国際語学教育機関Education First(本部・スイス)の2024年版英語能力指数で日本人の英語力は92位です。英語が母国語でない116か国・地域の調査で、韓国の50位などよりはるかに低く、「英語力が低い国・地域(62〜92位)」で最下位です。一人当たりGDP32位、国際競争力ランキング35位、メディアの自由度71位、男女平等125位、国会議員女性率148位など今の日本を示す数字の中で、私は英語力92位が最も深刻だと思います。
それは、資源に乏しい日本が、第二次大戦後貿易立国として台頭できた産業技術力や生産性が衰退し、勤勉性や協調性に優れた国民が貧乏になり、その人口が急激に減少している日本の未来の姿を象徴しているからです。
しかも初回の2011年の40か国中の14位、昨年の87位から本年の92位への凋落は深刻です。英語が母国語の米国や英国ではない国々の中でのこの順位ですから、なおさらです。「失われた30年」と言われる上記のさまざまな数字の中でも下落の速度が最速です。
語学としての英語であればChatGPTや自動翻訳で対応できる時代ですが、この「英語力92位」が示しているのは、自らの理念を持ち、異なる理念や文化を持つ人と本音のコミュニケーションが取れ、多様でグローバルな思考ができる国民とリーダーを生み出す場を自ら閉ざしている日本の姿です。
英語力1位は食料輸出世界2位のオランダ、2位はノーベル平和賞を選考する人道大国ノルウェー、3位は一人当たりGDPがアジア1位のシンガポールです。独自の特徴を生かして世界とともに歩んでいる特徴が見えます。
日本の低さは、奨学金ローン返済の負担も含めて外国に留学する学生が減り、国際的に引用される学者の文献が減り、円安での海外訪問の手控えも含め、内向き志向の拡大が背景にあると思います。
それ以上に、国民が自分で考え、行動し、国家が長期的、戦略的な舵取りを担うStatecraftの欠如が根底にあると思います。
日本被団協がノーベル平和賞を受賞しましたが、被爆国としての経験をいかした核なき世界や分断の増す世界における仲介外交を目指すなどの日本らしい貢献の時でもあります。
そうした世界との深い信頼と連携による真の民主主義国としての日本の再生こそが、英語力指数を高める道と思われます。
ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。