーションファンド(https://gofund.me/22f0a08c)を現在設けてフェースブックで支援を求めています。人種差別的な罵倒などをしていないので、この事件がヘイトクライムなのかどうかは分かりませんが、しかしヘイトクライムもいきなりすれ違いざまに無言で殴る、蹴るの暴行をするのが常套手段で、過去の例を見てもあまりにもいきなりなので防御しきれないのが実情です。誰かが守ってくれるのを期待は出来なさそうなので、もはや自分の身は自分で守るしかなさそうです。最近は、道路で前から歩いてくる人が、もしいきなり殴ってきても避けられるよう心の中で身構え、警戒しながらすれ違う自分がいます。地下鉄のホームでは、昔ニューヨークに来た頃やっていたように、また鉄の柱や壁を背中にして立っているようにしています。コロナだけでも気が滅入るのに、何だか厄介な世の中になってます。皆さんもどうぞお気をつけて。事件のあらましは今週号の1面と5面で詳報しています。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2021年9月18日号

(1)日本人男性襲われる
(2)史佳再びNY公演
(3)犠牲のFDNYに日本のお弁当
(4)感謝祭パレード 例年通りの規模で
(5)日本のワクチン証明 判断は施設次第
(6)今年のアーモリーショー
(7)ジャパンファン・フェスト笑顔で踊る
(8)ウルトラの原点を作った男
(9)ニューヨークの魔法  ダディの星条旗
(10)おにぎりアクション2021

日本人男性襲われる

地下鉄で物乞いに殴られ全治3週間の怪我

 ニューヨーク市内の地下鉄レキシントンライン4番線に乗っていた日本人男性乗客が6日午後7時ごろ、地下鉄車内で物乞いをしていた男性からいきなり殴られ、頭部打撲とむち打ち症など全治3週間の怪我を負った。被害に遭ったのはニュージャージー州ジャージーシティー在住の自営業、若杉晃太郎さん(24)。若杉さんによると、59丁目駅到着前に座っていると、襲われる前にその男性が同じ車両にいること、その男が物乞いをしていることは認識していたが、自分の前を通る時には、話しかけず、目も合わせることはなかった。また、他の人に物乞いをしていたが、お金をもらっている様子は見られなかった。隣の車両にいくと思って彼の後ろ姿を見たのが襲われる前に最後に見た光景だったという。男は次の車両に移るドアのところにカバンを置き、座って携帯電話を見ている若杉さんのところにいきなり走ってきて頭部を殴り始めた。詳しくは聞き取れなかったがFワードを叫びながら5回ほど殴り続けた。若杉さんが膝で男を押し返した時に、別の男性が間に入って男を止めたが、その間に入ってきた男性は、若杉さんが殴られた瞬間、笑って拍手をしていたという。間に入る際も笑っていたように見え、襲ってきた男性をとがめなかったという。若杉さんは59丁目で下車し、警察を呼んで被害届を出した。犯人は15日現在捕まっていない。 

いきなりボコボコに
日本人男性を襲った地下鉄物乞い男

 また日本人がニューヨーク市内の地下鉄で暴漢に襲われた。レイバーデーの6日午後7時ごろ、休日なので友人と2人でマンハッタンのレストランに向かう途中、レキシントンライン4番線の59丁目駅手前の車内で事件は起こった。口内出血、頭部打撲、むち打ち症などで全治3週間の怪我を負ったニュージャージー州在住の若杉晃太郎さん(24、自営業)は本紙の取材に事件の様子を伝えた。

 「その男性が同じ車両にいること、彼が物乞いをしていることは認識していたがその男が自分の前を通り過ぎる時には声もかけず何も求めることはなかった。目を合わせることもなかったが、ほかの乗客からお金をもらっている様子は見かけなかった。右から左へ通りすぎてドアの連結部分から隣の車両に移っていく後ろ姿を見たのが、襲われる前の最後に男を見た瞬間だった」と話す。

 若杉さんの左隣に座っていた友人によると、男は次の車両に移るドアのところにカバンを置き、座って携帯電話をを見ている若杉さんのところに走ってきて頭部をいきなり殴り始めたという。詳しくは聞き取れなかったというが、男はFワードを叫びながら5回ほど、座っている若杉さんを殴り続けた。若杉さんが膝を上げて足で相手を押し返した時に、別の男性が間に入って男を止めた。しかし、その間に入ってきた男性は、若杉さんが殴られた瞬間、なぜか笑って拍手をしていた。間に入る際も、笑みを浮かべていたようだったという。襲ってきた男性に対して咎めるようなことも一切なかったという。

 「僕は彼に対して失礼になるようなことをした覚えはまったくありません。どう振り返っても彼から殴られる理由がまったく見当たりません。彼は止められた後、僕に何か言ってくる様子はなかったので、基本的に無差別にただ殴る対象として殴っていたんだと思います。あまりに突然の出来事で隣にいた友人も対応するのが難しい状況でした」と若杉さんは説明する。

 若杉さんと友人は、59丁目駅で下車、近くに警察官がいなかったため、911に通報した。20分後に警官が到着し、被害届けを出した。12日に目撃情報があり犯人らしき者が同じ格好でいたという。犯人の年齢は20代、身長は175センチくらい、帽子とピンクのリュックが特徴だ。

被害者の男性がFBで事件を報告
「起きた事実を広く知って欲しい」

 被害を受けた若杉さんは、殴られたことで口内出血、頭部打撲、むち打ちの症状があるという。病院で精密検査を受けるためのドネーションファンド(https://gofund.me/22f0a08c)を現在設けてフェースブックで支援を求めている。

 友人が写真を撮影し、犯人が写っている。今回の事件がアジア系へのヘイトクライムかは、犯人が特段差別的な発言をしていないので定かではないが、昨年来急増するアジア系ヘイトクライムでは、アジア系が白人からではなくアフリカ系米国人(黒人)からほぼ一方的に暴行を受け続けていることが謎となっている。


地下鉄で暴漢から身を守るポイント

(NY長期滞在者の体験と助言などから抜粋)

■地下鉄車内で禁じられている物乞いや挙動不審の行動をしている者がいたら、目を合わせずに他の車両に移って車内からいなくなるまで目を離さないこと。自分だけでなく子供や配偶者に危険が及ばないか注意すること。

■幅の狭いホームで人とすれ違う時には、線路側を歩かないこと。線路に電車がいなくても、後ろから電車がホームに入ってくる場合があり、突き落とされると危険。

■ホームで電車を待つ場合は線路側から離れ、鉄柱や壁を背中にして立つこと。襲われたり、万が一失神などして意識を失って倒れても線路に落ちないよう自分の身長以上の幅・距離をホームの端から保っておくこと。 


史佳再びNY公演

カーネギーホールで10月17日

巨匠ロン・カーターがゲスト出演

 新潟とニューヨークを拠点とする三味線プレイヤー史佳Fumiyoshiが2度目のカーネギーホール公演「ブレークスルー」を10月17日(日)午後2時から開催する。三味線の代表曲「津軽じょんから節」から「オリジナル曲」まで、伝統を守りつつ、和と洋の新感覚のフュージョンを織り交ぜ、音楽を通した魂の共鳴を届ける。

 満席のスタンディングオベーションの喝采を浴びた2019年のカーネギーホール公演から2年。今回もパーカッショニストの和田啓が参加。当日は、スペシャルゲストとして「ジャズ・ベースの神様」と言われるロン・カーターが出演する。カーターは、1963年にマイルス・デイビスの伝説のクインテットに参加、半世紀以上にわたり、2度のグラミー賞受賞など、輝かしいキャリアの持ち主。世界初となる3弦の三味線と4弦のベースによる奇跡の共演「7本の弦の邂逅〜Seven Strings Encounter」が実現する。エグゼクティブプロデユーサーは前回同様、大坪賢次氏が務める。

 タイトルの「ブレークスルー」はコロナ禍で演奏家として存続の危機に直面した史佳Fumiyoshiが困難を打破する、常識を突き破るという意味でつけた。実は、カーターとの共演は2年前のカーネギーで実現するはずだったがスケジュールが合わず、翌年の春の来日共演もコロナ禍で流れた。今回は世界的なパンデミックを乗り越えつつあるニューヨークでいよいよ現実のものとなる。

 「新しい未来を創り出して前に進むためには、ここから再び歩き始めることが必要だった」と語る史佳。「ニューヨークから音楽でいいニュースを届けたい」という願いを込めて再びのカーネギーホールだ。二つの楽器の出会いがどんな音の融合になるのか、その歴史的瞬間が迫ってくる。

 【公演の詳細】日時・10月17日(日)午後2時開演(90分公演、休憩なし)。会場・カーネギーホールワイルリサイタルホール。チケット35ドル。申し込みはsoundwing28@gmail.com まで。カーネギーホールウェブサイト(carnegiehall.org)でも購入可能。主催・WORLD COMPASS。協賛・大坪不動産、NY新潟県人会、菊水酒造、新潟日報社、株式会社トップライズ。

本紙読者プレゼント

2組4名様をご招待

 本紙読者に公演チケットを2組4名にプレゼントします。氏名、連絡先を添え10月4日(月)までにsoundwing28@gmail.com へ応募。当選者のみメールでお知らせします。

犠牲のFDNYに日本のお弁当

米同時多発テロから20年

 ニューヨーク総領事の山野内勘二大使が9日昼、2001年9月11日の米国同時多発テロの際に9人の犠牲者を出したニューヨーク市内東85丁目にある第10消防署を訪れ、公邸料理人が作った弁当25個を感謝と友情の印として届けた。(写真:二人の公邸料理人が作った幕の内弁当を第10消防署のコールマン署長(左)に手渡す山野内大使(9日昼))

 同行したのはMUFGアメリカホールディングスの越和夫常務執行役員、ゲイリー森脇NY日系人会(JAA)名誉会長、スキ・ポーツJAA副会長、ロバート柳澤米国日本人医師会会長、メリアル・ロベル911記念博物館元学芸員、ジョシュア・ウォーカー・ジャパン・ソサエティー理事長、ボン八木ニューヨーク日本食レストラン協会会長、ロナ・ティソン北米伊藤園広報担当副社長、小林利子折り紙療法協会創設者。山野内大使は「私たちは、20年前の消防士たちの犠牲的精神と果敢な勇気を忘れません。同時多発テロで犠牲者を出した第10消防署の皆様にニューヨークの日系社会全体から感謝と友情の気持ちを込め本日、大使公邸料理人の嶋泰宏、堤昭吾両シェフの作った弁当をお届けしました」と感謝の言葉を述べて弁当をリアル・コールマン署長に手渡し、千羽鶴が贈られた。

 同日、東51丁目の第8消防署にも幕の内弁当25個が届けられた。20年前の米国同時多発テロでは2977人が犠牲になり、その内、ニューヨーク管内の消防士433人が殉職している。

感謝祭パレード、例年通りの規模で開催

 デブラシオNY市長と老舗デパートのメーシーズは8日、今年の感謝祭(11月25日)にはメーシーズの感謝祭パレードを例年通りの規模で開催すると発表した。昨年は規模を縮小して開催されたものの、見学者の密集が懸念されたため街角での見学ではなく、多くの人がテレビやインターネットの中継で観た。 

 95回目となる今年はパレードの参加者数を例年の最大20%減らし、ワクチン接種またはPCRテストを義務付けるなど、メーシーズと市の両方が、パフォーマー、ボランティア、観客が安全を保つためのさまざまな政策を実施する。観客のワクチン接種証明は要請されないが、同市当局は一般観覧エリアを監視し感染防止に努めるという。昨年は、パレードの生中継を自宅でリモート観覧してもらうことを呼びかけ、参加者を通常の1万人から960人に縮小し、高校や大学生のマーチングバンドの参加も断念した。今年のパレードは11月25日(木)午前9時から正午までで、NBC局で生放送する。 

 また、昨年は中止となったグリニッジビレッジのハロウィーンパレードの主催者も9日、48回目となる今年のイベントを10月31日に開催することを発表した。パレード参加者はマスク着用が義務付けられ、観客もマスク着用が推奨される。今年のパレードは、コメディアンのランディ・レインボー氏がグランドマーシャルを務める。

日本のワクチン接種証明「有効だが判断は施設次第」

NY市の見解、総領事館が発表

 在ニューヨーク日本国総領事館は、NY市における日本のワクチン接種証明書の有効性について、次のように発表した。

(1)NY市における日本のワクチン接種証明書の有効性

 NY市において今月13日からレストランやスポーツジム、屋内娯楽施設(映画館、美術館等も含む)を利用する際、12歳以上の人はワクチン接種証明の提示が義務化される。この措置に関し、日本政府の発行するワクチン接種証明書の有効性について「NYC Mayor’s office for international affairs」に確認すると、「日本の証明書は有効であり証明書の提示を歓迎する。ただし証明書の受入れについての最終的な判断は事業主(施設側)にあり、NY市はこれを指導する立場にない」との回答があった。施設を利用する際は、必要に応じて施設側にNY市の見解を伝えることを推奨する。

(2)海外渡航用の新型コロナワクチン接種証明書

 日本政府の発行する「海外渡航者用の新型コロナワクチン接種証明書」(「日本に住所があり、各市町村でワクチンの接種を受けた人」が対象。各市町村が発行)について、厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_certificate.html)で詳細を確認する。また「在留邦人が一時帰国し、日本でワクチン接種を受けた場合」の接種証明書(外務省が発行)の申請方法については外務省ウェブサイト(https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/vaccine.html)に掲載されている。

 日本政府が発行する「新型コロナワクチン接種証明書」は、原則日本から海外へ渡航する際に同証明書を所持していることにより相手国による防疫措置等の免除・緩和が受けられる場合に発行されるものだが、現在当地入国において同証明書の提示は求められていない(ただし、入国にはフライトの3日前までに検査した陰性証明が必要)。接種証明書の申請に関する質問は発行元となる各地方自治体、外務省まで。

今年のアーモリーショー、見応えある日本のギャラリー

 アーモリー・ショウが9日から12日まで、ジャビッツ・センターにて開催された。コロナ禍中でも海外からの参加も多く、37か国から157ギャラリーが参加した。日系では、ホワイトストーン・ギャラリー(香港、東京、台北)、ア・ライトハウス・カナタ(東京)、ウルテリア・ギャラリー(ニューヨーク)がそれぞれ見応えある作品群を披露していた。

 ホワイトストーン・ギャラリーは、会長の白石幸生さん(76)を筆頭に、台湾、香港、ソウルからそれぞれスタッフが集結して勢いを示していた。「コロナでも年に1回は自ら海外に出なくては」という。白石さんは昭和42(1967)年の画廊の創業以来、具体美術協会を世界のマーケットに送り価値を高めた第一人者。グッゲンハイム美術館で2013年に開催された「gutai: splendid playgroud (具体:素晴らしい遊び場)」展にも白髪一雄さんや元永定正さんの作品を貸し出すなど貢献した。今回のラインアップは具体美術第2世代の代表作家、前川強さん(1936〜)で、1965年の前衛的な作品から、昨今の麻を使用した大胆で美しい色合いの作品群までを堂々と揃えて貫禄を示していた。また「最近のアジアでは若手の作品がどんどん売れているけれども、またマスターたちの時代がやってくる」と動向を語ってくれた。

 ア・ライトハウス・カナタは、今回が初出展だ。「開催時期が今までの春から秋に移ったことでかねてからの希望が実現しました」とオーナーの青山和平さん(42)は、15人の作品を展示。日本人作家ならではの繊細で完成度の高い作品は、人気を集めていた。特に人目を引いていたのは、佐藤健太郎さん(1990〜)の抽象画 Serenity VII (2020, 71.6×107.4 in.)だ。若干30歳の日本画は、伝統的な「たらしこみ」技法を使いつつも透明感あふれる爽やかな青を基調とした画面で、海外では無名にも関わらず初日に売れ、先述の白石さんの言葉を裏付け今後の展開が期待される。あわせてメトロポリタン美術館内の常設で知られる深見陶治の青緑の磁器もさりげなく存在感を示していたが、深見さんの作品は当地のエリック・トムセン・ギャラリーが定番作家として多く扱っているので、ア・ライトハウス・カナタと2か所で展示して人気のほどが伺えた。

 先頃からシカゴ拠点のカヴィ・グプタの取扱作家となった、在ニューヨークの松山智一さん(1976〜)の曲線キャンバスの華やかな作品 If I Fell from me to you (2021, 63.7×66 in.)も見られた。イスタンブールから出展のディリマートも円形の抽象作品を出していたのも興味深く、ここ数年の彼の絶え間ない努力が形に現れていると感じた。またショーン・ケリーからは森万里子さん(1967〜)の乳白色に虹色が入った美しい彫刻Sprifer III (2017-2018, 513/16×30 5/16x 20 13/16 in.)も光を放って人々を魅了していた。田邊多佳子さん率いるウルテリア・ギャラリーはアーモリーに2回目の参加で、在ニューヨークのアイルランド人アーティスト、ジョージ・ボルスターさん(1972〜)のタペストリーを揃えてパンチのある展示を見せていた。(佐藤恭子、キュレーター)

(写真左)左ホワイトストーン・ギャラリーの白石幸生さんと前川強さんの作品 Untitled, 2016, Acrylic, stitch on burlap mounted on canvas, 70.8×59.4 in.

(写真右)背景、佐藤健太郎さん(1990ー)の抽象画 Serenity VII (2020, Japanese pigments on Japanese paper on 3 individual panels, 71.6×107.4 in.)ア・ライトハウス・カナタの青山和平さんと筆者

ジャパン・ファンフェスト笑顔で踊る

 ジャパニーズ・フォークダンス・インスティチュート・オブ・ニューヨークは12日午後、ローワーイーストサイドにある公園コーリアーズ・フック・パークで地域のボランテイア団体の協力のもと、ファミリー向けの日本紹介イベント「ジャパン・ファンフェスト」を開催した。同イベントは8月22日に開催予定だったがハリケーンの影響で延期となっていた。当日は、日本文化や伝統芸能を伝えるお祭りで、民舞座の日本舞踊、太鼓マサラの太鼓演奏、サムライソードソウルによる殺陣パフォーマンスが披露されたほか、ブースでは折り紙、書道、けん玉、フェイスペインティング、着物の着付けなどを体験した。フィナーレには参加者全員で輪になって盆踊りを踊った。

 主催した民舞座代表の鈴木百さんは「一番嬉しかったのは、NYには色々な人種がいる中で、日本に興味を持ち文化を受け入れてくれるからこうやって参加していただけたということ。そこが本当に嬉しかったことでした」と話していた。同団体は来年活動30周年を迎える。(植山慎太郎、写真も)