トランプ、ゼレンスキー会談
トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日にホワイトハウスで会談。ロシアとの戦争終結に向けた和平交渉を巡り、ゼレンスキー氏は不満を表明、トランプ氏は支援してきた米国に対し「無礼だ」と非難、報道陣の前で激しい口論を繰り広げる異例の展開となり決裂した。予定されていたウクライナの鉱物資源の共同開発に関する合意は見送られた。昼食会も共同記者会見も中止となり、追い出されるようにしてゼレンスキー氏はホワイトハウスを後にした。
テレビカメラも入り記者を前にしての米大統領と外国首脳との前代未聞の決裂に米メディア各社は驚きをもって報じた。ニューヨーク・タイムズ28日付は「トランプ大統領、ホワイトハウスでゼレンスキー氏を激しい応酬で非難」との見出しで報じた。トランプ氏がゼレンスキー氏に対し「第3次世界大戦に賭けている」と述べたことなど会見を事細かく報じ、「記憶に残る限り、大統領執務室でカメラの前で訪問中の外国指導者をこれほど激しく非難した大統領は他にいない」とした。
同紙は、会談前に共和党のリンゼー・グラム上院議員がウクライナ支援を支持する超党派議員団の一員として「餌には乗らないこと。メディアや他に誰からもトランプ大統領との口論に巻き込まれないこと」とゼレンスキー氏に助言していたことも報じた。「タカ派でロシアに対抗するウクライナの強力な支持者だったグラム氏とマルコ・ルビオ国務長官がトランプ大統領と副大統領を支持したことは、共和党がいかにトランプ大統領に従っているかを示すものだ」と書いている。
ウォール・ストリート・ジャーナル28日付は「トランプ・ゼレンスキー会談が崩壊、平和への希望を脅かす」との見出しで報じた。「通常は密室で行われる意見の相違がメディアの前で明らかになり、議論の雰囲気は不和に変わった」とし、「トランプ政権が今後数か月間にキエフにどの程度の軍事的、政治的支援を提供する用意があるのかは不明瞭になった」と踏み込んだ。
首脳会談決裂 米紙の論調

ワシントン・ポスト2月28日付は「対立的な会談が米国のウクライナ支援を脅かす」との見出しで会見を詳細に報じた。「ゼレンスキー氏とトランプ氏の新たな関係を示すものとして会談は計画され、双方が楽観的な見通しを示していたことを考えるとこの展開は意外なものだった」としている。グラム上院議員から「餌に乗らないように」と釘を刺されていたことに関連し「ゼレンスキー氏がどうして罠にはまったのか理解できない」という西側の上級外交官の声を伝えている。
同紙は3月2日付でコラムニストのマーク・ティーセン氏の「ゼレンスキー氏の頑固さはウクライナに大きな打撃を与えた」とするオピニオン記事を掲載、「トランプ大統領との関係を修復するか辞任するかの選択を迫られている」としている。ティーセン氏はジョージ・W・ブッシュ大統領の元シニア・スピーチライターで現在はアメリカン・エンタープライズ研究所の研究員。会談前日、「鉱物資源取引はある意味で和平協定よりも重要だ。それが実行されればロシアは事実上戦争に負けたことになる」と同紙27日付で指摘していた。
決裂会談直前の2月26日から28日にCBSニュースとユーガブが実施した世論調査では米国民の52%がウクライナを支持し、44%がどちら側も支持しない、4%がロシアを支持すると答えている。