編集後記 10月23日号

編集後記

 みなさん、こんにちは。第49会衆議院選挙が今月31日の日本国内投票に先駆け、20日から在外公館で始まりました。私も初日の昨日午前、本紙の取材と同時にニューヨーク日本総領事館に行って投票を済ませてきました。本紙今週号では4~5面で「海外有権者の声、日本の国政に届くか」と題する在外選挙緊急座談会を開催しました。参加していただいたのは海外有権者ネットワークNY共同代表の竹田勝男さん、同じく共同代表の竹永浩之さん、ジャーナリストで元OCSニュース編集長の武末幸繁さん、同じくジャーナリストの元共同通信ニューヨーク特派員の津山恵子さんの4人。ニューヨーク日系人会(JAA)の会場をお借りして意見を聞きました。今回の選挙は日本の大きな転換を考えるための選挙。安倍政権の継承に対する審判になる(武末)。先進国の中で唯一25年間の不景気に甘んじている日本を変えていくための選挙(津山)、あまりにも短期の準備期間で前回の投票率54%を下回るのではないかという今回の選挙、少しでも投票率を上げるために声をかけた(竹田)、在外選挙に関わって30年の竹永さん「有権者に対して言いたいことがある。日本人は自分で社会を下えられると思っていないのが問題だ」と。在外選挙は、選挙認証を取得したり投票するのに手間がかかるのは事実だが、いまだに在外選挙投票率が1%台しかないのは、権利放棄に等しい。在外選挙制度という入れ物、達磨を作っても目玉が入っていない、仏を作っても魂が入っていない。日本では各政党がばらまき財政と批判されるほど、国民に聞こえの良い給付金支援などを公約に掲げている。「国民の皆さん全員に~。国民一人一人に給付金を支給します」という公約の中に「海外の邦人のこと頭に入れてますか」と各政党の皆さんにお聞きしたい。公約を真に受けて在外選挙で投票したあと「あれは海外の人は例外ね」と除外されたのが前回の選挙だった。海外に有権者がいても、投票率が1%では、政治家は見向きもしない。制度の不便さを言い訳にして在外選挙に投票しないのでは、海外の日本人は、いつまでたっても政策の蚊帳の外になってしまう。今日、平成12年からスタンプを押してある在外選挙人証の記入欄の空白がとうとうなくなり、更新手続きをしてきて、一体いつまで同じことを続けるのかと自問した。それでも投票は続ける。NYでの在外公館投票は今月24日(日)午後5時まで。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2021年10月23日号)

(1)マンハッタンに超高層新名所 ワン・バンダービルド

(2)在外投票スタート NY日本総領事館で

(3)合言葉は「NYで、企業しよう」 NY一旗会が200回

(4)海外有権者の声、国政に届くか 在外選挙緊急座談会 

(5)眞子さまは、Jー1ビザを取得して美術館勤務か 

(6)史佳、魂の競演 ロン・カーターとカーネギー公演

(7)茄子の揚げ浸し 鮭の紙包み焼き味噌仕立て 生き生き EATS 

(8)日本企業版DXは武士道精神で

(9)ブルックリンで古着屋巡り大好き 

(10)侍JAZZは葉隠れ 東西文化の融合NYで


マンハッタンに超高層の新名所

展望台「サミット」ワン・バンダービルド、21日にオープン

 グランドセントラル駅に直結する新高層ビル、ワン・バンダービルド(東42丁目45番地)の展望台「サミット・ワン・バンダービルド」が、21日にオープンした。(写真上:床の大部分がガラス貼りのシースルーになっていて高所恐怖症の人だと足がすくんでしまう91階展望台(18日、写真・三浦良一)) 

草間彌生の大きな水滴のような作品も

 「ありふれた日常からの脱却」をコンセプトに、高さ1100フィート(335メートル)の高さに設置された屋外テラスやインドアラウンジからは軽食やドリンクとともにニューヨークの圧倒的な景色と非日常の体験が楽しめる。

 91階から93階までの3フロアにわたる展望施設には、床も天井も全てがガラスと鏡張りの空間のほか、同じく全てがガラス張りのエレベーター「アセント」、マジソン街上空に吊るされた透明ガラスボックスの中で空中浮遊体験ができる「レビテーション」、銀色の風船が浮かぶアートのインスタレーション「エアー」や草間彌生の大きな水滴のようなアート展示など、これまで味わったことのない新感覚を体験出来る。

 ガラスと鏡張りの空間では、昼間は空や雲、周辺のビルや太陽が部屋中に眩しく反射し、夜間は息をのむようなまばゆい夜景が別世界へと誘う。空間の新たな楽しみ方を提案するサミットは、ニューヨークを象徴する新たなランドマークとなるだろう。

 展望台の営業は木〜日曜までの週4日。時間は木曜が午後3時〜10時30分、金・土曜が午前9時〜深夜12時、日曜が午前10時〜午後7時。昼間に訪れる際にはかなり眩しいためサングラスを持参し、床も鏡張りのためパンツスタイルでの入場を推奨している。

 入場料は39ドル〜73ドル(5歳以下は無料、NY市民割引もある)。チケットと詳細は公式サイトhttps://summitov.comを参照する。

イーストサイドの絶景を至近距離から見ることができる

衆院選在外投票スタート

NY日本総領事館で

 今月14日の衆議院解散により19日に公示された第49回衆議院選挙が日本で31日に実施されるのに伴い在外投票が、公示日翌日の10月20日から24日(日)まで実施されている。在ニューヨーク日本総領事館(パーク街299番地)での公館投票は同期間中の午前9時30分から午後5時まで、平日、週末共に実施される。投票のために総領事館に行く場合は来館予約の必要はない。投票記載場所では、手指消毒液の設置や机・鉛筆のこまめな消毒など、新型コロナウイルス感染防止対策をとっているという。(写真:在外選挙の投票をする在米有権者(20日午前10時、NY日本総領事館で、本紙撮影))

 投票所ではマスクの着用を求めている。投票記載場所の過密化防止の観点から、身体の不自由な人、高齢者及び子供を同伴する場合などを除き、できるだけ投票者のみで投票所に行くよう協力を求めている。

 在外投票は日本の不在者投票に準じて制定されたため、投票用紙を日本国内の選挙管理委員会に投票日まで届ける必要上前倒しで実施される。

 公館投票時に持参するものは「在外選挙人証」と「有効な日本のパスポート」または米国の自動車運転免許証や外国人登録証など。在外選挙人証所持者の投票方法は、在外公館投票、郵便投票、日本国内における投票のうちいずれかの方法。在外公館投票は、日本大使館、総領事館および領事事務所で可能。郵便投票は、まず、登録されている選挙管理委会に、請求書および選挙人証を郵送する。

 【郵便投票と国内投票】

 請求用紙は在外選挙人証発行時に配布された「在外投票の手引き」からコピーするか、外務省のホームページからダウンロードする。郵便投票手続きは、選挙管理委員会から送られてきた投票用紙に記入し、国内投票日の10月31日(日)の投票所閉鎖時刻(原則午後8時)までに、選挙管理委員会に届くように郵送すること。

 日本国内における投票は、一時帰国した場合や帰国後、国内の選挙人名簿に登録されるまでの間(転入届け提出後3か月間)は、在外選挙人証を提示して投票が可能だ。具体的には、公示日の翌日から国内投票日の前日までは、(1)期日前投票=登録先の市区町村選挙管理委員会が指定した期日前投票所における投票が可能。不在者投票=在外選挙人名簿登録地以外の市区町村における投票が可能。また。国内投票日当日は、登録先の選挙管理委員会が指定した投票所における投票が可能。

詳細はNY日本総領事館のホームページを見るか、同館領事部まで。

https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/h/elections/2021-49shugiin.html

立候補者情報は選挙ドットコム(https://go2senkyo.com/shugiin/19607)などで入手が可能。

海外有権者の声

在外選挙に悲鳴続出の投稿

 海外有権者ネットワークNYのツイートには、在外選挙への改善を求める声が殺到している。

■「今回の在外投票ですが、世界中でトラブルが発生しています。・選管が郵便投票用紙の発送開始日を勘違い・郵便投票用紙請求書が日本に着くのに20日間かかった・郵便事情が悪く郵便投票自体が間に合わない。■めっちゃショック。昨日、仕事の休みに合わせて投票のためだけに飛行機のチケットとったのに投票日外だった。400ドルと2票が無駄になる。在外投票って投票者の負担が多すぎる。いい加減なんとかしてください。

■解散が噂された半年前から手間かけ費用かけ時間かけ用意周到で準備していた私は、今回投票できるごく少ない1人かもしれない

■在外邦人140万人。有権者の多くは今回の投票を諦める。在外邦人が選挙に興味無いんじゃない。旧いシステムを変えない政治の責任だ。

■私は領事館の州外に住んでいるので直接投票に行くにも公示日の翌日とかは平日でとても行けないしネット投票してくれたら本当に便利なんですよね。

■港区選挙管理委員会は公示日後に投票用紙を発送すると勘違いしており、未だに投票用紙と在外選挙人証が返ってきていない人も。郵便投票を諦め、在外公館投票へ切り替えたとしても投票に間に合わない。郵便投票が投開票日後到着であっても有効にすべき。

■【在外選挙の郵便投票用紙請求のため在外選挙人証も送っているので返送が遅れたとき在外公館投票もできない】

■今回の衆院選はコロナ禍において在外邦人の票が無効になるケースが多発します。在外邦人の投票、特に郵便投票が無効にされるような解散、公示日、投開票日の設定は違憲ではないですか? 

■在外選挙の郵便投票って、日本に届けば有効票になるわけじゃないんです。選管事務所から投票所に運ばれ、投票箱に入れられて初めて有効票になるんです。自分の預かり知らぬ理由で無効票にされてしまう罠がいっぱいあるんです。

■私も手続きなど準備は、整えてあると聞いています。他方、解散から公示までの期間がたった5日なので候補者予定者や政党の広報などもギリギリで、特に在外邦人の方々の投票行動に差し障りはしないかと心配しています。(原口一博元総務大臣 衆議院議員 当選8回 立憲民主党副代表、国会対策委員長代行 佐賀県連代表 佐賀1区選出。 松下政経塾4期生)

■今回衆院選は任期満了が近かったので、在外投票の準備は各自治体で先月からできてました。任期1か月前くらいから手続きを始め、すでに投票用紙入手できている地域もあります。公示を待ってから記入し、日本政府の出先機関に持参するか、または直前の住民登録自治体選管に郵送することになります

■在外投票、私が住むところから領事館までは車だと片道10時間かかり、ガソリン代もバカにならない。往復20時間の運転になると宿泊しないと辛い。また、飛行機で日帰りしても往復で300ドル程度かそれ以上かかる。これでは郵便しかないが、それも速達を使わねばならず高い。相当投票ハードル高いです。

(関連記事)海外有権者の声、国政に届くか

海外有権者の声、国政に届くか

在外選挙座談会

デジタル庁でネット化加速?


出席者

● 竹田 勝男 氏

(海外有権者ネットワークNY共同代表)

● 竹永 浩之 氏  

※(オンライン参加)

(海外有権者ネットワークNY共同代表)

● 武末 幸繁 氏

(ジャーナリスト、元OCSニュース編集長)

● 津山 恵子 氏

(ジャーナリスト、元共同通信NY特派員)

司会・三浦良一(本紙発行人)


本紙 日本でも短期決戦、在外選挙はさらに時間がない今回の衆議院選挙、どんな意味が?

津山 近年にない非常に重要な選挙。どの政党かどうかの政治的信条は別として非常に真剣に日本の将来のことを考えて、投票に行って選ばなけれならない。その理由として:・コロナ対策が後手後手、オリンピック最中に自宅で亡くなった方がたくさん居る・一年間で子供の自殺が過去最高・先進国のなかで唯一25年間不景気・ジェンダーギャップ指数156か国中120位(世界190数か国しかない中での日本の酷さ=世界の半分よりも下にあると言ってもよい)このような課題がある中で、この先変えない? 変えていくのか? ならば議員の政策などチェックして投票する。

竹永 今まで経験したことない在外選挙2つの理由:1、任期満了に伴う選挙はこれまでない。2、解散から投票までがこんなに短い選挙は在外選挙ではない。郵便投票の混乱が起きている。情報収集する時間もない、なかなか届かない。在外公館投票の日数も短い、これまでそんなことなく、1日だけというのもあり、2日間もあり(ノルウェー、フィンランド、スペインは大使館のみ)。届いても選管側が発送日を勘違いしている。解散日を待っていたが、10月19公示日を基準とするため、郵便投票が間に合わない人が相当出てくる。9月に郵便投票を世界中で告知したが、選管でホールド。今頃送りだしているが間に合わないことで問題が起きている、これに対しては時間がなさ過ぎて解決策もない。EUが荷物を送るのに2WKS(エクスプレスでも)。だから郵便投票は間に合わない、不可能になる人が出てくる、既に出ている。アメリカはまだセーフだが、EUは危ないところ。

ニューヨークの在外選挙投票会場 (20日午前10時過ぎ、NY日本総領事館で本紙撮影)

竹田  皆さん仰る通り、準備期間があまりにも短い。政権担当の戦略かな?と思うくらい。前回54%投票率、今回はそれを下回る予想というニュースを見て、少しでも投票率をあげるためにも今回の座談会を提案した。

武末 日本の大きな転換、考えるための選挙だ。安倍政権の継承に対する審判になるのでは。野党側から見ればチャンス。現在の在外選挙投票に無理がある。早くなんとかすべきだ。

本紙 デジタル庁ができたことで、インターネット投票に弾みがつくか。

津山 在外選挙の壁は手続きが煩雑で、公館が遠すぎるとか。海外に住む有権者にとってもせっかくなので、考えてもらいたい。

竹永 在外選挙ネット投票について2017年に決めた(2015年には資料記載)。去年実証済なのになぜ?もっと早くできたはず。部分的にも導入できたのでは。総務省は在外投票から始めると言っていたが中々進まない。

竹田 前回までインターネット投票を押していたのは民主党の藤田さん。現状は分からないが、強力に押す政治家がいなくなると結局は立ち消えになるのでは。最後の一手は政治力になるのでは。

武末 立憲民主党はかなりやる気あるのでは?

竹田 最近はデジタル層である若年層が海外に住んでるケースが多い、デジタル投票にすれば、投票率が上がるのでは。

竹永 立憲民主党案は2025年国政選挙で取り入れ予定。おそらくその法案を待たなくても在外選挙に関しては前に進められるのではと読んでいる。次の議院選、2022年には何らかの形で取り入れてほしい。

本紙 その声は政治家に届いてる?

竹永 どの政治家による。

本紙 海外にいると政治家の活動がよく見えない、手だては?

竹永 総務省で研究会を作った人、自民党の小林さん(広島、若い方)の指示で、在外オンライン投票導入決まったはず(TWでやり取りした)だが、自民党全体の考えが見えない、強く反対している人がいるのかどうかは分からない。

本紙 実際解決できる?民主党は海外へ出向き声を拾っていたが、与党が動かないとアイデアは出ても20年以上たっても投票自体の状況は変わらない。

武末 野党にとってはチャンスとなるのではないか。ネット投票に対して、政治家に慎重派多いのは間違いない。単純に若い世代の投票率が上がるとかだけでなく、票田、地盤、選挙運動のやり方自体が変わったりと大きな変化があるのでは、だから在外を先にやらせるのでは?

本人確認が課題
マイナンバーの実現性は

在外選挙認証

本紙 公職選挙法は国内法なので海外での選挙違反を取り締まれない。確実な個人確認ができる切り札であるマイナンバー制度導入の実現性はあるか?

竹田 マイナンバーは、確かに管理は難しいかもしれないが、海外は都合のいい実験台と思う。まずは海外で試してもらいたい。

本紙 在外選挙は国内の住民票を抜いた人の権利、マイナンバーは日本在住の住民票に基づく発行だから海外の有権者はマイナンバー持ってないという制度上の齟齬(そご)が発生している。それをどうクリアするかだ。

竹永 2019年デジタル手続法案、海外在住者にマイナンバーをあげる法案はできてる、だけど2024年までの施行で止まったまま。

武末 デジタル的な技術的な問題は殆どクリアされてる。選挙人名簿台帳みたいなものをきっちり作ってしまえばむしろ不正行為が避けられる。それもネットの良さ。ただ、よく言われるのは、皆で集まっているところでの投票や、システムをよく分かっていないおじいちゃんの端末を教えてる息子が押してしまうとか、結局本人投票ではないようなこともなくもなさそうだが、重箱の隅をつつくようなもので不正とは言えない。

本紙 在外選挙での投票率の低さ、改善策は?

津山 在外選挙人証をワンストップで取れるようにしないと。最初でつまづいてるひとがおそらく5割以上いるのではないか。

武末 その通り。近くに領事館がない人にはとても不便。

本紙 投票率が上がらないのは、直接的に自分たちに関係のある法案などが出ないから?

武末 海外にいると直接的に関わることは少ないけど、少子化の問題など、日本にいる若者は大丈夫?若者が損をしているのでは。

政治に関心を持たなければならない;安倍政権継承のままでよいのか、経済が死んでいっている。女性の国会議員が少ないなど、あらゆる面で遅れている。今年に入ってから二重国籍問題も時代が求める方向に進んでいない。在外の当事者が声をあげていかなければならない。そういうことを変えていくのも在外としての使命。

投票でしか国を変えられない

竹永 在外選挙に関わって30年の経験から有権者に対して言いたいことがある。日本人は自分で社会を変えられると思っていないのが問題。アメリカの大統領選を通して、社会の変え方を知った。2〜3時間並んででも投票するアメリカ人、近くに投票所があっても行かない日本人。在外投票率1%台はどういうことか。

津山 私の友人もアメリカ大統領選のときはユニオンスクエアで11時間待った。日本のメディアにも責任がある、とくにメインストリームの全国紙やNHK。総裁選に対しての報道ぶりがみっともない

武末 1党内の選挙なのにまるで国の選挙みたいになっちゃってる。政権交代ではなく、自民党がメイン。

本紙 有権者にも問題意識・参加意識が必要ということか。

竹田 同意。入口のところが問題で、海外に住んでいるひとが選挙に参加しやすくするのが一番よい方法。一番の理由は門であり、それを開いてほしい=制度をしっかりしてほしい。ついでに、津山さんの仰った通り、皆さんが言ってる成長と分配。30年間デフレ、成長なくGDPも同じの日本。その間に中国はGDP40倍の成長率。隣の中国が成長してる間、一番の貿易国は日本だったのになぜ日本がそのままで来てしまったのか?白川前日銀総裁のデフレ政策?誰が何が悪かったのかは分からないが、改善が必要、成長しないのあれば、国民が議論して幸せになるように分配の姿勢に変えていかなければならない。選択の分岐点にある。

竹永 どうやって制度をやりやすく、変えるのか。それは有権者が自分で動かす、自分の票の力を使って社会を動かさなければ何も変わらない。投票率1%台では政治家は身向きもしないし、何も変わらない。

武末 日本の政治が変わらない、それがそのまま経済政策にリンクしている。例えば資産課税

本紙 制度が難しいのは分かったが、有権者の投票意識の希薄さについてはどう思うか

津山 2つある。1、(先述の)メインストリームのメディアがきちんと報道すること。2、30年間、負のサイクルである日本経済、その結果貧困層が増え、情報の格差にも繋がっていること。

竹田 やはり政治力が大事だが、NHKニュースを見ていて一番目についたのが、30歳前後の母で母子家庭でごはんが食べれない。バブル後、生まれた人たちは一度もいい思いしていないで今日まできている。それに対して政府援助も何もなく追い詰められていく。その例をもって本当に考えないと何もよくならない。

武末 ロストジェネレーションと言われる人たちが中年になった。この間、消費税が上がり、法人税は下がった。そういった形で大企業は存続させつつ一般国民に負担させて生き延びている日本、ジリ貧で沈没していく日本。このままでは優秀な人たちが海外に出て行ってしまう。海外に出るのはいいが、出っぱなしではなく、その経験を日本にフィードバックするというような意味でも、二重国籍の問題なども含めて考えていなければならない。

本紙 海外の有権者の声を代弁する政治家はいるのか

竹田 そんなにいないのでは。

津山 デフォルト(基本形)で日本でも日本人しか住んでないみたいな意識がある。お役所で住民票を抜いた時に、一言でも在外投票の案内があったらいいのに。今回もNY領事館からの選挙に関しての手続き案内でも、日本に行ったり来たりしないとみたいなことしか載ってなく酷い。

竹永 津山さんが話された在外投票案内に関しては役所によってあったりなかったりするから、総務省か何かに言った方がいい。

本紙 昨年、コロナ禍での一律給付金を海外在住者にも配布をというような声があったのにも関わらず、結局配布までは至らなかった。海外の声をきちんと上げて海外の声を代弁する人が必要だ。そして審議の是非も含めて、だめならだめで「それはこういう理由でできませんよ」と海外の有権者に説明する人なり党があってもいいのではないか。このコミュニケーション不足は何とかならないのか。「在外選挙」は投票する人、される人の双方でさらに改善の余地がある。

 本日はありがとうございました。     おわり

(この座談会は18日にNY日系人会ホールで開催したものです)

(関連記事)海外有権者の声

合言葉は「NYで、起業しよう」

成功体験、経営の悩み、何でも相談

17年間経営者を生み続け
経営者を支え合ってきた

友安代表

 ニューヨークでビジネスを起業した経営者や経営者予備軍を主体に2004年に創設されたNY一旗会(友安亮之代表)の200回記念会議が13日ZOOMで開催され、歴代幹事はじめ、ジャカルタ、日本、西海岸、中西部、東海岸など世界から28人のメンバーが参加した。

 今回の会合の目的は、NY一旗会参加者からのフィードバックを通して会が参加者にどのような影響を与えているか、その存在意義を改めて確認することだ。

 会合では「一旗会が無かったら独立出来ていなかった。出会えたことでやりたい人生を歩むことができた。刺激的な影響を受ける場所だ」という声が聞かれた。今後の活動展望としては、引き続き毎月定例会を行い、参加者皆が助け合い、寄り添える場所を作っていく。皆が情報や経験談を持ちより、一歩先を常に進む仲間、グループであり続ける、などが提案された。ロサンゼルスで1997年に始まった一旗会は、創設者の射手園達一さん(77)が、失敗したビジネスの教訓を若手経営者に学んでもらおうと設立した団体だった。

常に上を目指す集団

 インプットが十分でないとアウトプットが枯渇する、インプットが多いと時代の流れを読むのにも役に立つ。NY一旗会は常に上を目指したいと思うメンバーが集まる。ここは、経営者達が相談できるコミュニティー。経営をする中で分からないこと、壁にぶつかった時に現状を共有し、メンバーの経験談を通して気付きを得ることも多い。

全米と世界に広がる
外出自粛で再度終結

 コロナをきっかけにZOOMでの開催に切り替えたこともあり、今ではニューヨークやニューヨーク近郊からだけではなく、西海岸、中西部、ハワイ、日本、インドネシアなど各地から参加しており、より幅広い情報・意見交換が出来るようになっている。そんな各地から参加するメンバーの多くは元々ニューヨークにいて一旗会に参加していたメンバーだ。2007年から2015年8月まで幹事を

務めたNPOジャネット理事長の榮枝洋文さんは「自社の利益や自分のスキルを上げる事だけでなく、相手に『おすそ分け』を持ち寄る会合として運営していた」と振り返る。

 毎月の月例会に参加すること、今のままでいいのか、次の手はないのかと考え続けることが出来るのもメンバーで忌憚ない意見交換が出来るからだ。合言葉は「NYで、起業しよう」。NY一旗会が応援する。

詳細はウェブサイト  http://hitohatakai.org/

問い合わせはEメール  ryojitomoyasu@hotmail.com

眞子さまはJ-1ビザを取得されて美術館で勤務されるかもしれない

加藤弁護士のビザ最前線

 2週間前に当紙で、小室圭さんとご結婚される眞子さまはニューヨークで就労するのは難しいかもしれない、とお伝えしました。しかしながら眞子さまは、ご本人の希望とともに、メトロポリタン美術館、自然史博物館など美術館が受託して、J-1ビザを取得されれば、ニューヨークで就労されることは可能かもしれないのです。今回は、この

J-1ビザについて説明いたします。

 J-1ビザは、交換留学生、研究者、医者などが通常対象になりますが、期間や目的が限定された研修やインターンシップでもJ-1ビザが発行されます。

■J-1研修プログラム対象者

(1)アメリカ外の短大・大学・大学院を卒業後1年以上職務経験、または

(2)高校卒業以上でアメリカ外で5年以上の職務経験条件

① 研修の内容が職務経験に合った分野

② 研修内容は、芸術・文化、教育、行政、法律、メディア、ビジネス、財務、科学、技術系、観光・ホテル・レストラン・医療・介護などホスピタリティーを含む。

(3)最長18か月まで研修可能

 観光・ホテル・レストラン・医療・介護などホスピタリティーに関しての仕事は、最長12か月までの研修。ただし、ホテルやレストランのビジネスマネージメントでは、最長18か月研修を許可される。

プログラム参加回数の制限

① なし。ただし、すでにJ-1ビザを取得している場合は、前回取得してから2年以上経過しており、前回の研修内容と異なること。

② 新たな研修内容に関連した分野での職務経験が必要。

■ J-1インターンシップ・プログラム対象者

(1)アメリカ外の短大・大学・大学院に在学中の学生、または

(2)アメリカ外の短大・大学・大学院を卒業して1年以内条件

① アメリカ外の短大・大学・大学院の専攻にあった分野で、専攻を補強するための研修であること

② 最長12か月まで研修可能。延長申請は可能ですが、限られている。

 両方のプログラムで共通の条件は、英語力、アメリカに滞在できる十分な資金があり、アメリカに永住する意志がないことです。

 眞子さまは、大学で美術・文化財研究を専攻され、イギリスの大学院で博物館学で修士号も取得されています。また日本の学芸員の資格もお持ちで、すでに日本では大学の研究博物館に研究員として勤務されているとのことなので、ニューヨークの美術館や博物館が受入先または就労先ということならば、研修生としてのJ-1ビザは該当するでし

ょう。

(加藤恵子/ニューヨーク州弁護士)

史佳、魂の競演

ロン・カーターとカーネギーで実現

 新潟とニューヨークを拠点とする三味線プレイヤー史佳が2度目のカーネギーホール公演「ブレークスルー」を17日開催した。津軽よされ節で始まり、津軽あいや節では母であり師匠の高橋竹育との親子演奏、秋田荷方節、津軽じょんから節と伝統的津軽三味線をたっぷり聞かせた後、第二部でスペシャル・ゲストとしてジャズ・ベースの神様と言われるロン・カーターが登場した。土井晩翠作詞・瀧廉太郎作曲による「荒城の月」が、カーターのベースとニューヨーク総領事、山野内勘二大使のピアノ、そして史佳の三味線が哀調をおびたメロディーを一つに重ねた。(写真上:山野内大使のピアノ、ロン・カーターのベースに即興で魂を乗せていく史佳(右)(写真・GION))

 カーターのソロ「ユー・アー・マイ・サンシャイン」は聴衆を飲み込み、オリジナル曲「タイトロープ」では3弦の三味線と4弦のベースによる世界初の共演「7本の弦の邂逅〜Seven Strings Encounter」が実現した。今回もパーカッショニストの和田啓が参加している。総合司会は元NHKアナウンサーの久保純子さんが務めた。

 公演後、2年前と同様、エグゼクティブプロデユーサーを務めた大坪不動産社長、大坪賢次氏主催のレセプションとディナーが関係者を集めカーネギーホール近くのエンパイアステーキで開かれた。

演奏後のレセプションで鏡開きをする主催関係者

 山野内大使は「今回の公演を日本人として誇りに思い、音楽ファンとしてロン・カーターとの共演を楽しみ、総領事として日米文化交流に感謝する」と祝辞を述べた。カーター氏は「音楽はすべての人のためにある。友人の史佳と初めて舞台演奏し、短い時間ではあったがその才能の素晴らしさに驚嘆した」と絶賛した。

 史佳は「即興の醍醐味を興奮と緊張の中で楽しんだ。偉大な経験を積むことができ人生最高の思い出になった」と語った。 (三)

茄子の揚げ浸し、鮭の紙包み焼き 味噌仕立て

プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)

元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (18)

オーナーの畑崎さん(左)とシェフのミゲルさん

 今月の生き生きEATSは、クイーンズの日本食レストラン、有吉のオーナー、畑崎博志さん(61)にお願いし、中国茄子の揚げ浸しとお店のメニューにはない電子レンジを使った鮭の紙包み焼き・味噌仕立ての2品をご紹介いただきます。

 有吉さんは1991年に4代目の店主として有吉を引き継いで以来30年間、オーセンティックな日本料理をリーズナブルな値段で提供する店としてストリートフェアにも日本代表で出店するほど地元で愛されているレストランだ。

Ariyoshi Japanese Restaurant

41-13 Queens Blvd. Sunnyside, NY 11104

Tel:718-937-3288


■茄子の揚げ浸し

材料(1人前)

中国茄子 半本

絹さや 2〜3枚

大根おろし 少し多め

生姜 少々(ひとつまみ)

天つゆ (めんつゆをお湯で割って)

 中国茄子は、色が紫色で発色も綺麗、食感も柔らかくて日本の茄子より値段が安くて美味しいので、炒め物、天ぷらなどに最適な食材だ。茄子は半分に切って、それぞれ切れ目を入れ、180度(天ぷらを揚げる時と同じ温度)で素揚げする。茄子と油はとても相性がいい。約2〜3分で切り目がきつね色になった頃合いで、油を切って器に盛る。絹さやはさっとゆがいたものを器に添える。温かい天つゆをかけ、大根おろしと生姜でいただく。天ぷらとは違った食感で、茄子の香ばしさが舌に直接伝わってくる。天つゆの甘さが広がり、お酒の突き出しにも、ご飯のおかずにもビッタリの秋の味覚だ。


■鮭の紙包み焼き 味噌仕立て

材料(2人前)

少し大きめの鮭の切り身

にんじん 千切り少々

あさつき(ネギ) みじん切り少々

エノキ 市販袋の3分の1

【味噌ダレ】

味噌 大さじ1

みりん 大さじ1

酒 大さじ半分

マヨネーズ 大さじ4分の1

クッキングペーパー 1枚

塩と黒胡椒 少々

 じゃがいもを5ミリ程度の厚さの輪切りにしてクッキングペーパーの上に4枚並べ、その上にサーモンを乗せる。塩と黒胡椒で下味をつけたら、エノキ、にんじん、あさつき(ネギ)を乗せ、しっかりとペースト状になった味噌ダレをまんべんなく塗り上げる。クッキングペーパーを閉じて、左右両端で、キャンディのようにしっかりとねじ上げて空気が入らないよう密閉状態にする。レンジの中で空気が遮断されて蒸し焼き状態となり旨みが増す。

 食材としては、じゃがいもの代わりにカボチャを使うのもよし。また、ミニトマトを半分に切ったものを横に添えると色合いもきれいだし美味しくなる。

 電子レンジでの加熱は3分から4分。サーモンの中まで火が通っているか、1度確認して足りなければ加熱を追加。クッキングペーパーごと大皿に盛り、包みを解くと、湯気と共に食欲をそそる香りが立ち上がる。味噌がしっかりと鮭に染み込んで、エノキの風味も加わり、ご飯が何杯も進みそう。

 簡単な割に手料理感もあって、見た目もゴージャズな2品。ぜひお試しを!


日本企業版DXは武士道精神で

黒川通彦 平山智晴 松本拓也 片山博順・編著
日本経済新聞出版・刊

 最近よく耳にするDXとは、デジタルトランスフォーメーション(変革)のことで、一般的にはIT導入やIT活用と思われがちだが、本書では「企業文化変革」である。数多くの日本のトップ企業を顧客にもち、米国に本社を置く戦略コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーが今夏に出版した『マッキンゼーが解き明かす 生き残るためのDX』。同社が行った調査によると、グローバル視点で見たデジタル変革の進捗において日本は世界の第33位。世界第3位の経済大国である日本だが、DXに関しては大きく出遅れているのは明らかだ。

 今年9月にはデジタル庁を創設、昨年には行政手続きで必要なハンコの全廃を発表したりと、急速にデジタル化を推し進めていく日本政府。さて、企業はどうなのだろう。日本の会社で働いたことがある人ならば、仕事の取り組み方でスムーズでより早く出来る方法があるにも関わらず従来のやり方ではないという理由から上司が首を縦に振らなかったり、紙の稟議書の上司の承認待ちで業務が滞り、デジタルシステムを取り入れてみるものの、承認してもらうために直接足を運んでお願いをしに行く羽目になり結局余計に時間がかかった、などで地団太を踏んだ経験は一度くらいはあるのではないだろうか。

だからまさにITツールを導入するだけがDXではない、日本の企業にはデジタライゼーションを武器にした変革が必要なのである。本書では、変革におけるボトルネックも解き明かしてくれる。

 個(人)ではなく、皆という総称の方がしっくり来る日本社会。数多くの日本企業を見てきた同社のシニアパートナーは、調和を重んじ、周囲の目が気になる日本社会の文化特性が、日本企業のDXにも影響を及ぼしていると説明している。新しい方法、いわゆる「昭和ルール」からの脱却、変革は、ある意味で調和を乱すということだが、現代の日本企業のDXにおける問題解決には、17世紀まで遡り武士のリーダー論がヒントをくれると本書で明かされており、「葉隠」の口述者であるとして知られる山本常朝の武士道の心得について触れられている。

 また、トップマネジメント、次世代リーダーの意思の重要性についても綴られているが、自分がそれらのポジションに該当しない場合、DXのために何ができるだろう? そんな考えがふと浮かんだ。例えば、アジャイル(agile)開発とは、設計↓製造↓テストのような方法でなく、作る↓試す↓直すといったITシステム開発手法のひとつだが、失敗を嫌う日本企業では、トライアル&エラーを繰り返すようなアジャイル開発を嫌厭しがちだ。しかし、目的達成のためにひたすらに努力できる日本人は見方を変えればすぐにでもアジャイル対応可能な姿勢をもっているのではないだろうか。たとえ新しいアイデアが思いつかなくても、「やってみる」から始めることもDXのためのワンステップになるのではと思えてきた。

 「10年後、現経営陣は会社にいない」とすると、10年後そこにいるのは自分かもしれないDXや変革に関係のない部署や役職だと思っている方にこそ、ぜひ一度読んでもらいたい。(佐久間千明)