第二次トランプ政権下での移民法の規則2
先月お伝えしましたが、トランプ氏の第二次政権が2025年1月20日の大統領就任式から始まります。トランプ氏が選挙演説で、不法移民によりアメリカの犯罪が増加した、彼らがアメリカ経済を圧迫したと繰り返し主張していました。大統領就任後即座に不法移民の強制退去が始まります。不法移民とは、すでに
なんらかの条件で移民の滞在資格が与えられている人たち、つまり永住権を持つ
人たちのことではありません。ビザや滞在資格が切れてもそのままアメリカに滞
在している人たちや、アメリカとの国境を超えて滞在資格がないままアメリカに
滞在している人たちを指します。その方法としては次の方法を取るようです。
(1)建設途中だったメキシコとの壁の建設を完成させること。
メキシコとの壁は、第一次トランプ政権下で建設され、バイデン政権下では取
り壊されることもなく放置されていました。その建設途中の壁を完成させ、メキ
シコから地続きでアメリカに来る人たちを排除する方法です。
(2)アメリカ合衆国国土安全保障省内のImmigration Custom Enforcement (関税執行局、略してICE)で不法移民を国外退去させる。地続きでもなく何らかの方法でアメリカに入国して、正規の滞在資格のないままアメリカで暮らしている人たちを強制出国させるためにICEの費用を増額して職員を増員する予定です。ICEの不法移民退去部では、職員が不法滞在移民の存在を調査し、発見とともに出国させるようです。
(3)滞在資格のないままアメリカで子供を産んで、アメリカ市民になった子供たちと離ればなれになって収容施設にいる人たちを強制出国させる。その際にアメリカ市民の未成年の子供達も親と一緒にアメリカから出国させる。
(4)今後、子供の両親のうち片方がアメリカ市民または永住権を持ちアメリカで生まれた子供のみアメリカ市民権を与える。ただし、これはどちらかの親が不法
滞在者の場合の措置。どちらもなんらかのビザ資格がある場合は該当しない。
先月号の本誌でも記載しました(4)のアメリカで生まれた子供たちに市民権
を与えないというのはアメリカ合衆国憲法の修正第14条(アメリカで生まれた子供は自動的にアメリカ市民権が与えられる)に反することになります。ゆえに憲法改正をしない限り、この規則は施行できません。それゆえに、民主党議員および弁護士会からすでに反対意見が多くでています。最高裁で許可されるのは難しいでしょう。
通常の移民法の規則に関しての変更はおそらくないと思いますが、非移民ビザ
の申請条件を厳しくするという噂はでています。
なお、アメリカ全土の大学で、現在F-1ビザの留学生たちに今月本国またはアメリカ外に旅行する場合は、1月20日以降入国審査が厳しくなるので、必ずアメリカに1月20日までに戻るようにという勧告をだしているようです。生徒の国籍や出身国によっては、そのまま卒業するまでアメリカに滞在した方が良いともアドバイスしているようです。
どちらにせよ1月20日以降、詳細な移民法の規則が発表されます。規則が発表されてから、また皆様にお知らせいたします。
(加藤恵子、ニューヨーク州弁護士)