学生抗議デモ全米に拡大へ

ベトナム反戦運動以来の学生運動に

 イェール大学やニューヨーク大学、テキサス大学など全米各地の大学でイスラエルのガザ侵攻を非難する学生らによる抗議活動が依然として続いており、構内に野営して抗議活動を続ける学生を排除しようとして各地で逮捕者が続出。ベトナム反戦運動以来の大きな学生運動となっている。

 マンハッタンにあるコロンビア大学では4月29日、大学に対しイスラエルに武器を売却している企業などへの投資引き揚げを退去の条件に挙げていたが、大学側は29日、「引き揚げはしない」とこれを拒否。すでに授業はリモートとなっているものの、6月の卒業式が危ぶまれている。 

 イスラエルによるガザ侵攻が始まった昨年10月以来、各地の大学ではイスラエルに抗議するデモが行われていたが、今回の広がりのきっかけとなったのがコロンビア大学の「ガザ連帯」キャンプ。18日に構内に設置されたテントを警官隊が強制撤去する際、100人以上が逮捕されたことから、各地の大学で親パレスチナの学生たちによるキャンプ設営が広がった。22日にはニューヨーク大学で親パレスチナの抗議デモを行っていた学生ら130人あまりが不法侵入の疑いなどで拘束された。

 コネチカット州にあるイェール大学でも同日、退去命令に従わなかったとして45人が逮捕され、不法侵入で起訴された。さらにテキサス大学オースティン校でも同日、抗議者34人が立ち退きに応じなかったとして逮捕された。

警察の暴力的な取り締まり批判

 3月22日にコロンビア大学を訪れたニューヨーク州のキャシー・ホウクル知事は「学生たちがおびえている」とX(旧ツイッター)に書き込んだ。 抗議活動はコロンビア大学、イェール大学、ハーバード大学、ブラウン大学などのアイビーリーグはじめ、エマーソン大学やマサチューセッツ工科大学、ボストン大学、ミシガン大学など北東部を中心に、首都圏のバージニア工科大、ジョージ・ワシントン大学、そしてノースカロライナ大学、オハイオ州立大学と広がっており、西部では南カルフォルニア大学、カリフォルニア大学バークレー校などで活発となっている。保守層が多いとされる南部でも広がっており、逮捕者が出たテキサス大学のほか、ジョージア州にあるエモリー大学では25日、校内にテントを設置した学生たちに対しゴム弾と催涙ガスを使用、少なくとも28人が逮捕された。警察の暴力的な取り締まりに批判が高まっている。

これだけは知っておきたい日本の医療・介護と法的サービス

山口さん解説

 ニューヨーク日系人会(JAA)主催第16回春のヘルスフェアで、NY日系ライオンズクラブが企画したプログラム「ライオンズ大学:大人の教養講座シリーズ」第8弾が4月20日からスタートしている。第一限の講師は、山口里美氏(一般社団法人日本リレーションサポート協会代表理事)が「これだけは知っておきたい!日本の医療・介護とリーガルサービス」と題して講演している。

 日本では国民皆保険制度が維持されているが、いつまでも入院していることはできない。一般病床の種類は、急性期病床(病気を発症して間もない時期で14日以内、15日から30日以内の退院を誘導。できる限り早く転院・退院させたいケースが多い)、回復期リハビリテーション病床(病気発症から1、2か月後でリハビリで低下した能力を取り戻す病床、疾患により退院期日が決まっている)、地域包括ケア病床(病状が安定した患者に対して退院支援医療を提供する。疾患にかかわらず原則60日以内の退院が必須)の3種類がある。

 日本の高齢者施設は費用が安くて介護度が高い介護保険施設=特別擁護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院の人気が高いが競争率も高い。有料老人ホームには住宅型と介護付きがある。

 ケアマネージャーについての説明では、地域包括支援センターと居宅介護支援事業所のサービスの違いを解説した。続いて介護保険サービスの範囲について、介護保険法に定める、できることとできないことについて詳細を解説。例えばできることは、その場にいる利用者がいなくてはならないこと、本人に対する行為のみに限定されていることなどを紹介。生活援助での買い物も、酒やたばこなどの嗜好品や家族用の買い物をついで頼んだりすることもできない。ケアマネージャーやヘルパーがなんでもできるわけではない。

 財産管理は、まだ判断能力がある間に、自分の財産を管理してくれる任意後見人を指定しておく。元気なうちに公証役場で公正証書を作成することで成立。不足の事項については、正しいリーガルサービスの提供業者に依頼する必要がある、などと解説した。最後にシニアの心配事を無料で相談できるサロンも紹介した。帰国前にWEBサイトで相談することができる。動画リンクは https://youtu.be/SOAFr-G_2Us

NYで大橋禾苗・おおはしこうじ親子展

シャドーボックスの芸術

  ギャラリー60NYC(東60丁目208番地)で5月19日(火)まで、大橋禾苗・おおはしこうじ親子によるシャドーボックス展が開催されている。初日のオープニングレセプションには、大勢の来場客があり、カラフルな立体アートに見入る人々で賑わった。

 おおはしは「ニューヨーカーに作品を楽しんでもらえて嬉しい。次作へのモチベーションが高まります」と話していた。同展の企画はキュレーターの武内樹一さん。シャドーボックスは、ヨーロッパ貴族の遊びから生まれた技法。同じ絵を何枚も切り抜き、特殊な糊で重ねて奥行きを持たせるアート。今展のテーマはドラゴン。これまでに大橋親子が手がけた龍を題材にした作品を展示している。

 母親の大橋禾苗は、80年代のニューヨークでこの技法を学び、日本に持ち帰った。ミケランジェロや葛飾北斎などにも題材を取り、絵の解釈、カットの精度、奥行きの深さなど、従来のシャドーボックスの水準をはるかに超えるものを創造。ルーブル美術館の国際芸術コンクールでのグランプリ受賞作品には会場でも驚嘆の声が聞かれた。

 おおはしこうじが描くのは80年代のニューヨークで身に着けたカラフル・ポップな色彩感覚と大胆な構図の絵。

 今月開かれるグローバル・ビレッジ・NYC・アジアンマーケット&フードに先立ち、同イベントを主催するアップステイアーズ協賛のポスターに大橋の龍がタイムズスクエアを舞う最新作が採用されたことを記念し、ギャラリーツアーが5月7日(火)に午後6時から8時まで開催される。当日はキュレーターによる紹介がある。予約不要・軽食など提供。問い合わせは電話347・601・4323、Eメールgallery60nyc@gmail.com 武内さん。

アイヌ文化を世界に紹介する

映像作家
ドキュメンタリー「Ainu ー ひと」監督     

溝口 尚美さん

 ニューヨークマンハッタンの市庁舎街に近いダウンタウン・コミュニティ・テレビジョン・センター(DCTV)でドキュメンタリー編集・映像制作講師などの仕事に携わってきている溝口尚美さん。彼女にはもう一つの顔がある。先住民族の映画製作などをライフワークとして関わってきている中で、日本のアイヌの文化を海外に広める活動を行なっているのだ。

 兵庫県出身。1992年に映像プロダクションに入社し、映像制作の「いろは」を覚えた。95年から、フリーランスとして関西を拠点に、テレビ・VP・CM・映画など、さまざまなな分野の映像制作に携わるが、2002年、津野敬子著『ビデオで世界を変えよう』に感銘。市民メディアに興味を持った。文化庁の新進芸術家海外研修制度に2度応募するも落選。 しかしそんなことには負けず、2004年、自費でニューヨークに。津野氏が夫のジョン・アルパート氏と共同設立したアメリカで最も古い市民メディアセンターの1つ、DCTVの扉を叩いた。インターンを経て、現在に至っている。 

 2008年、米国で非営利団体シネミンガを共同設立し、世界の先住民コミュニティを訪れ、映像制作のための機材とスキルを提供し協働制作する活動をコロンビア・エクアドル・ネパールで実行した。これまでにディレクターとして制作した作品は100本以上。編集は400本以上に。 

 そんな溝口さんがアイヌに興味を持ったきっかけは2008年。シネミンガの同僚(南米出身)からアイヌ民族の事を質問され、一言も答えられなかった自分が恥ずかしかったという。母国の先住民族の事を知るために、北海道を訪問。アイヌのコミュニティラジオ局のあった平取町へ。アイヌ語教室で出会った川奈野一信さんの好意でその後、ホームステイをしながら平均年1回程度の割合で通い続ける。当初は南米の先住民族とのビデオ交流を模索していた。南米で制作した映画の上映会も行った。14年、シネミンガ辞任を機に平取町を再訪した際の雑談の中でドキュメンタリー映画「Ainu ーひと」の製作を決意し、2015年から3年かけて完成させた(https://www.ainuhito.com/)。二風谷アイヌ文化博物館と協働制作という形を取り、川奈野一信、元子夫妻を含む地元の古老4人を主人公に記録を始める。出来上がった作品とすべての撮影素材は寄付した。地域の人に映像制作のワークショップなども行った。 

 2018年6月 「Ainu ーひと」世界プレミア上映会を平取町で2日間に亘って開催。 9月には神戸と大阪で同時劇場公開。ホームステイで世話になった川奈野夫妻を舞台挨拶に招待し、工芸品などを販売するイベントも開催。満席の上映会となった。19年に英語版制作。これまで、世界中で10の映画祭に入選している。ブラウン大学やブリティッシュコロンビア大学など、学校での上映会やレクチャーも行った。今春にロンドンのジャパンハウスで開催されたアイヌ文化紹介イベントを見て、いつかニューヨークでもアイヌの人々を呼んで、イベントをするのが夢だという。    

 (三浦良一記者、写真も)

ハリソンで日本祭り開催

6月2日(日)駅前公園で

ハリソン高校の日本人生徒団体が企画

 ウエストチェスター郡ハリソン駅隣接図書館前の公園で6月2日(日)日本祭りが開催される。企画と主催はハリソン高校の日本人生徒40人以上が所属する生徒団体「いちしぶ」。日本人同士で米国の勉強を助け合うことを目的に昨年3月に設立された。毎週金曜日の活動を続けるうちに、メンバー間の結束が強まり、日本の良さや文化を現地の人にも伝えたいと日本祭りを企画した。日本食料品店OISHINBOが食材供給や寿司店HAJIMEが商品券、旅行代理店会社アムネットがスーパーボールすくいとヨーヨー釣りの2つのブースの出店など地元の協力も取り付けた。

 当日は折り紙、書道など日本文化紹介、輪投げ、モグラ叩きなどのゲーム、焼きそば、BBQ、焼きとうもろこしなどのフードのブースが出店する。会場では能登半島地震の情報をまとめて地震被害の深刻さを知ってもらい、被災地支援の募金も行う。

 現在主催者側では当日の会場でのボランティアとステージパフォーマンスの出演者、協力スポンサーを募集している。ボランティアは、中学生以上で社会人も可。ステージ出演は日本文化に関係する音楽またはパフォーマンスであることが条件。それぞれの応募は次のリンクから。

■ボランティア=

https://forms.gle/Nvpm9tFFxHzshCsq8

■ステージ出演者=

https://forms.gle/XQrHrsxnqNzssLxJ8

■問い合わせ

Eメール harrisonjapanesefestival@gmail.com 江尻さん

日本人の精神性ここに

稲垣沙織・著

ワンピース・ブックス社・刊

 何か大事なことをする時は、なぜか部屋を掃除したり、台所を片付けたり、机の上を綺麗に整頓したり、一見関係のないことをしてしまう。そんな心の準備をして、気持ちを整理してから大事な一件に取り掛かるということが多いのは実は、理に叶った動作であることがこの本で分かる。

 心と身体を整えて磨く「粋な女子道」の創始者で、 2011年から粋な女子道講座を日本で開講し、企業研修や小学校での特別授業など行っている稲垣沙織さんが昨年9月、英語本「IKI TOTONOE」をワンピース・ブックス社から米国で出版した。内容は、日本の精神性を自然と生活に取り入れて心と身体を整える方法を紹介。禅や武士道、マインドフルネスに近いカテゴリーになる。「禅は、起きることは自分の中に原因があって、自分を見つめ直すことによって現実を変えていく、自分との対話から答えを導きだす。禅や修行に見られるような師匠がいなくても、特別な苦行をしなくても、日々の生活の中で実践できる自分と向き合う方法、向き合い方をお伝えしている」という。

 本書は英語本で最初に日米で出版された。IKI TOTONOE と書かれている。IKIは「粋」であり、読む側にして見ると「息を整え」とも読める。

 身体は魂の乗り物であり、いつかそれを返す時が来るので、丁寧に使うこと。他人に施したことは良いことも悪いことも自分に戻ってくること、何かを得るということは同時に何かを捨てることを意味する、手放す美学を知ること、一日の始まりの5分はお茶を立てて瞑想してリフレッシュすること、寝る前は、感謝の気持ちで眠りにつくことなど、心をストレートな状態に保つヒントを紹介している。

 稲垣さんが3月21日、ブルックリンで出版記念講演会を開催した。会場の米国人参加者からは「忙しいニューヨーカーにはぴったりな気持ちのリセットの仕方だと思う」という感想が聞かれた。講演は米国でアニメ、日本食と日本文化に注目が集まるなかで、次に来るのは日本人の精神性であることを予感させた。同書を出版したサンクチュアリ出版取締役副社長でワンピース・ブックス社長の金子仁哉さんも来場し、「稲垣さんの本は、アメリカに住む読者にとっても、日々の生活にすぐ取り入れられるものばかり。ぜひ稲垣さんのTOTONOEメソッドを実践してほしいですね。毎日が充実すると思いますよ」と話している。

 職人が仕事の前に包丁を研ぐとか、誰に会うわけでもないのに出社する時に、ワイシャツに袖を通して、ネクタイをするのも、仕事をする前の儀式のようなものかもしれない。いざ、仕事の現場の渦中に入れば、なりふり構わず必死で闘いまくるわけなので身なりも心もどこかに預けてコトに及ぶわけで、ひと仕事終わった後で、ようやくふと気がついたように髪の毛をかきあげる冷静さを取り戻す。心の帰着点と出発点が同じであれば、またそれを繰り返すことができる。この本を閉じて、心を整えるということは、自分と戦う人間の心の平和を取り戻す所作、作法と見た。 (三浦)

編集後記

【編集後記】
みなさん、こんにちは。 落語家の柳家東三楼さん(47)が、芸歴25周年、真打ち昇進、柳家東三楼襲名10周年、米国移住5周年を記念して22日、カーネギーホールのワイルリサイタルホールで独演会を開催しました。日本の落語家がカーネギーホールで独演会を開くのははじめて。彼はこれまで「日本の落語を世界のRAKUGO」にとの使命でアメリカ、カナダと多くの英語公演をしてきています。Z世代の弟子を伴った珍道中や彼が海外で英語落語をやることを決心した自作の「動物園」のエピソードなども話し、名作の「時そば」「死神」「芝浜」を日英両語で通訳字幕なしで行いました。日本語が分からないアメリカ人の観客の多くは、パンフレットの英語解説を読んで理解して、結構、話についてきて笑っていましたね。東三楼さん、多くのお客様の温かく、強い拍手をもらって、25年の噺家人生で初めて、高座で泣いてしまいました。落語は稽古に稽古を重ねた形式美もありますが、アメリカのスタンダップコメディを座布団の上に座ってやっているような趣もあり、アメリカ人にも違和感はなさそうでした。これからも頑張ってほしいですね。ニューヨークでは、柳家東三楼さんと、外人の落語家、桂サンシャインさんが双璧で頑張っているようです。これからが楽しみです。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2024年4月27日号)

(1)柳家東三楼が独演会 カーネギーホールに笑い

(2)村上隆描く歌川広重 ブルックリン美術館

(3)おおはしこうじ親子展 シャドーボックスで竜描く

(4)フィラデルフィア桜祭り 日米の絆深める

(5)エッセイ入賞者を表彰 ストーニーブルック日本センター

(6)若手社員が交流 日系3団体が共催

(7)恋の歌も地球の叫びも 八神純子6月にNYライブ

(8)NYの舞台芸術に魅せられた元ヅカガール

(9)生き生きEATS 海老天の秘訣と蕎麦の美味さ

(10)米社会を魅了した日本人画家 犬飼恭平

柳家東三楼が独演会

カーネギーホールに笑い

 落語家の柳家東三楼(47)が芸歴25周年、真打ち昇進、柳家東三楼襲名10周年、米国移住5周年を記念して22日、カーネギーホールのワイルリサイタルホールで独演会を開催した。日本の落語家がカーネギーホールで独演会を開くのははじめて。

 東三楼はこれまで「日本の落語を世界のRAKUGO」にとの使命でアメリカ、カナダと多くの英語公演をしてきた。今回は「時そば」を日本語と英語、「死神」を舞台をニューヨークに移して英語で、名作「芝浜」は日本語で行った。日本語が分からない来場者もパンフレットの英語解説を見て内容を理解し、通訳、字幕なしで熱心に聞いて声をあげて笑った。公演後、東三楼は「カーネギーホールで落語会をする、と半分洒落で言っていたことが実現した。半分以上が英語で、しかも自分で翻案した作品だった。落語ファンには暮の代名詞、落語界の第九といわれる『芝浜』では、私の人生とも重なり、サゲを言った後、思わず涙がこぼれてしまった。多くのお客様の温かく、強い拍手をいただいた。これからも落語と私の応援をよろしくお願いします」と話していた。

(写真)「時そば」を話す東三楼(22日ワイルリサイタルホールで、写真・本紙・三浦良一)

おおはしこうじ親子展、シャドーボックスで龍描く

ギャラリー60NYC
4月27日から一般公開

 ギャラリー60NYC(東60丁目208番地)で4月27日(土)から5月19日(火)まで、大橋禾苗・おおはしこうじ親子によるシャドーボックス(切り絵アート)展が開催される。

 シャドーボックスは、ヨーロッパ貴族の遊びから生まれた技法。同じ絵を何枚も切り抜き、特殊な糊で重ねて奥行きを持たせる立体アート。完成品に光を当てると、まるで生きているように生命が蘇る。

 今展のテーマはドラゴン。これまでに大橋親子が手がけた龍を題材にした作品を中心に展示する。大橋禾苗は、80年代のニューヨークでこの技法を学び、日本に持ち帰った。ミケランジェロや葛飾北斎などにも題材を取り、絵の解釈、カットの精度、奥行きの深さなど、従来のシャドーボックスの水準をはるかに超えるものを創造。ルーブル美術館の国際芸術コンクールでのグランプリ受賞、バチカンのローマ法王からの表彰、日仏芸術親善大使、オランダ王室やザルツブルグ宮殿美術館からの表彰など、シャドーボックス発祥の地であるヨーロッパで最上級の評価を得ている。2018年には文部科学大臣賞を受賞し、日本国内においても、名実ともに工芸から芸術へと昇華した彼女の作品は「光と影の立体芸術」と呼ばれるようになった。

 若い世代や子供たちにシャドーボックスの裾野を広げたいと願う大橋禾苗は、やがて長男・おおはしこうじが描く、80年代のニューヨークで身に着けたカラフル・ポップな色彩感覚と大胆な構図の絵に注目。おおはしこうじは、自らのオリジナル・キャラクター、「熱血・目ヂカラ3歳児ルキぼん」と「 クマの王子マンハッタン」をフューチャーしたコミック・アートを制作。その原画を母・禾苗がシャドーボックスにして展示したところ、「人生が楽しくなる」「見るだけで元気になる」と大評判を呼んで以後、おおはしこうじは、電通の広告マンを辞めて母・禾苗のシャドーボックス用のオリジナル原画制作に打ち込み、コピックペンを画材に、浮世絵の要素も取り入れ圧倒的なスケールの絵を次々と生み出している。オープニングレセプションは27日(土)午後5時から7時。参加希望者は要予約 gallery60nyc.com

村上隆描く歌川広重

現代とコラボ
所蔵118点を公開

ブルックリン美術館

 ブルックリン美術館(200 Eastern Parkway)は今月5日から、歌川広重の「名所江戸百景(feat. 村上隆)」と題した展示を開催している。江戸時代の浮世絵師、歌川広重(1797〜1858)の同美術館所蔵の作品118点を展示。劣化を防ぐため普段は展示していないため、今回は2000年の展示会以来、24年ぶりの公開となる。

 「名所江戸百景」は1856年から58年にかけてかけて制作された連作浮世絵名所絵で、春のお花見、夏の暴風雨や両国の花火、もみじの落葉、雪景色など、江戸の四季折々の風景に出会える。広重の浮世絵は、幕末を迎えた江戸の名所と街並み、そこに暮らす人々が生き生きと描かれている。ゴッホが模写した作品として有名な亀戸梅屋敷、大きな鯉のぼりが泳ぐ水道橋駿河、雪の浅草寺など、大胆な構図に加え、同美術館の所蔵品は初摺りに近い貴重なものといわれているだけあって、その色の鮮やかさに驚く。また多くの作品に富士山が描かれており、江戸時代はこうだったのかと思いを馳せながら楽しめる。会場には、広重と村上隆による2部構成で200点以上の作品が並び、その数の多さと美しさに圧倒される。この企画展のために制作された現代美術家の村上隆による大型作品も同時公開されている。

(高田由起子、写真も。関連記事11面に)

歌川広重の江戸百景

ブルックリン美術館で


Utagawa Hiroshige. Kiyomizu Hall and Shinobazu Pond at Ueno (Ueno KiyomizudM no ike), no. 11 from 100 Famous Views of Edo, 4th month of 1856. Woodblock print. Brooklyn Museum; Gift of Anna Ferris, 30.1478.11. (Photo: Brooklyn Museum)

 ブルックリン美術館(200 Eastern Parkway)は今月5日から、歌川広重の「名所江戸百景(feat. 村上隆)」と題した展示を開催している(1面に記事)。江戸時代の浮世絵師、歌川広重(1797〜1858)の同美術館所蔵の作品118点を展示。劣化を防ぐため普段は展示していないため、今回は2000年の展示会以来、24年ぶりの公開となる。

 「名所江戸百景」は1856年から58年にかけてかけて制作された連作浮世絵名所絵で、桜の下でのピクニック、夏の暴風雨や両国の花火、もみじの落葉、雪景色など、江戸の四季折々の風景に出会える。そのほか江戸の地図や、タンス・下駄・番傘・のれんなどの民芸品も展示。

 この企画展のために制作された現代美術家の村上隆による大型作品も同時公開。江戸百景をモチーフにした作品の中には村上のポップなキャラクターも描き込まれている。また、広重が描いた風景が現在の東京にどのように変化していったかを写真などで紹介している。同展は8月4日まで。 

 入場料は一般20ドル、学生・シニアは14ドル、会員・4歳以下は無料。

 また29日(月)午後7時からは、村上隆がキュレーターと都市の歴史や環境の変化、村上の絵画の新シリーズなどについて語り合うトークイベントも開催される(入場料40ドル、会員24ドル)。詳細はウェブサイトhttps://www.brooklynmuseum.org/を参照する。