昭和の女工哀史見事に描く
ハンターカレッジの日本語プログラムの学生が、1月30日から2月1日まで岸田理生(故人)による戯曲『スレッド・ヘル(糸地獄)』の共同制作を同大内ケイ・プレイハウスで上演した。これは2024年春に日本プログラムと演劇学科が提供した「現代日本演劇」コースに学生たちが参加したことを受けて、制作が決定したもの。演出はハンターカレッジの日本芸術文化学科教授であり、日本の舞台芸術を専門とするアレックス・ロガルス氏が担当した。この演劇は、コリーン・ランキ氏と常田景子氏による英語訳の『スレッド・ヘル』を使用して上演されるが、岸田の原作の日本語字幕も表示される。公演は一般公開された。
「糸地獄」は1984年に岸田(1946〜2003)の劇団、岸田事務所+楽天団によって日本で初演され、同年の岸田國士戯曲賞を受賞した。自分が誰なのか、どこにいるのかもわからないまま、1939年の日本で目覚めた女性マユの物語である。彼女は糸と絹糸の工場に連れて行かれ、そこで女性たちは昼間は絹糸を紡ぎ、夜は売春婦として働いていた。マユがこの悪夢から抜け出そうともがくうちに、この絹糸の店の裏に隠された真実が明らかになり、糸を操っているのは誰なのかが明らかになる。昭和の女工哀史を見事に描いたアメリカ人学生たちによる現代日本語劇。客席も米国人ばかりの中での上演だった。多くの日本人にも見せたかった作品であることは間違いない。将来の再演を期待したい。 (三浦)