世界に羽ばたけ人魚姫

The Little Mermaid

 1989年の同名ディズニーアニメをいくぶん脚色した実写版。実際には実写とCGを使ったミュージカル仕立てで、色鮮やかでダイナミックなパフォーマンスが観客を存分に楽しませてくれる。

 元々はアンデルセンのおとぎ話がベースだが、人魚が王子さまのお妃になる、だけでなく今風に若者の探求心、冒険心そして未来に向かって突き進む挑戦と勇気が物語の柱となる。

 多様性は人魚の世界にもやってきたか、と思わせるのがシンガーソングライター、ハリー・ベイリーの起用。アフリカ系アメリカ人の主役抜擢に賛否両論が起こったが、実際に公開されてみると鈴を転がすような歌声、好奇心旺盛で聡明、時にはおちゃめな人魚姫アリエルのイメージにベイリーはぴったりはまっている。文句なしのキャステイングだ。ちなみに6月30日公開の「Ruby Gillman, Teenage Kraken」ではマーメイドが悪役になるというから固定観念の脱却は大いに歓迎だ。

 海の王国アトランティカのトリトン王(ハビエル・バルデム)には7人の娘がいる。末娘アリエルは冒険心が強く、近寄ってはいけないとされる陸の世界に大いに興味を持っている。ある日、航行中の船が暴風雨で難破し近くにある島国の王子エリックがおぼれそうになり、エリアルは必至でエリックを助ける。以来、アリエルは彼が忘れられず、一方、エリックも自分に美しい声で歌い語り掛けてくれた女性の顔がおぼろげながら心に残っていた。

 アリエルはエリックのそばに行くため、尾ひれを足に変えてもらおうと海の魔女アースラ(メリッサ・マッカーシー)と取引をする。代償はアリエルの美しい声だ。しかも「3日以内に王子とキスをする」ことが出来なければアリエルは海の藻屑となってしまうのだ。

 アリエルを中心にしたミュージカル部分の映像、音楽の素晴らしさは言うまでもないが、中でもメリッサ・マッカーシーが演じるアースラの怒りの乱舞は圧巻。監督はロブ・マーシャル。2時間15分。PG。(明)

(写真)アリエル(ベイリー)はエリック王子に町を案内してもらう Photo : Giles Keyte/ Disney Enterprises, Inc.


■上映館■

Regal E-Walk 4DX & RPX

247 W. 42nd St.

AMC Empire 25

234 West 42nd St.

AMC Loews 34th Street 14

312 W. 34th St.