【今週の紙面の主なニュース】(2021年11月6日号)

(1)NY市長にアダムズ氏

(2)日本大好き!JAPAN Fes

(3)NY国際写真コンテスト 高橋さん入賞

(4)60年代和製ポップスLP 英国から復刻版入荷

(5)お二人の結婚 在米邦人の声

(6)「変なホテル」NY ミッドタウンに開業

(7)勝やロサンゼルス NYハドソンハードに出店

(8)キャッツキルで過ごす 晩秋のひととき

(9)舞台役者から制作する側へ

(10)パーク街の中庭に庭園 住民に憩いの場創る

日本大好き!

人出1万人

 今年最後のジャパニーズ・ストリート祭となるジャパンフェス2021最終イベント「秋祭り」が 10月23日、チェルシー地区6番街の24丁目と25丁目の間の1ブロックを貸切り開催された。当日は、お好み焼き、今川焼き、たこ焼き、唐揚げといった日本の屋台フードはもちろん、秋祭り限定のコスチュームコンテスト、ダンスパフォーマンスなど、日本の祭りを象徴する食べ物や催し物が目白押し。今年最後のイベントは、JAPAN Fes史上最大の1万人と来場者数を記録。出店者過去最高売り上げを記録したという。今回はDJパフォーマンス、ヨサコイなど今年初の音楽の取り組みを実施。2022年は4月から10月毎月開催、合計10イベントを予定。冬の間は、オンラインであるUMAMI SQUAREで活動を継続。コロナ禍で溜まっていたジャパンエナジーが来年は一気に花咲きそうだ。着物姿のビューティーたちも嬉しそう!

(写真:チェルシーのジャパン・フェスに着物姿で参加した女性たち Photo by Tatsuya Dragon Yamamoto)

NY市長にアダムズ氏

 ニューヨーク市長選が11月2日に投開票され、民主党候補のエリック・アダムズ氏(60)=写真=が共和党候補のカーティス・スリワ氏(67)を下し当選した。

 アダムズ氏は元警察官で現ブルックリン区長。デイビィッド・ディンキンズ氏(在位1990〜1993年)に次いで2人目となる黒人のニューヨーク市長が誕生した。来年1月1日に就任する。

 共和党候補のスリワ氏は赤いベレー帽で知られる非武装自警団「ガーディアン・エンジェルス」の設立者。両候補とも新型コロナ禍で悪化したニューヨーク市の治安を改善するために犯罪対策の強化を訴えていた。しかしNY市の有権者登録者数は、民主党が共和党の7倍と圧倒しており、スリワ氏は勝利にはまったく手が届かなかった。アダムズ氏は民主党の中では警察を擁護し予算削減に反対するなど穏健派とされるが、警察官による暴力的な取り締まりには批判的だ。なお、卒業したクイーンズのベイサイド高校は現在、ニューヨーク補習授業校LI校の借用校である。

日本人写真家相次ぎ受賞

高橋智史さん

NY国際写真コンテストIPA「社会正義のための闘い」

 ニューヨークの国際写真コンテストIPA(International Photography Awards)の今年度受賞者が10月14日に発表され、プロフェッショナル部「報道写真部門・その他」で高橋智史さんの写真「社会正義のための闘い」が第2位に入賞した。受賞作品は2016年、カンボジアの人権活動家テップ・バニーさんが囚われの身となりながらも祈り闘う姿を撮影した写真。(写真上:©Satoshi Takahashi)

 高橋さんは1981年秋田県出身、2003年から約15年間、カンボジアで活動し現在は神奈川県在住。受賞作品を収録した写真集『レジスタンス』は9月、パリ写真賞で金賞を受賞したばかり。高橋さんは「テップ・バニーさんは現在アメリカに亡命中。この賞によって彼女の願いと勇気に少しでも光が当たることを心から願います。」と話している。

栗岡彩織さん

ルーシー財団国際写真賞、静物写真で15年連続

 ニューヨーク拠点の写真家、栗岡彩織が、国際的に写真分野で大変栄誉あるルーシー財団が例年主催する、国際写真賞において、2021年度のプロフェッショナル自然/花の部門で2位、ファインアート/静物の部門でhonorable mentionを受賞した。この2位入賞は、昨年に引き続き2年連続、honorable mentions は、15年連続で入賞している。栗岡は「四季折々、移り変わりゆく自然の美、日常の中にあって、非日常的な美しさを放っている瞬間を捉え、その感動を写真で表現し続けたい」と入賞についてコメントしている。

60年代和製ポップスのLPレコード英国から

 米国で、ビニール盤と呼ばれるレコードの復権が著しい。ロックフェラーセンターの6番街にこの春、ブルックリンから移転した老舗レコード店ラフ・トレードの品揃えも充実してきている。日本コーナーには日本からの直輸入ではなく、英国のエースレコード社からの輸入盤和製ガールズポップスの60年代の復刻盤LPが入荷している。

 例えばブラックルーム/黛ジュン、シャロックNO.1/中尾ミエ、月影のランデブー/麻里圭子、黄色の世界/J・ガールス、ピーコック・ベイビー/大原麗子、渚の天使/弘田三枝子などのほか、木の実ナナ、和田アキ子、辺見マリ、山本リンダ、奥村チヨ、ザ・ピーナツなど昭和ポップスの代表的歌手の45回転ヒットレコードのB面に収録された知られざる曲も多く含まれており、大御所歌手たちのデビュー当時の初々しい歌声に出会える。

 まず当時の楽曲の完成度の高さに驚かされると同時に、ジャケットを含めて作品全体から漂うポストモダン真っ只中にあった昭和の香りを満喫できる。ジャケットは、日本でも米国でも生まれ得ないであろう英国60年代調がアートとして新鮮。盤質は優秀、音もリマスター効果が素晴らしく、45〜50年前の録音とは思えない程のクリアーでダイナミックな音質だ。33ドル。

ROUGH  TRADE

30 ROCKEFELLER PLAZA

MON-SUN 10:00-20:00

TEL 212-664-1110

Rough trade.com

お2人の結婚、在米邦人の声

 公認会計士の試験も司法試験も、みんな何回か落ちて合格を手にしているのが実態。アメリカネイティブでない人が受験した場合、英語のハンデキャップがあるので、ネイティブと同じ合格率ではないのは当たり前なのに、米国での一般的な合格率を引き合いに出してフォーダム法律大学院を出たら合格して当たり前のように日本で報道されていたこと自体が大きな間違いだ。今回、1回目の受験で不合格になったことは、むしろ一般人として真正面からぶつかっている真摯さが伝わってきて、人間らしさと親しみを感じた。試練だと思って頑張って合格を手にした方が報われるのではないか。(50代、主婦、滞米歴25年)

 一部の週刊誌やSNSでは誹謗中傷が強調されがちだが、お二人の幸せと平安を願っている日本人も少なくない。手放しで喜ばれる結婚でなかったことが残念だが、愛を貫いたお二人をまずは祝福したい。裕福な人は郊外に移り住む他の米大都市と違い、問題も多いものの、ニューヨーク市は多種多様の人々がひしめき、手を携え合って暮らす街だ。これからも日本国民の思いを胸に留め、誠意を大切にしながら、多様性のなかの一つとして、この街に溶け込み、自分たちらしい生き方を発見し、実践してほしい。(「ニューヨークの魔法」シリーズなどの著者、岡田光世さん)

 眞子さんの来米後の就職先について日本側の週刊誌報道などでさまざまな憶測が飛び交い、中には具体的な美術館名まで出ているが、当地での関係者は一様に沈黙を守っている。仕事で関われるかどうかは別として、滞在中に日本での経歴を生かした過ごし方ができればいい。米国東海岸には、津田梅子が学んだフィラデルフィアや幕末の志士と言われた日下部太郎ら明治時代の日本人留学生300人あまりが学んだニュージャージー州ラドガース大学など日本ゆかりの地が少なくない。日米交流の歴史は眞子さんにとっても興味深い分野だろう。(60代、会社員、滞米歴35年)

 先日の貴紙記事によると、ニューヨーク在住の邦人はおしなべて眞子さんと小室さんの結婚を歓迎しているようだが、果たしてそうだろうか。私を含めて周囲は、8割が批判的で残りの2割が「天皇制に興味なし」との考えから結婚に関しても無関心である。批判派は、母親の金銭トラブルの解決を4年近くも先送りにしていること、次々と金銭に関する疑惑が出てくること、圭さん本人も経歴を「大げさに盛りすぎていた」こと、「フォーダム大法学院(JD)を本当に卒業しているのか」などと一時疑われたりしたことから、内親王の相手としては相応しくないと考えているようだ。眞子さんに対しても「皇室特権を最大限に行使しているにもかかわらず、公人としての自覚が足りない」「皇族が一般人の金銭問題に介入するのは象徴である皇室の中立性に反するのでは?」と手厳しい。先の記者会見で、国民の批判や疑問に答えず、「誹謗中傷」と否定したことも、自分に都合の悪いニュースを全て『フェイク』と決めつけたトランプを彷彿させて不快だとする意見が多く聞かれた。私も全く同じ考えである。(井上朗子さん、自由業)

批判の背景に皇位継承問題
NYタイムズ紙翌日に詳報

 10月25日付ニューヨークタイムズ電子版が「ついにロイヤル・ウェディング。しかし(祝福の)トランペットはなく、記者会見だけに」と題して報じた。記事では、眞子さまのご結婚相手の選択の妨害となる意見の根底にあるのは、伝統的な日本の象徴としてある皇室が存続の危機にあるからだとしている。世界最古の君主制は継承問題に直面しており、眞子さまの結婚は政府が対処することを拒否した問題を浮き彫りにしていると見ている。

 現在の皇室典範では女性天皇は認められていない。また、民間人と結婚した眞子さまは皇籍を離脱し民間人となるため子供ができたとしてもその子供に皇位継承権はない。こうしたことから継承者が極めて限られている。記事では、日本国民の大多数は現在の令和天皇の19歳の娘の愛子さま(19)が皇位に就くことができるよう法律を改正すべきだと考えているとし、共同通信の最近の調査によれば約80%が眞子さまのような皇室の女性から生まれた子供も継承できるように望んでいることを紹介。与党・自民党の保守派は女性の天皇にも女系皇族が継承権を持つことにも強く反対しているが、現在の皇室典範のもとでは、皇位継承資格を有する者は天皇陛下の弟である秋篠宮さま(55)、甥にあたる悠仁さま(15)、叔父にあたる常陸宮さま(85)の3名しかいないことを指摘。皇位継承が途切れることを避けるために眞子さまが皇室に復帰する可能性があるわけであり、そのため国民が眞子さまの夫の選択を検討する権利があると感じているのだろうとしている。女性宮家創設となれば小室さんも皇族に入る可能性がある。記事では、歴史学者の名古屋大学の河西秀哉准教授の「皇族の女性が後継者になるのか、あるいは皇位を継ぐことになるのかまだわからないため(国民は)結婚をとても気にかけている」との見解を紹介している。小室夫妻は今後はニューヨークで暮らし、圭さんはマンハッタンにある大手法律事務所で勤務、眞子さまはアート関係の仕事をすると見られている。記事では「おそらく、最も大衆的な反発を招いたのは、日本国外で自分たちの生活を切り開くという夫妻の決断だろう」としている。その例として「皇室はかつては美しく、手が届かない神のように見えていたが、現在はそうではない」と語る日本人女性の見解を紹介。女性は「お二人は国のニーズを自分たちのニーズよりも優先するというプレッシャーをそれほど感じていません」と述べている。これに対し、記者会見で小室夫人となった眞子さんは「私の新しい環境で平和な生活を送ることだけを望んでいる」と述べたことで記事は締めくくられている。

変なホテルNY

ミッドタウンにオープン

 HISUSAホテルホールディングスは、「変なホテル ニューヨーク」を10月1日に開業し、そのお披露目グランドオープニングレセプションを 10月29日夜開いた。航空会社、取引先関係者、報道関係者に室内を披露した。式典では岡井朝子国連事務次長補が祝辞を述べた。「変なホテル」の海外進出は韓国に続き2棟目、国内外合わせて21棟目となる。

 「変なホテル ニューヨーク」はニューヨークの中心マンハッタン・ミッドタウンの35丁目に位置、リアルに動く恐竜が出迎え、 18階建て全92室。エグゼクティブキングルーム、ダブルルーム、スイートルーム、そしてキングアクセシブルルーム(バリアフリールーム)を利用できる。客室設備として、自身のデバイスのコンテンツを接続して楽しめる大画面のテレビ、Kassatexのリネンとバスローブ、C.O. Bigelowのバスアメニティ、ウォシュレットトイレ、金庫、そして冷蔵庫を完備。さらにエグゼクティブキングルームでは衣服のしわやニオイをリフレッシュできるLGスタイラーを備えている。スイートルームにはゆったり浸かれる深いバスタブと、プライベートのバルコニーがあり、ビジネスから観光まで幅広いニーズに応えていく。宿泊価格は一泊115ドルから499ドルまで。コンベンションセンターからも徒歩圏内で、ポストコロナを見据え順調なスタートを切っている。波多野英夫社長=写真=は「変なホテルの米国第一号として開業できたことを大変嬉しく思う。今後、ロサンゼルス、シカゴなど米国内主要都市で『変なホテル』 を展開していきたい」と語った。

勝やロサンゼルス、ハドソンヤードに

 ロサンゼルスで手広く日本食レストランを経営する「勝や」グループのニューヨーク1号店がハドソンヤードに完成し、10月21日関係者にお披露目された。沖縄出身で大阪辻調理師専門学校出身のオーナー上地勝也さん(63)は「アメリカで成功したロッキー青木さんに憧れて1984年に来米。「自分は鉄板焼きではなく、寿司で生きてきた。ニューヨークでも寿司をメインに炉端焼き、和風創作料理で楽しんでもらいたい」と話す。総料理長は釘田慎二さん。席数は150席で、バーラウンジまで入れると200席余りの大規模レストランとなる。

 上地さんはロサンゼルスに個人で10店舗、米投資会社との提携でロサンゼルスに4件、マイアミに1件を展開し、NYも投資会社との提携で進出。お任せの寿司は180ドルから。グランドオープニングは11月下旬を予定。お披露目では、マグロの解体も上地さん自ら包丁を取り招待客に振る舞った。

キャッツキルで過ごす晩秋のひととき

 駆け足で通り過ぎるニューヨークの秋。特に北部の秋はあっという間に終わってしまう。紅葉が終わったキャッツキルの景色は寂しいが、しーんとした静けさに包まれてとても味わい深い。今号ではキャッツキル山地北側のローカルなおすすめスポットをご紹介。

■ユニオングローブ蒸留所

テイスティングコーナー

 ルート28沿いのアークビルという小さな町にある蒸留所で、地元出身のブライアンとタッドが建設関係の仕事を辞めて創業した。現在はウォッカ、ライウイスキー、ジン、メープルスピリッツの4種類を蒸留している。いずれも高い評価を得ているが、中でも一番人気は地元産のメープルシロップを加えたラム酒をバーボンの樽で寝かせたメープルスピリッツ。高アルコール度(80)の割にはメープルシロップの甘味で口当たりが柔らかく、ほのかにバーボンの香りがする。蒸留数が限られていることもあり一番先に売り切れてしまう(375ミリリットル43ドル、750ミリリットル74ドル)。また、NY産のリンゴと麦を使ったウォッカはバニラのアクセントとダークチェリーの香りで複雑な味わいを持つ(375ミリリットル23ドル、750ミリリットル32ドル)。店内では容器は小さいが無料でテイスティングが楽しめる。酒好きの人は絶対行くべし。週末のみ営業(金・土15時〜21時、日13時〜17時) 

Union Grove Distillery (43311 NY-28, Arkville, NY 12406)

電話607・287・0208

www.uniongrovedistillery.com/

■ツリージュース・メープルシロップ

 ユニオングローブ蒸留所から車で10分足らず、その先には森と山しかない道の途中、GPSが無ければたどり着けないような所にある。無人の店内にはメープルシロップの瓶とステッカーが並び、作業台の上には先に訪れた人のメモ書きと現金が置かれている。大らかな商売ぶりに感心していたら別の作業小屋の方から長靴を履いた女性が犬2匹と共にやって来て接客してくれるのかと思ったら、「ゆっくり見ていってねー」と何やら作業を始めた。この素朴さがなんとも心地よい。

メープル作業小屋

 100エーカー以上の広さを持つ一帯のメープル農場は1930年代からフェアバーン家によって運営されていたが2004年に一旦閉鎖。8年後に一族のジェイク、ライアン、レイの3人がメープル小屋を再開し、新ブランド「ツリージュース・メープルシロップ」として売り出した。CSA(地域支援型農業=前払いによる農産物の契約を通じて購買者と生産者が相互に支え合う仕組み)制度を導入し、農場と製品の安定化を目指している。通常のメープルシロップのほか、バーボン、シナモン、ブルーベリー、レモン、ガーリックなどのフレーバーがある(2オンス5ドル〜)。NYならではのホリデーギフトにいかが?

Tree Juice Maple Syrup (59 Rider Hollow Rd. Arkville, NY 12406)

電話845・204・8870

www.treejuicemaplesyrup.com/

■ハナ・マウンテンリゾート&カントリークラブ

レストランの人気も高い

 ユニオングローブ蒸留所脇の郡道38を北へ走り、突き当りのルート30を右折すると「Hanah Mountain Resort」の看板が見えてくる。1919年にカス夫妻がオープンした小さな宿「Kass Inn」は1949年に9ホールのゴルフ場を増設してゴルフリゾートに成長。豊かな自然と美味しい料理で人々に愛された。時は流れて1989年、キャッツキルとゴルフを愛する東京在住の長坂紘司氏は「Kass Inn」が売りに出されているのを知り、購入を決断。ふもとにあったホテルを山頂へ移し、9ホールを18ホールへと拡大し、本格的なゴルフリゾート「Hanah」へと生まれ変わった。名前の由来は創業者の長坂氏が野の花が好きなことと米国人にも覚えやすい名前として「ハナ」と命名したそうだ。

 ゴルフコースはパー72、山腹にあるゆえ標高差があり、水場が多く、非常に難しい。長年通い続けるファンも多く、今年はアップステートのゴルフ場ランキングで8位を獲得した。クラブハウスから下のレンジまでのカートドライブがスリル満点。曲がりくねった下り坂で、初めての人は絶対ビビる。ひゃーひゃー言いながら道を下ると、今度はルート30横断チャレンジが待っている。田舎の道とは言え、週末ともなるとそれなりに車は通るので、油断は禁物。(写真上:見よ、広々した打ちっ放しのレンジを)

 ホテルはクラブハウスとは別棟の2階建てで、豪華さはないがスタンダードルームでも十分な広さの部屋にクイーンベッド2つとソファベッドを備え、山と森を見晴らすバルコニーが付いている。別棟に温水プールがあるのも嬉しい。ゴルフ以外に春はフライフィッシング、初夏から秋にかけてはハイキングやアップルピッキングが楽しめる。車で15分の立地にベライーヤスキー場(www.belleayre.com)があり、冬季はスキーリゾートにもなる。或いは何もせずにひたすらホテルでのんびり過ごすのも良し。ゴルファーはもちろん、そうでない人も楽しめて、尚且つリラックス出来るのが「ハナ・マウンテンリゾート」の魅力だ。*ゴルフ場は雪が降るとクローズ。ホテルは通年営業。クラブハウス併設のレストランは宿泊客以外も利用可(要予約)。冬季は営業日が変更になるため事前に電話で確認のこと。

Hanah Mountain Resort & Country Club (576 W. Hubbell Hill Rd. Margaretville, NY 12455

電話845・586・4849

www.hanahcountryresort.com

パーク街の中庭に庭園、住民憩いの場を創る

 マンハッタンのグランドセントラル駅より南側で、マジソン街から3番街まで広がるイーストサイドの閑静な住宅街は、マレーヒルと呼ばれる。このエリアのパークアベニューに建つコープビルは、戦前からの建物も多く、住民も長年住んでいる人たちが多い。そのビルに囲まれ、置き去りにされていたコンクリートの空き地だった場所に、住民が季節おりおりの鉢植えをアレンジして住民憩いの庭園に創り変えたことが、地元マレーヒルで話題となっている。

 この庭園をボランティアで6年半かけて作ったのはビルに住む日本人女性、森田法子さん(68)。「人間、歳をとると人工的なものに囲まれるより自然の中でホッとする時間が必要になるんですね」と話す。隣接する建物の窓から園芸作業をいつも見てくれていたフレンドリーな女性が、大きな植木鉢を寄付してくれたり、中庭を見下ろす隣人にとっても季節を感じさせる憩いの場所になっているようだ。

 春先、真っ赤なボケの花に始まり、枝垂れ桜のピンク、ペチュニアの紫、ニューギニアペイシャントの白、五月には、石楠花、つつじの桃色、百合と薔薇の芳香、紫陽花、葵の白とラベンダー、そして、秋、最後のシーズンは菊。オレンジ、黄色、紅色とモントークデイジーの白が庭を彩る。地面がコンクリートなので直接草木を植え込むことができないためすべて鉢植えだ。パティオテーブルを2か所に設置して食事を楽しむこともできるようにした。

 5月にはこの庭園で結婚式を挙げたいという住民カップルがいたが、市の結婚局はパンデミックで休業中。オンラインで結婚届は出したものの何とか式を挙げたいという希望を叶えたのが同じく住民で牧師の資格があるガーデン・コミティメンバーのトーマス・グラネルさん。森田さんの夫、繁実さんとグラネルさんの妻ヘレンさんが結婚式の証人として立ち会ったという。この結婚式がきっかけで、ベビーシャワーの集いや、誕生会など住民が利用できるガーデンとして使われるようになったそうだ。

 庭には鳥の巣箱、風鈴もつけたが、風鈴がうるさいという思わぬクレームも住民からあってびっくりしたことも。音楽は右脳、騒音は左脳で処理する脳機能が英語と日本語の発音処理をする東西文化で異質性があると角田忠信の著書『日本人の脳』『左脳と右脳』を読んで納得したという森田さん、風鈴の紙を重くして大きな音が響かないように工夫してことなきを得たそうだ。

 今回の住民による中庭の緑地化は、ビル管理会社からも「不動産の価値を上げるのに役立っている」と喜ばれているそうで、今では、不動産ブローカーがコープ入居希望者に最初に見せるのがこの中庭の庭園になっている。あるとき、住人のドイツ系女性から「Thank you for a little paradise. (ほんの少しの楽園をありがとう)」と言われた。森田さんの心の中に、パッと明るい花が咲いた。(三)

(写真)中庭の庭園創りに寄与した左からグラネルさん、妻のヘレンさん、森田さん

舞台役者から制作する側へ

演劇プロデューサー

堀部 直美さん

 堀部さんは、大学時代に舞台役者を目指し、歌・芝居・ダンスのレッスンに明け暮れ、吉原光夫と高橋卓士が率いるArtist Company 響人などの舞台に出演した。人前で演じる事を楽しめない自分に気づき、役者を辞める。CDレンタルショップの店内で流れてくる音楽すら聞くのが辛くて店を出るほど役者を辞めるというのは大きな出来事だった。その後、自分探しで訪れたニューヨーク一人旅で役者を目指すきっかけとなったミュージカル「シカゴ」を観劇し、再び舞台が好きだという気持ちを取り戻し、舞台のビジネスサイドへ挑戦するためエンタメ専門チケットサイトで舞台やコンサートなどのチケット販売やマーケティングに関わった後、アメリカ留学のために退社した。

 役者を辞めた後、世話になっていた役者の先輩達の子供向けミュージカルの自主公演を見に行った際に、「こういう作品をもっと多くの子供達に観てもらうために出来ることは何か。ほぼ役者達だけで運営している劇団では出来ることに限りがあるのではないか」と思い、ビジネスサイドで自分にも何か出来るかもしれないと思ったのがこの世界に入るきっかけだった。

 来米後ニューヨークのウエストチェスターにあるモンロー大学でMBAを取得後、OPT期間中に舞台業界で働き始めた。インターンシップをブロードウェイやオフブロードウェイを手掛けるArs Nova、Manhattan Theatre Club、New York Musical Festivalで重ね、アメリカの舞台制作を実務の中で学んだ。その後、グリーンカードを取得し、ブロードウェイも多く手がける舞台専門のエンターテインメント法律事務所でアシスタントとして舞台制作に必要な権利の取得などの契約書の下書きに携わり、プロデューサーの仕事の一部を学んだ。

 コロナの最中は劇場がどこも閉まっていたので制作サイドの人間には応募できる仕事がほとんどない状態が続いたが、現在はブロードウェイで上演中のDANA H.という作品にアソシエート・プロデユーサーとして関わる事でブロードウェイに戻ることが出来た。

New York, New York – October 1, 2021. Deirdre O’Connell in Dana H photographed at Lyceum Theatre in Manhattan. CREDIT: CHAD BATKA

 DANA H.は24年前、一人の女性が5か月間複数のモーテルに監禁された恐怖の体験を語ったインタビューの実際の音声に合わせて役者がリップシンクで演じるという革新的なリアルと芝居が融合したドキュメンタリー。ブロードウェイのLyceum Theatreで今月13日まで上演中だ。

 将来の夢はいつか日本のオリジナル作品を制作し、海外へ持っていきたいです。特に第二次世界大戦の話をプロデュースし平和を訴えていきたいという。千葉県出身。(三浦良一記者、写真も)