永住者にも投票権

市長選挙など市政関連選挙

NY市議会可決

 ニューヨーク市議会は9日、米国籍がなくても米国永住権(グリーンカード)保持者または米国での就労を許可されているNY市在住者に、市長選や市議選など市政関連選挙への投票権を与える条例案を賛成多数で可決した。

 デブラシオ市長は署名する意向で成立は確実視されている。対象は80万から100万人ほどになると見られている。採決では賛成が33人、反対が14人、棄権が2人だった。

 非米国籍者にも投票権があるのはバーモント州やメリーランド州などにある小さな自治体で、サンフランシスコ市も教育委員会選挙のみである。イリノイ州、メイン州、マサチューセッツ州のいくつかの自治体でも制定の動きがあるが、NY市(人口880万人)という大都市での制定は米国初となる。

 今回可決された条例案第18678号では、①米国における合法的な永住者または米国での就労を許可されている、②30日以上連続してNY市に居住している、③年齢など米国市民権以外の有権者登録に係る資格をすべて満たしているーの3つすべてを満たす外国人には、NY市選挙管理委員会の有権者登録を行うことが認められる。

 この三つを満たした外国人には、ニューヨーク市の市長、会計検査官、市政監督官、区長、市議会議員に関する予備選挙、特別選挙、一般選挙、決選投票のすべてにおいて投票権が付与される。これには日本国籍を持っている米国永住権保持者はもちろん、日本の駐在員なども対象となると見られる。ただし、これはあくまで市の条例であり、州や連邦の選挙における投票権は与えられていない。

 外国人有権者の登録は1年後の2022年12月9日から開始され、登録者は2023年1月9日以降のNY市政関連選挙で投票が可能となる。米国市民有権者と同じ投票所で投票する。有権者登録用紙は、スペイン語、ベンガル語、韓国語、中国語の翻訳版も作成される。また、NY市政関連の政党に登録することもできる。

 実施に際し、公職者が委員長を務め、市長が任命する2名の委員と議長が任命する2名の委員で構成される諮問委員会が新設される。諮問委員会は、年に2回以上の会合を開催し、勧告を行い、毎年報告書を公表することになっている。この条例には反対の声もあり一部の共和党のNY市議が条例差し止めの訴訟を起こす方針だが、法律の専門家によればNY州憲法では非市民の投票を明示的に禁止はしていないという。

棟方志功展始まる

ジャパンソサエティーで来年3月20日まで

 ジャパン・ソサエティー(JS)・ギャラリーは、棟方志功(1903〜1975)の100点に及ぶ作品を紹介する展覧会「棟方志功—板極道—」(むなかたしこう—ばんごくどう—)を12月10日 (金)から来年3月20日(日)まで開催している。米国最大の棟方コレクションであるJSの貴重な所蔵品をもとに構成された本展は、「世界のムナカタ」と名をとどろかせた木板画だけでなく、書道、墨絵、水彩画、リトグラフや陶芸など幅広い作品を紹介するとともに、20世紀を代表する想像力豊かな芸術家である棟方の魅力に今一度焦点が当てられる。

 展覧会のデザインは建築事務所MAOが担当。棟方は1903年青森県生まれ。白黒板画や、自由でスケッチのような作風で知られる木板画の世界的巨匠。スイスのルガノ第2回国際版画展(1952年)や第28回ヴェネツィア・ビエンナーレ(1956年)、名誉勲章(1963年)、文化勲章(1970年)を受賞。入場料は一般12ドル、シニア・学生10ドル。チケット購入は ボックスオフィス電話212・715・1258まで。開館時間は木曜日〜日曜日の正午〜午後6時。

www.japansociety.org

えんとつ町のプペルNYで上映

12月31日42丁目のAMCエンパイアで

 日本のお笑い芸人でイラストレーターでもある西野亮廣の絵本『えんとつ町のプペル』のアニメーション版「Poupelle of Chimney Town」のニューヨーク劇場公開が12月31日(金)に決定した。

 会場はAMCエンパイア25(西42丁目234番地、7番街と8番街の間)。上映開始時間などは映画館のウェブサイトを参照。

上映時間は1時間40分。劇場上映に合わせ、原作・脚本の西野亮廣もニューヨークを訪れる。

 絵本は累計70万部以上を売り上げており、自身が製作総指揮を務めた同名映画は、国内で170万人動員、している。

詳細はウェブサイトhttps://www.amctheatres.com/movie-theatres/new-york-city/amc-empire-25

ジャズ奏者のロン・カーター氏に旭日小綬章を伝達

 令和3年(2021年)秋の叙勲において、旭日小綬章を受章したロン・カーター氏への叙勲伝達式が14日、ニューヨーク総領事公邸で行われた。カーター氏は、米国の誇るジャズ・ベース奏者であると同時に、2度のグラミー賞(最優秀インストゥルメンタル・コンポジション賞(昭和63年)及び最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞(平成7年))に輝くなど、世界的にも知名度の高い芸術家。同人は、多くの日本の音楽家との共演、当館主催の東日本大震災10周年事業での演奏披露、教育者としての日本人音楽家の育成等の活動を通じ、ジャズを日本の音楽界に普及させ、日米文化交流を促進し、日米間の友好関係強化に大きく貢献した。

(写真)山野内大使(右)から勲章と賞状を手渡されるカーター氏(14日夕、大使公邸で)

「おめん」の品川さん死去

SOHOにうどん店で一時代築く

 ソーホーのうどん店「おめん」の創業者、品川幹夫さんが11月17日に京都の病院で肝臓がんのため死去した。享年66歳だった。1981年にソーホーにうどんをメインにした日本食店「おめん あぜん」を開店。ニューヨークの文化人が集う店として繁盛した。創業の地は京都大文字山の麓、銀閣寺に昭和42年に母親の品川登美さんがうどん店を興した。当時の関西にしては珍しい濃口醤油を使っただしに胡麻、きんぴらごぼう、野菜を入れるつけ麺が評判を呼び、ニューヨークでもこのスタイルが「おめん」の名で人気のメニューとなった。合成添加物や化学薬品、精製された白砂糖を一切使わず、伝統的で自然な製法で作られた日本食文化を伝えていきたいという強い思いがファンを魅了した。また個人としては天理文化協会の運営委員としてニューヨークにおける日本人芸術家支援の活動にも力を入れていた。

 八木ボンNY日本食レストラン協会理事長の話「気持ちの優しい落ち着いた紳士だった。京都をバックボーンにした日本食文化をニューヨークで広める礎となった人だった」

ジャズピアニスト白崎彩子さん逝く

NY拠点に活躍

 ジャズピアニストの白崎彩子さんが11月29日がんのためニューヨークの自宅で亡くなった。享年52歳だった。5歳からクラシックピアノを始め、10歳になるとジャズピアノの演奏を父親から習った。東京都立芸術高等学校、東京藝術大学音楽学部ピアノ科卒。ジャズ奏者として活動していたが、本場のジャズを求めてニューヨークへ渡った。その後、マンハッタン音楽学校を卒業。当地で米国人と結婚し、2児の母親となったあとも音楽活動を続けていた。1995年に第1回ハイネケン・ジャズ・コンペティションピアノ部門第2位。2001年、マンハッタン音楽学校ジャズピアノ科修士課程を修了。2003年にアルバム「イグジスタンス(原題: EXISTENCE)」 でデビュー。白崎彩子ピアノトリオを結成し活動していた。

ホリデーマーケット、Xマス商戦で大盛況

●ユニオンスクエア・ホリデーマーケット

 ユニオンスクエアに地元アーティストによるジュエリーやペット用品、チョコレートなど、ギフトショップがずらりと171店並ぶ。時間は、月〜金曜が午前11時から午後8時、土曜が午前10時から午後8時、日曜が午前11時から午後7時まで。12月24日(金)午後4時で終了。

●ホリデーショップス・アット・ブライアントパーク

 中央のアイススケートリンクを囲むように公園全体を使い170店が軒を連ねる。バンク・オブ・アメリカ・ウィンタービレッジには巨大ツリーやバー&フードホール「ザ・ロッジ」もあり暖かい室内で食事も可。時間は、月〜金曜が午前11時から午後8時、土日が午前10時から午後8時まで。2022年1月2日(日)まで営業する=写真上=。

●コロンバスサークル・ホリデーマーケット

 セントラルパークへの入り口がある59丁目とセントラルパーク・ウエストに65店が出店。モニュメントを囲む「EATS」エリアには、韓国のコーンドックやワッフルなど各国のフード店とイーティングスペースもある。時間は、月〜土曜が午前11時から午後8時、日曜は午後7時まで。12月24日(金)午後4時で終了。

ユニオンスクエア、ブライアントパーク、コロンバスサークルのマーケット出店マップなどの詳細は、主催するアーバンスペースのウェブサイトhttps://www.urbanspacenyc.com/を参照。

世界の遺児に教育支援米国から

Ashinaga USA 米国代表

寺尾 のぞみさん

 病気や災害、自死(自殺)などで親を亡くした子どもたちや、障がいなどで親が働けない家庭の子どもたちを奨学金、教育支援、心のケアで支える民間非営利団体、あしなが育英会の米国法人Ashinaga USAの代表に今年8月就任した。本体となる日本のあしなが育英会を創設した玉井義臣会長(86)からの熱意あるラブコールに心を動かされた。玉井会長との出会いは、2011年の東日本大震災の直後、震災によって親を亡くした遺児たちと共に、タイムズスクエアでの街頭募金活動にボランティアとして参加したときだった。「会長の団体に対する思い、子どもたちを守ることに命を注ぎ続け、教育がいかに大切かというお話に、心を打たれ、何がしかの形でお役に立ちたいと思った」。 その後、アメリカにオフィスを構えることとなり、ボードメンバーとしてまず、Ashinaga USAの仲間に加わる機会を得て、今回の代表就任となった。

 もともと寺尾さんは自身が持つ非営利団体 MSTERIO(ミステリオ)という子どもを対象にしたバイリンガル・サマーキャンプや、世界中の子どもに手作りの人形を届ける活動を続けている。そのスローガンは 「How to make a difference」。玉井会長の理念の中に、この「Make A Difference」の精神を多く感じことも引き受けた大きな理由だった」そうだ。

 東京都出身。小学校から女子校で一貫教育を受け、高校3年の時に1年間シカゴに留学したことが人生に影響を与えた。米国大使館商務省、フジテレビ制作部、伊藤忠商事アメリカの社長秘書を経て、モルガンスタンレー証券東京支社に入社。その後、NY本社モルガンスタンレー証券会社に移籍、エグゼクテイブ・デイレクターを経て退社。モルガンスタンレー在籍中の2001年にMSTERIOを立ち上げた。

 両親と弟の四人家族で育ち、父睦夫(故人)は大手化学品メーカー、ライオンンの重役で、ビートルズ来日公演(1966年)招聘の要となったり、テレビ番組「8時だヨ!全員集合」の名付け親でもあったりとアイデアマンで行動力ある父親だった。寺尾さんの人徳はまさに父親譲りだ。

 Ashinagaでは、主にアフリカの遺児たちが米国の大学で学ぶための学業支援を行なっている。「Ashinagaはスカラーたちの命を預かっている大切な役割を果たさねばならない」という会長のメッセージを胸にコロナ後の大航海時代へと船出する。

(三浦良一記者、写真は本人提供)

海外児童を経済支援

外務省が在外公館通じ

 外務省は、3〜18歳までの在留邦人児童が感染対策をとりながら安心して学習できるよう、日系団体を通じて、電子ライブラリー及びオンライン教育サービスの学習機会を提供することを目的とした経費支援事業を行うこになった。対象となる団体は、ニューヨーク総領事館管轄地域内の日本人学校、補習授業校、私立在外教育施設(日系の団体。「政府援助」の対象となっていない継承語として日本語を学習する学校も対象となる)、及び日本人会、日本商工会議所。支援期間:令和4年1月1日から3月31日。支援内容:電子ライブラリー及びオンライン教育サービスを在留邦人児童等が利用する経費。支援上限額:一人の利用料金の上限は電子ライブラリー:月額550円(税込)。オンライン教育サービス:月額3万円(税込)。入会金、テキスト代、その他諸経費:1万6000円(税込)。

詳細はNY日本総領事館ホームページの同項目。

https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/2021-12-13_digital.html

編集後記 12月11日号

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。ニューヨークの12月の賑やかな街の景色が戻ってきています。ロックフェラーセンターのツリーも彩美しく真向かいのサックスフィフスのプロジェクションマップの芸術も市民の目を楽しませています。本紙の年内のレギュラー号も残すところ来週号で消化し、あとはいつものことながらクリスマス返上で年末に発行する新年特別号の制作に取り掛かります。2022年新年号は、コロナ禍から世界が生還する年として位置付け、人を助けるという意味での「一人一人の人道支援」について光を当てます。ニューヨークにも多くの子孫が住むユダヤ系難民で杉原千畝によって命を救われた人たちのドラマをいま一度呼び覚まし、日本とニューヨークにたどり着いたユダヤ系市民たちとの交流を紹介します。また、高齢の日系人に対する福祉支援をしている日系団体に焦点を当て、活動の紹介をして理解を深めてもらうことで、海外で日本を感じながら生きていくことの意味、人を助けることの大切さを読者と一緒に考えていけるような新年号を予定していますのでどうかお楽しみに。今年もレギュラーはあと1回ありますが、一足早くホリデーシーズンのご挨拶をして今週から新年号に軸足をシフトします。今年も1年ご愛読ありがとうございました。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2021年12月11日号)

(1)補習校児童に奨学金 在米日系銀行が共同支援

(2)SEX AND THE CITYも 一目惚れのモザイク・ド・チエ

(3)民間企業全社員に接種義務  NY市が今月27日から実施

(4)真冬はダッフルコート

(5)インターネット投票 岸田首相の国会答弁

(6)願い事かなって タイムズスクエア

(7)暮らしのテーブル クリスマスを彩ろう♪

(8)シンデレラと魔笛 メトロポリタンオペラ公演

(9)隈研吾と森俊子 環境と建築を語る

(10)和製ボストンポップス世界へ 佐藤美紀子さん


補習校児童に奨学金

在米日系銀行が共同支援

 ニューヨーク日本人教育審議会に対し、今年度に引き続き、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行から、ニューヨーク及びニュージャージー補習授業校に通う園児児童生徒を対象とした来年度の奨学金制度の申し出があり、両校併せて20人程度へ給付される。

 来年度の奨学生要領の募集は次の通り。対象者は、ニューヨーク補習授業校及びニュージャージー補習授業校の在籍者で、日本語・日本文化等を学ぶ意欲のある園児児童生徒。昨年度受給の園児児童生徒も応募可能。                             奨学金は、毎年4月から次年3月までの1年間を対象とし、各授業料納入期の開始時点(4・8・12月)で在籍していることを条件として、各期の授業料から給付額の3分の1相当分を減額する。

 申込み必要書類は、奨学金申込書、世帯全体の所得申告証明(2020 Tax Return Form-1040 ページ1〜2のコピー)、現地校成績表のコピー、作文(幼児部については簡単な文や絵、作品など)。補習授業校が指定する作文用紙を使用すること。作文の課題は自由だが、例えば「私にとっての補習校」、「私と日本語」、「ボランティア活動について」など。絵や作品の場合は写真を送付する。申し込み用紙、作文用紙は、各学校のホームページからダウンロードできる。

 応募締め切りは2022年1月18日(火)午後5時まで。選考基準は、奨学金の経済的必要性、日本語/日本文化習得に関する意欲・補習授業校及び現地校における学業成績、作文・作品、児童生徒のボランティア活動等。書類送付先は、メールの表題を「JEI奨学金応募(○○補習校 保護者氏名)」としてEメールJEIScholarship@jeiny.org(The JEI Scholarship Office)まで。

応募に関する問い合わせも同Eメールまで。