金継ぎに着想のアートジュエリーに熱い視線

ジュエリーアーティスト

MAIさん

 シルバーとゴールドが織り成す渋いオリジナルのアートジュエリーを作る。金継ぎの技術をヒントに修復のクラフトではなく、抽象表現のアートの世界に昇華させた。MAI(本名・小林麻衣)さん。東京に住んでいた時にロサンゼルスの友人に会いに旅行をして、その時に出会ったアーティストに感銘を受けたのがきっかけだった。独学でペインティングをはじめ、アートを追求するうちに更に自身の可能性を追求するため5年前に来米した。NYに着いた2週間後にはソロエキシビジョンを決め、更に立て続けにいくつかのショーにも参加するチャンスにも恵まれた。コロナ禍の自宅待機の期間中は、主に絵画制作に没頭したが、自身の内面の変化と共にジュエリーを手がけ、ブランドKOROMO jewelry が生まれた。日本の豊かな自然環境の中で日本酒職人で農家だった祖父、料理好きの祖母、縫製会社で働いていた母に育てられた。少女時代に自然からすべてが創造されるプロセスを教えられたという。禅と仏教感を尊重した印象を受ける作品は、自身の幼少期から現在に至るまでの生活習慣から生まれたものだが、見るものに媚びることのない静かな気品がそこに漂う。反骨精神と言ってもいい秘めた情熱が、世界の社会システムからの脱出と個人としての個性を尊重し、現在や人、社会、地球への優しさと恩返しを通して滲み出しているからだ。

 スタイリストの知り合いから頼まれ、米雑誌『ザ・アドボケイト』誌最新号で俳優、ウェイン・ブレディーのグラビアに小林さんのジュエリーが登場するなど、作品が一人歩きし始めている。個性的な造形が見る者を引き寄せてやまなない不思議な魅力を持っているからだろう。パターンに定まらない自由な発想から生まれた金継ぎヒントのアートジュエリーは、日本的なる見えない魂のルーツを塊にして表現した身につける芸術。小林さんの金銀織混ぜての「愛」の結晶だという。新潟県出身。  

 (三浦良一記者、写真も)