カラフルな現代版アレンジも
久留米絣(かすり)の芸術性と進化を探る1日限りの展示会とプレゼンテーションがニューヨークで9月26日開催された。この夏、坂田織物(福岡県八女郡広川町)に職人体験プログラムに弟子研修生として参加したアメリカ人テキスタイルデザイナー3人が、米国帰国後の体験報告をして実際に制作した絣の作品を展示した。日本から弟子研修生を受け入れた坂田織物の3代目代表取締役の坂田和生さんが来米し、久留米絣の起源から現代における意義までを語り、複雑な生産工程、この工芸品の文化的意義、そして久留米絣の保存と、日本国内および国際的な認知度向上に向けた取り組みについて講演した。
(写真上)来米した坂田代表(右)と訪日した研修生たち
パーソンズ美術大学の修士課程を卒業した3人のアーティストは、絣織りの技術や地元の生活様式に深く触れた福岡県久留米市での体験を語った。坂田氏によると、このプログラムは今年で3年目で、日本の絣織物産業が先細りになるなかで海外に活路を求めて見本市に過去何度か参加したが商談には至らなかった経験から、アメリカ人にその伝統と素晴らしさを実際に体験して知ってもらい、伝達者になってもらう試みに転換したという。「文化と産業の共存ができた例として参加者からはコンテンポラリーな視点で見直されている」という。
研修に参加したロミリー・リンクさんは「久留米絣は、生きた繊維で躍動感を感じ、職人の技術がこめられた伝統ある特別な文化だと思う」と話していた。
また会場では、久留米絣の伝統技法と和の暖かさを現代的に表現する展示も行われた。国際ファッション専門職大学4年在学中の現代アーティスト、宮坂 青さん=写真右=は色鮮やかな染色の中にダルマやおかめなど日本の伝統キャラクターをあしらった作品を展示した。自身も革と着物を合体させたファッションをテーマに作品を作っていたが、絣の魅力を知り新たな挑戦をしているという。