未来への扉をあけよう Mickey17 シネマ映写室

 近未来、人間が宇宙の惑星を移住先として考える時が来るかもしれない。人口増加で地球上に人間が溢れる。天災、気候変動、伝染病などで地球がもはや人間が居住する場所としては適さなくなる。それとも単にリクリエーションの別荘地を求めてもありだ。

 しかし、生活環境は変わっても権力、貧富の差など社会構造にそれほどの変化はないだろう。これらをテーマに「パラサイト 半地下家族」のポン・ジュノ監督がシュールなSFブラックコメディーを作りだした。原作はエドワード・アシュトンの「Mickey7」。

 主人公ミッキーには「Twilight」シリーズでブレイクした後「Good Times」「The Lighthouse」などかなり個性的な役柄を選んで活動するロバート・パティンソン。本作ではボロボロ、ヨレヨレのミッキーに挑戦する。共演はマーク・ラファロ、トニ・コレットら。

 何をやっても失敗し人生に失望したミッキーはある惑星が人間にとって生活可能かどうかを調査するミッションに参加する。職種は「何度でも生まれ変われるお仕事」というあやしいもの。

 つまり、惑星の環境をチェックするためのモルモットで空気、水、ウイルスなどの人体実験だ。ウイルスが体内に入り血を吐いてあっけなく死んでも、ミッキーのクローンがすぐに出来上がるシステム。しかもちゃんと記憶は継承される。死んでも生き返る、と思えば少しは安心だが、死に至る過程は気持ちいいものではない。

 ミッキーが17回生まれ変わったところでハプニングが起こる。岩穴に落下して死んだと思われたミッキーが生還し、すでに出来上がっていた18番目と対面したのだ。ここから、使い捨てにされ続けてきたミッキーが覚醒し、惑星植民地化計画が大きく変わりだす。

 原作は「7」だが映画の方は「17」とそれだけミッキーの体験・実験が盛りだくさんの証拠。意表を突くのは惑星の先住生物クリーパー。「風の谷のナウシカ」のオームそっくりでポン・ジュノ監督の宮崎駿監督へのオマージュだ。2時間17分。R。 (明)


■上映館■

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