ブルックリンで古着屋巡り大好き

角ファッション動画DEチェック③

 よく晴れた秋口の週末、ブルックリンのウィリアムスバーグで古着屋から出てきた女性に街角ファッションインタビュー。

 誕生日を迎える友人と買い物中という彼女のコーディネートはSHEINで購入したスカートに、自分でアレンジしたチェーン状の金属装飾を施し、フォーエバー21のブーツとマイケルコースのバックパック。「学生だからファッションにあまりお金をかけられないの」と言う彼女は、ブルックリンの古着屋巡りが趣味。「まるで宝探しみたいなの。時代を超えて自分好みのアイテムを発掘しているわ」と、NYでお勧めの古着屋4件を紹介してくれたので、デジタル版から動画概要欄にて確認あれ。

 彼女のお気に入りは、ここウィリアムスバーグ。マンハッタンでファッション最前線の地はSOHOだが、そこでショッピングを楽しむお洒落ニューヨーカーも口を揃える人気スポットだ。通っている大学もある隣のベッドスチュイが生活の中心地で、勉学の合間に時間を見つけてはここに足を運んでいるという。「みんなお洒落だから、街ゆく人を見てるだけで楽しい。本当にクールな人が多いから」と目を輝かせる彼女は、友人のバースディパーティー準備のために買い物客で賑わうDriggs Aveから帰路に就いた。古着屋での宝物探しに疲れたら、洗練されたコーヒーショップの窓越しにお洒落ニューヨー

カーの街角ファッションショーを楽しむ。ウィリアムスバーグで、そんな週末を過ごせるニューヨークの秋が始まった。

 (Wear2Nextチーム/アパレル業界関係者によるファッション研究チーム)

侍JAZZは葉隠

東西文化の融合NYで披露

 ビッグバンドのスイングジャズと日本の武士道の葉隠や千利休の守破離の心を表現する殺陣を同時に披露するというユニークな試みの音楽と演技を組み合わせたパフォーマンスが16日午後、マンハッタン・チェルシー地区の教会で開催された。宮城道雄の「春の海」をニューヨーク在住の音楽家、宮嶋みぎわがアレンジ、オリジナル曲の「カラフル」、今回のために書き下ろした「切り拓く者」「侍ジャズブルース」など5曲を自身がバンドリーダーを務めるビッグバンド侍ジャズオーケストラが演奏した。

 殺陣指導者の香純恭率いる波涛流NYの弟子たちが緊迫感ある殺陣を演じた。

 制作企画は、執筆家の後藤緑が担当。当日は80人近い観客が東西文化の融合を楽しんだ。開催はNY市芸術助成金ほかハンター大、五絆ソサエティー、マウント富士レストラン、NY日本総領事館が協力した。

【今週の紙面の主なニュース】(2021年10月16日号)

(1)衆院在外選挙へ
(2)宮本亞門B’Way再び 「カラテ・キッド」で
(3)暮らしのテーブル NY流ハロウィン
(4)櫻井さんに旭日中綬章 山野内大使から勲章伝達
(5)ノーベル物理学賞受賞 真鍋さん本紙で語る
(6)日曜ギャラリー 心象風景照らす髙波壮太郎
(7)逆境乗り切る知恵満載 書評『おかみの凄知恵』
(8)スープをすするドラキュラ 岡田光世 ニューヨークの魔法
(9)第29回国際平和美術展 in New York
(10)JAPAN fes 秋祭り    23日チェルシーで

衆院在外選挙へ

NY総領事館での投票20日から

 今月14日の衆議院解散により19日に公示される第49回衆議院選挙が日本で31日に実施される。これに伴う在外投票が、公示日翌日の10月20日(水)から24日(日)まで実施される見通しとなった。在ニューヨーク日本総領事館(パーク街299番地)での公館投票は同期間中の午前9時30分から午後5時まで、平日、週末共に実施される予定(本紙10月9日号既報)。在外投票は日本の不在者投票に準じて制定されたため、投票用紙を日本国内の選挙管理委員会に投票日まで届ける必要上前倒しで実施される。

 公館投票時に持参するものは「在外選挙人証」と「有効な日本のパスポート」または米国の自動車運転免許証や外国人登録証など。在外選挙人証所持者の投票方法は、在外公館投票、郵便投票、日本国内における投票のうちいずれかの方法。在外公館投票は、日本大使館、総領事館および領事事務所で可能。郵便投票は、まず、登録されている選挙管理委会に、請求書および選挙人証を郵送する。

在外選挙の郵便投票と
日本国内での投票

 郵便投票は、まず、登録されている選挙管理委会に、請求書および選挙人証を郵送する。請求用紙は在外選挙人証発行時に配布された「在外投票の手引き」からコピーするか、外務省のホームページからダウンロードする。郵便投票手続きは、選挙管理委員会から送られてきた投票用紙に記入し、国内投票日の10月31日(日)の投票所閉鎖時刻(原則午後8時)までに、選挙管理委員会に届くように郵送すること。

 日本国内における投票は、一時帰国した場合や帰国後、国内の選挙人名簿に登録されるまでの間(転入届け提出後3か月間)は、在外選挙人証を提示して投票が可能だ。具体的には、公示日の翌日から国内投票日の前日までは、(1)期日前投票=登録先の市区町村選挙管理委員会が指定した期日前投票所における投票が可能。不在者投票=在外選挙人名簿登録地以外の市区町村における投票が可能。また。国内投票日当日は、投票所における投票=登録先の選挙管理委員会が指定した投票所における投票が可能。(日本国内における投票の詳細は、自分の登録先の市区町村選挙管理委員会に問い合わせること)。立候補者情報は選挙ドットコム(https://go2senkyo.com/shugiin/19607)などで入手が可能だ。

可愛いは卒業! 本気で怖さを演出

◆ニューヨーク流ハロウィンの楽しみ方◆

大石育子の暮らしのテーブル

◆ニューヨークと日本のハロウィンは何が違う?

 ハロウィンが「文化」として根付いているニューヨークと、「イベント」として盛り上がりを見せる日本。どちらも仮装を楽しむという意味では同じですが、少し違っています。

 ハロウィンの時期は不気味なハロウィングッズが街角のファーマシーでも並ぶニューヨークですが、日本では東急ハンズやドン・キホーテ、100均など売り場が限られています。

 仮装も日本ではおばけやジャックオーランタンなど「可愛い」ものが多いですが、ニューヨークでは骸骨や血のりなど「怖い」ものが多いですね。リアルに再現された内臓グッズが売っていたり食欲が失せるものも多いのも特徴です。また、ニューヨークでは「老若男女」誰でも本気モードで楽しみますが、日本では「若者や子供たち」が楽しむもの。

 改めて比較してみるとおもしろいものです。

◆ニューヨークらしくちょっと怖いハロウィンにチャレンジ

Point1 骸骨・カラスを使うとちょっと怖いテーブルができます!

大きな骸骨を椅子に座らせてみました。こんな光景をニューヨークの街角ではよく見ますね。

ワイヤーバスケットにグリーンを入れて一見ナチュラルなアレンジメントですが、実は下に骸骨がいっぱい埋まっています。上にはカラスも添えて。

Point2 せっかくなのでフードも遊んでみましょう。ピックなどもお墓や骸骨のものが売っているのでそういうものを使うといいですよ。

目玉のチョコレートなんかもテーブルに飾ると怖い感じになっていいですね。

Point3 ウェルカムドリンクもバタフライピーのお茶を使って。レモンを入れると青↓紫↓ピンク色に変わります。

 赤ワインで作ったサングリアなども血を連想するイメージです。ノンアルコールならばザクロやクランベリーのジュースを使うといいですね。スープの足元には小さな骸骨も置いてみました。

Point4 全体のテーブルコーディネートの色遣いを無彩色(モノトーン)に。日本のオレンジと紫、黒といったハロウィンの定番カラーにはしないこと。

 クラスでは毎年ちょっとおどろおどろしい怖いテーブルで生徒さまをお迎えしています。

 日本から来たばかりの方は、びっくりされることが多いのですが、段々見慣れてくるようで徐々におうちでも怖いハロウィンの飾りを楽しんでくださっているようです。皆様もぜひ今年のハロウィンはニューヨーク流で楽しんでみてくださいね。

(写真)©Atelier  de Ikuko New York


大石育子(Ikuko Oishi)

インテリアコーディネーター、食空間プランナー、日本クラブカルチャー講座講師。東京ドームテーブルウェアフェスティバル2019,2020入選&奨励賞受賞。

https://lit.link/atelierdeikukonewyork


宮本亞門2023年ブロードウエー再び

The Karate Kid a new musical
来春セントルイス公演

 宮本亞門が演出する新作ミュージカル「カラテ・キッド」が、2023年春のブロードウエー公演に向けたトライアウトとして、来年春にミズーリ州セントルイスで公開される。

 同作は1984年コロンビア・ピクチャーズ製作の米国映画『ザ・カラテ・キッド』を執筆したロバート・マーク・ケーメンが脚本を担当した。2004年に「太平洋序曲」で東洋人初のブロードウエー・演出家デビューを果たした宮本は米国上演4作目となる今回の作品についてこう語る。

 「映画原作のミュージカルだが、ブロードウエーは映画と同じなら来るなという姿勢で、劇場でやる意味を強く問われる。自分は人生で何を大切な軸として生きていくのかと言う内面性、精神性を描いたこの作品は、今回プレゼンテーションをして今までのブロードウエーにあるようでなかった作品だと大きな評価を得られた。手応えがありすぎて逆に怖いくらいだ。コロナ禍がありブラック・ライブズ・マター(BLM)があり、アジアンヘイト・クライムがあり、余計なものを省きながら共存して生きていくというアジアの精神、日本人の心が描かれた作品を、人々がまるで待ち望んでいたかのようだ。ベストタイミングだがこれで安心することなく、23年からのオン・ブロードウエー公演を目指してロングランできる作品に作りあげていこうと思う」と話す。

 実は同公演の発案者は宮本の右腕として活躍するアソシエート・プロデューサーの松堂今日太氏。空手もする沖縄出身の松堂氏が10年前から構想を宮本に伝え、4年がかりで実現した大作だ。株式会社木下グループ(本社・東京都、代表取締役社長兼グループCEO・木下直哉)とゴージャス・エンターテイメント(本社・ニューヨーク、社長・吉井久美子)が共同製作する。

櫻井さんに旭日中綬章

山野内大使が勲章伝達

 日米相互理解促進及び日米文化交流に貢献したとして民間人では最高位の旭日中綬章を受章した櫻井本篤元ジャパン・ソサエティー理事長、元在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使(77)に対する叙勲伝達式が6日、ニューヨーク総領事の山野内勘二大使公邸で開催された。

 櫻井さんは、米国三菱商事社長在任中にニューヨーク日本商工会議所会頭を務めた。2006年には民間出身初の在ニューヨーク日本国総領事・大使に就任し、38年に及ぶ商社勤務で培った国際経験と豊富な人脈を生かし、大使として日米交流活動に大きく貢献した。2009年にはジャパン・ソサエティーに初の日本人理事長として就任、在任中の10年間で、リーマン・ショック後で基金が大幅に減少していた同団体の財務状況を黒字化させることに成功、特に東日本大震災直後に立ち上げた「東日本大震災支援金」は、米国の民間非営利団体のなかで最も多い1400万ドル以上の募金を集め、現在までに東北で復興活動を行う45団体69の事業に助成されている。

 櫻井さんは「大変名誉なことで喜んでいます。民間企業、総領事館、ジャパンソサエティーとそれぞれ対面する人が違うという異なったフェーズで、どうやったらお客さんに喜んでもらえるのかを考えるのはとても新鮮な体験でした。前にやった仕事が次の仕事に役立つという密接な関係を持っていたことも自分がパブリックサーバーとしての仕事を続ける上でよかったです」と叙勲の喜びを語った。

 現在は東日本大震災で孤児となった子供達を支援する団体やニューヨークの日本食レストラン協会などのアドバイザーを務めるほか、今後はアメリカ社会とアジア系との橋渡し役となる新たな分野にも力を注いでいくという。

(写真)左から信子夫人、櫻井さん、山野内大使

真鍋さん本紙で語る

ノーベル物理学賞受賞の気象学者

3年前に本社来社「水のリサイクルが人類の課題」

 今年のノーベル物理学賞賞を受賞したプリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎さん(90)は、温暖化を計算機で予測した最初の気象学者だ。今から3年前の2018年5月、地球科学分野でのノーベル賞といわれるクラフォード賞を受賞し、同月スウェーデンのロイヤルアカデミーで行われた授与式に出席する直前、同氏は、ニューヨーク生活プレス社の週刊NY生活編集部を訪れ、研究について持論を熱く語った。当時の記事(本紙2018年5月12日付)から研究に関する発言を抜粋し、今回のノーベル賞につながった同氏の考えを改めて紹介する。

 真鍋さんは、1931年愛媛県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。米海洋大気局地球流体力学研究所上席気象研究員、プリンストン大学客員教授などを歴任した気象学者で、計算機を使った地球温暖化の予測を世界で最初にした人だ。来米したのは1958年。東大博士課程修了と同時に米国気象局で地球の気候をコンピューターを使って再現する「気象モデル」の開発チームに加わり、67年大気と気温の関係を一刀両断に解き明かした論文を発表した。大気を地上から上空まで「1本の柱」と考え、空気の対流や熱の放射などの条件を加味して、複雑な大気の状態を必要最小限の重要な要素で単純化したモデルで明らかにした。

 「あれが一番よくできた論文。ホームランでしょうな」

 気候の研究で行き着くところは、最後は水の問題。「水の奪い合いが国際紛争の元凶」だと言う。干ばつ地からの脱出と民族移動、熱帯地での大洪水。「最後は水のリサイクルにぶち当たる」と熱く語った。

 ノーベル賞を受賞した気象学者は今、「気候」の観点から地球規模の文明の衝突に思いを馳せていた。(三浦良一記者、写真も)

心象風景を照らす髙波壮太郎NY展

日曜ギャラリー NEW YORK SEIKATSU PRESS

 日本での40年以上にわたる個展やフランスで3度の個展を経て、さまざまな人々との出会いと交流を通し、その場の風に吹かれ、そこで感じたことを作品にしてきた髙波。ゴッホを彷彿させるその厚塗りの画風は、その時々の作家の心象風景でもある。(写真上:Field flowers ‡ 33x46cm (2017))

all in Love 46~27cm(2018)

 一つひとつが独立した輝きを発光させ、色彩と力強いタッチで語りかけてくる。見る者にとって、予期せぬ絵との出会いは、生きていくエネルギーとの偶然なる遭遇と言える。それは画家、髙波本人にとっても送り手として生きていくための証のようなものだろう。髙波は1973年多摩美術大学油彩科卒業。フランスのほか米国ではこれまでロサンゼルスで個展を開いているが、今回初のニューヨーク展をARTIFACT(オーチャド通り84番地)で開催している。モナコ、マイアミにも出展。同展は今月31日(日)まで。(三浦)


ARTIFACT

84 Orchard ST

New York, NBY 10002

www.artifactnyc.net

逆境乗り切る知恵満載

冨永照子・著
TAC出版・刊

 ニッポンおかみさん会会長で、協同組合浅草おかみさん会理事長の冨永照子さん(84)が書き下ろした、生きづらいこの世の中を駆けるヒントが詰まった本書『おかみの凄知恵』。浅草仲見世老舗「十和田」四代目の冨永さんは、1960年代から浅草復興のために尽力し、名物となった二階建てロンドンバスの導入、浅草サンバカーニバル、浅草ニューオリンズ・ジャズフェスティバルをコロナ禍前まで毎年開催、浅草のライトアップや、つくばエクスプレスの誘致なども実現させた浅草の活性化と街起こしに大貢献した人物だ。

 ニューヨークにも毎年やってきて、今はなきミッドタウンのサクラ商事で日本へのお土産に中国人顔負けの爆買いをして帰国するのが常だった。とにかく思いたったらすぐ行動の人。持ち前の前向きな姿勢で疾風怒濤の人生を無我夢中で走りきってきたおかみの、もはやこれは「アドバイス」なんていう生ぬるい言葉では到底表現しきれない「凄知恵」が凝縮されている。

 ではここで、この本を読まない人のためにおかみさんの凄知恵金言集の一部を抜粋して紹介する。

 「小さいお金は使う。大きなお金はもらう。人間にも損益分岐点がある。いい子いい子は、どうでもいい子。「勇気」「やる気」「元気」に少しのリスク、馬鹿の一つ覚えは、馬鹿にできない。酒も呑みます、生きるため。嘘もつきます、生きるため。自分の方に能力があると思ったら戦え。ないと思ったらしょうがないから従え。正論吐いて、嫌われて上等。人生、月謝を払ってんのよ。失敗も月謝、何事も月謝。走り出せ、やっちゃえ。やっちゃえば、後はどうにかなる」などなど。

 「この本は女性のためだけでなく、男性にもぜひ読んでもらいたい」と冨永さん。「だって、この本には、男の人が社会で出世していくためのコツが満載だもん」と豪語する。この本は、最初から読んでも、途中から読んでも、飛ばし読みしても一向に構わない。一話完結の時代劇ドラマみたいに作ってあるからだ。

 ニューヨークには、いろんな日本人がいる。会社勤めで何年かしたら日本に帰る駐在員、「現地除隊」して自分で会社を作って起業する人、自分の夢を実現するためにやってきて、その日に向かってただひたすらに努力しながら日々の生活に追われる若者、日本で一流企業でバリバリ働いていた女性が、本当にやりたかった音楽の道に進みたい、とか、日本で手に職をつけた美容師やシェフがこのアメリカで日本以上に活躍の場を見つけたりとか。いい時も悪い時も、天誅殺の大嵐に揉まれながらも、どっこいみんな生きているのがニューヨークだ。

 「歳をとっても錦の御旗を立てたら下ろすな。旗作ったら進め」と言う。「常に新しい旗印を作らなきゃいけない、人生は」「一回旗印を作ったら、ずっとやれるよ、人間は。突っ走れ、死ぬまで走れ。老いたら老いたなりの走り方でいい」。

 「おかみさん、ありがとう、なんだかまだ少し頑張れるような気がしてきたよ」と日本だけでなく、NYの読者からもそんな声が聞こえてきそうだ。(三浦)

スープをすするドラキュラ

ニューヨークの魔法
岡田光世

 頭から足の先まで、体中を包帯でぐるぐる巻きにされた女の子が、両親に手を引かれて歩いてくる。アッパー・ウエストサイドの閑静な住宅地だ。

 That’s spooky!

 人々は思わず、振り返る。

 ひと足先に、今年もハロウィーンがやってきた。

 気味悪い! と思わず叫びたくなるお化けが、街をさまよっている。

 ゲイルはハロウィーン直前の金曜日に、服はもちろん、マニキュアまで、パンプキン・カラーのオレンジに統一し、仕事に出かけていった。

 ハロウィーン当日は、ダウンタウンで名物の仮装行列が行われ、マンハッタン全体がお化け屋敷と化す。

 仮装行列をしっかり見たことがなかったので、今年こそは雰囲気を味わおうと、パープルずくめで出か

けていった。それでも、パープルのカツラをかぶって街を歩き、地下鉄に乗る勇気はなく、目的地に着いたらかぶろうと、バッグに入れた。

 人出は予想以上だった。ほとんど動けない状態で、何も見えず、群衆の叫び声から興奮が伝わってくるだけだ。

 楽しいのは、仮装行列より、そのあとだ。彼らはそのままの姿で日常に戻る。顔を真っ白に塗ったピエロが地下鉄に乗り、大きなパンプキンのお化けがスーパーマーケットでトイレットペーパーを買っている。

 レストランでは、ドラキュラ(人間)が黒ずくめの魔女(人形)をひざに抱いて、スープをすすっている。街角で、血のしたたる斧を手にした死神が、ホットドッグにかぶりついている。

 だいたい、仮装行列では、仮装とわかり切っているのだから、意外性がないではないか。両親に手を引かれた、あのミイラの女の子のように、ごく日常の世界にふっと現れるからspookyなのだ。

 そう自分に納得させながらも、出番のなかったカツラがなんだか哀れだ。仮装行列ならまだしも、パープルのカツラをかぶってひとり日常に戻る勇気はない。せめてもと、バッグから取り出したカツラを手に、とぼとぼ家路についた。

このエッセイは、文春文庫「ニューヨークの魔法」シリーズ第1弾『ニューヨークのとけない魔法』に収録されています。

https://books.bunshun.jp/list/search-g?q=岡田光世

芸術による心の復興を祈念する

第29回国際平和美術展・イン・ニューヨーク

10月19日から22日カーネギーホールで

 日本の美術を紹介する第29回「国際平和美術展・イン・ニューヨーク」が、10月19日(火)から22日(金)まで、カーネギーホール(7番街881番地9階、57丁目)で開催される。同展は「芸術からの平和希求」をテーマに1993年に創設、日本国政府をはじめ自治体や公的機関などの協力により、国内外の展覧会を通じて多くの人々と平和への思いを交歓してきた。

 アメリカ同時多発テロ事件20年目を迎えた今年、9・11の鎮魂と恒久平和を、また世界中に蔓延する新型コロナウイルスが起こした悲劇を悼み、芸術による心の復興を祈念して、東京芸術劇場とカーネギーホールの2つの会場で巡回開催する。日本画、洋画、クラフト、彫塑・陶工芸、写真、書道、建築など285人のアーティストの作品を展示する。

 入場者特典として、毎日先着100人に日本の伝統的デザインのマスク(子供用はアニメ柄マスク)、または黒澤監督映画「乱」の文字入り手ぬぐいがプレゼントされる。さらに、20日(水)と21日(木)の午後2時から5時までは、9階レズニック・エデュケーション・ウイングにて緑茶テイスティングが無料で行われる。提供されるオーガニック緑茶は静岡や愛知、京都、鹿児島の4つの産地のもの。

 入場無料(要予約)、ワクチンカードとID要持参。予約は2ページの広告にあるQRコードから。詳細はウェブサイトhttps://www.qualiart.co.jpを参照する。