NYで個展開催中の日本画家
吉澤 舞子さん
ブルックリンのパークスロープにある非営利団体Jコラボで、6月21日から8月25日まで個展を開催している。同所は日米文化交流研究所「ブルックリン・ビューティー・ファッション・ラボ」としてこのほどリニューアルオープンしたもので、その開幕初日に来館者たちを魅了したのが1階ギャラリーで開催された吉澤舞子さんのボディペインティングの実演だった。
千葉県出身で、2008年に女子美術大学短期大学部造形学科絵画専攻で卒業、多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻三年次に編入し、在学中に雪梁舎美術館フィレンツェ賞展ビアンキ賞を受賞、11年に1か月のフィレンツェ研修滞在をした。12年に多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻日本画研究領域修了。
日本国内では秋野不矩美術館『加山又造と継承者たちー新たな地平を求めてー』(2023)ほか数多くの作品展を開催しているが、最近ではポーラ本社食堂に『エルピスの花冠』が所蔵され、企業のシンボルロゴなども手がける現代日本画家だ。
大学卒業当時は、感覚として、ナルシシズムを満たす行為を官能、方法として、欠如したものを取り入れる行為を生殖と考え、制作する動機とそれらの行為は、非常に近しいものと感じていたが、現在は、当初のテーマから少しはなれて東洋医学、全体として生きることへの表現を主軸にしている。内経図という医学解剖図があって、西洋医学のようにくまなく光を当て悪い部分を取るというのではなく循環をよくする方法で、漢方のような自浄作用で自己と他者、個と社会のかかわりを取り上げる。絵もまた循環をよくしないといけない対象であり、感情を吐き出す、自分にとって絵は箱庭療法でもあるという。
これまでの人生では絵が自分を救ってくれたと思っている。紆余曲折あった20代のなかで、絵が神様みたいなものになっていった。感情は人それぞれ、いろんな感情、蓄積された物語を作品に詰め込む。
「私の作品は、自己の体験を受け入れ、認識し、アイデンティティを再構築していく過程をテーマにしています。このテーマは、日本の自然環境と、その中での人々の生き方に深く根ざしています。日本は豊かな自然に恵まれていますが、同時に地震や台風などの自然災害とも共存しています。私たちは、これらの自然の力を受け入れ、それに順応することで、強靭さと調和の精神を育んできました。毎日絵日記のように言葉や文章を描き溜め、それを本画で組み合わせながら絵を作っています。AIが進む時代において、自らの中に蓄積された物語を平面の中で再構築し、それを発表することで絵画の持つ素晴らしさを伝えたいです」
ニューヨークでは、アウトプットばかりで日本で過ごした時間を自分のために少しだけ使うつもりだ。この地でインプットするものによって自分の中にどのようなケミカルの変化が起こるのかはまだ現在進行中の身には分からない。8月4日には、ヨガのイベントとアフターパーティーが作品展示会場である。この地における人との出会いもまた楽しみだという。
(三浦良一記者、写真も)