【編集後記】
みなさん、こんにちは。東京にいた頃の学生時代は、高田馬場の駅から下宿のあった西早稲田まで学バスには乗らずに明治通りを歩きながら古本屋を何軒もはしごして1時間あまりタラタラと帰るのが貧乏学生の唯一の楽しみでした。学校は渋谷にあった割と裕福な家庭の子女が通う大学でしたが、地方から東京に出てきて下宿住まいの身には、予備校のあった高田馬場界隈の空気の方がなんだか気楽で自分らしくいられました。学生に優しい街だったこともあります。ニューヨークに来てからも古本屋通いは続きました。タイムズスクエアのドラマブックストアで、フランス映画ジャック・タティーの「僕の叔父さん」の脚本を見つけた時は宝物に出会った気分でした。日本の本や雑誌が恋しくなった時は、紀伊國屋書店やBOOKOFFにも行きますが、最近は男性雑誌がほとんど店頭から消えてなくなりました。店の人に聞くと、日本での男性雑誌の廃刊が相次いでいるのだそうです。仕入れたくても雑誌がないということらしいです。なのでもっぱら今は、中古レコード店めぐりが古書店に代わってマンハッタンでの楽しみになっています。米国ではアナログレコード人気が止まりません。NYグリニッジビレッジの老舗中古レコード店ビレッジ・リバイバル・レコードのオーナー、ジャマール・アルナスさんは17歳の時パレスチナから家族と米国に移民してきて叔父の経営するレコード店に勤めました。1994年に自分の店を開店、一時は休業も余儀なくされたそうですが2017年に「リバイバル」の店名で復活、コロナ禍の巣ごもり需要増でレコード人気に火がつき、2022年には全米のレコード販売枚数は4100万枚と1987年以来初めてCDを上回わり、経営の方もなんとか良いようです。店内には数万枚の世界中のLPが並んでます。映画音楽のサウンドドラックコーナーには「イージーライダー」や「大脱走」など懐かしいLPも。別の棚にはトムジョーンズとかビリージョエルとかモンキーズといった日本で少年時代に熱中した音源のオリジナルLPがぎっしり。今週号の1面でアナログレコードの衰えないリバイバルブームを紹介しています。いいお店もいくつか紹介しています。レコードはCDより音が深くて楽しめます。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)