【編集後記】 みなさん、こんにちは。なぜ、失恋の痛みはかくも深いのか? なぜ、多くの人は自分は損ばかりしていると思っているのか、なぜ、人は墓にこだわるのか、なぜ品川ナンバーは練馬ナンバーの人をバカにするのか、など一見無関係に見える人の気持ちやさまざまな日常現象もすべて「自己愛」という共通のレンズを通して見ればスッキリ納得する。今週の書評欄で取り上げた一冊の本に書き連ねてあることは著者自身が「学問的観点から見て、はなはだ客観性に欠けることばかりだ。しっかり吟味した根拠があるわけではなく、体系だった研究や地道な調査に基づくものではない。どれもこれも、友人のダンナが言うところの「Heavy Moon(重い月)=思いつき)に過ぎない」とある。本のタイトル『人は燃やせば骨と自己愛しか残らない』(東京図書出版)通り、全編がその一点で貫かれている。著者の木田橋さんは、40年以上にわたり米国で暮らし、現在はニュージャージー州フォートリー在住。市場調査会社勤務でキャリアを積む傍らビジネス関連記事を多数寄稿し、退職後はコロンビア大学客員研究員として社会の高齢化に関する研究活動を行ってきた。ここ数年、ダイバーシティーという言葉が企業で持てはやされ、コンサル報告書に「多様性」などと訳して書くと企業側から「ダイバーシティーそのままで」と注文がつくほど市民権を得た言葉だが、ダイバーシティーが進むとなぜ良いのかという点について著者は「序列の松竹梅」の中で、自分の価値を確認するのが難しい松以外の竹と梅が松と混じることによって新たな価値観や単に「正しいこと」以上に「質が高まると得になる」という価値創造のメカニズムがそこにあるからだと論じる。そして自己愛の究極は、他人がどう思おうと「Every one is special! You should proud of yourself (誰もが特別の存在! 自分自身に誇りを持つべきだ!)というスローガン。「オリンピックは参加することに意義がある」というが、オリンピックは参加するまでのハードルが恐ろしく高いので、所詮他者との比較は無意味だと。比較さえしなければ、極悪人であろうとも誰でも間違いなく価値ある人になれると説く。最後に若い世代が最近使う「YOLO!」。「You only live once)=人生は一度きり」という言葉を紹介する。「日常的には、高いけどこれ買おうかなあ。YOLO! 買ったら?」という感じで使うそうだ。人生は一度しかないという厳粛な事実を明確に認識し、その時々の自分の思いを大切に人生を積極的に楽しもうという自己愛と相性の良いモットーだ。実はまだ半分も読んでないけれど、面白かったので書評でご紹介しました。あと半分読むのが楽しみです。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)