米国公務員の大量解雇 続々通知で大混乱

 トランプ米大統領と側近で実業家のイーロン・マスク氏が進める連邦機関の効率化に伴う大量解雇が加速している。トランプ大統領は1月の就任初日に大統領令でマスク氏をトップとするDOGE(ドージ)こと政府効率化省(Department of Government Efficiency)を設立。その目的は「連邦政府のテクノロジーとソフトウェアを近代化して、政府の効率性と生産性を最大化すること」としている。およそ300万人を擁する連邦政府職員の削減計画が急ピッチで進んでいる。

 手始めとして1月29日、2月6日までに退職に応じれば9月30日までの給与を支払うとフルタイムの連邦政府職員200万人に通知。ワシントン・ポスト紙によると7万5千人以上が応じたという。

 2月11日にトランプ大統領はイーロン・マスク氏率いる政府効率化省と連携しながら必要不可欠なポスト以外の職員を削減し、雇用も制限するよう指示する新たな大統領令に署名。人事管理局は2月13日、政府機関に対し試用期間中(勤務期間1〜2年)の職員を原則解雇するよう指示。退役軍人省で1000人以上、連邦森林局で3000人以上が解雇される予定など、教育省、中小企業庁、消費者金融保護局、一般調達局などでも試用期間中の職員を中心に解雇通知のメールが送られた。各国にある大使館も職員削減に備えるよう通知された。

 また政府効率化省のチームが同日、連邦税の徴収を行う内国歳入庁(IRS)を初めて訪れ、業務を視察。IRSの職員は8万人ほどだったが、富裕層の納税強化を進めるとして約10万人に増えていた。確定申告のシーズンで、この時期の大量解雇は還付金を当てにしている人たちに影響を及ぼす可能性がある。核兵器の備蓄の計画や製造、管理も担当している国家核安全保障局(NNSA)では、いったん解雇した原子力安全担当の連邦職員を呼び戻すなどの混乱も起きている。   

政府効率化省は違法と訴え
一方、5千ドルの還元案も

 ワシントンDCの連邦裁判所では14州の団体が、トランプ大統領が議会承認なしに政府効率化省に「制限のない法的権限」を与えたことは違法などとして訴えを起こしている。しかし米国際開発局(USAID)を巡っては、ワシントンの連邦地裁が21日、人員削減の一環として職員に出した休暇指示を認める判断を下したことから23日、重要ポストを除く大半の職員に休暇に入るよう指示がなされた。また少なくとも1600人の雇用削減に踏み切ると発表された。USAIDは解体、事実上の閉鎖に向かっている。

 政府効率化省は来年7月4日までに連邦政府予算のおよそ3分の1にあたる約2兆ドル(約300兆円)を削減目標に掲げている。これまでに削減した金額は17日時点で550億ドル(約8兆4000億円)とされている。

 政府効率化省の外部アドバイザーで、投資会社「アゾリア」の最高経営責任者(CEO)のジェームズ・フィッシュバック氏は、来年7月の政府効率化省の活動期限満了後、削減できたコストの一部から5000ドル(約76万円)を納税者に還付すべきと提案している。マスク氏は18日、X(旧ツイッター)への投稿で、提案について「トランプ大統領に確認する」と述べた。トランプ大統領は19日、フロリダ州の講演で「政府効率化省が節約した分の20%を米国民に渡し、20%を債務の返済に充てるという新しい案も検討されている」と語った。