マイナンバーカード(以下カード)が日本国内で保険証と一体化されることが発表される中「海外に住む日本人はどうやってカードを取得できるのか」との質問を頂きました。
結論は、保険証との一体化に先立ち2024年5月から取得できます。これは2019年5月に公布された通称デジタル手続法で決定されたものです。この法律は、現在はカードは、海外に転出し住民票が消除する際に返却しなければならないものを、海外転出後も消除されない住民基本台帳の戸籍の付票(※)を個人認証の基盤とするように改正して海外でのカードの利用を可能にするものです。
これにより、海外在留邦人のオンラインでの本人確認や、さまざまな行政手続も可能になります。この法律改正の背景説明として、住民基本台帳法制定時の1967年の約4倍の日本人の海外出国、デジタル化の進展による官民のオンライン手続の多様化、国外転出者のインターネット上の確実な本人確認のニーズの高まり、将来的には在外投票におけるインターネット投票、が挙げられていました。
国会で平将明衆議院議員が、現行法では、カードの変更や交付期限が切れると、その都度帰国して市役所等に行かなければならないが「それはあり得ないですね」と質問したのに対し、平井卓也デジタル大臣は「これはあり得ません。絶対にそういうことなく、何らかの方法を講じるということはコミットさせていただきたいと思います」と答弁しました。今政府内では、帰国しないで在外公館で対応できる改正が検討されています。
平議員が、海外日本人にカードを交付する意味は、この仕組みを使って在外ネット投票を可能にすることにある、と指摘したのに対し、総務省はネット投票による利便性向上と、システムのセキュリティー確保の両方を考慮し、できるだけ早期に導入していけるよう、着実に検討を進める、と答弁しました。
衆・参両院の選挙とも2025年が予想され、その1年前に海外日本人がカードを取得することは、在外ネット投票導入の環境が整うことになります。他方、カードが義務化されても保険証は廃止しない、と岸田首相の方針が変わるなど混乱しています。正念場を迎える在外ネット投票の国会審議を前に、カード拡大政策の混乱がその妨げにならないよう注視していく必要があります。
ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。
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(※)戸籍の附票 新しく戸籍を作った(本籍を定めた)時以降の住民票の移り変わりを記録したもので、戸籍簿とセットで本籍地の市区町村で管理している。この戸籍の附票を写したものを証明書として使うが、戸籍全部事項証明書(謄本)などと同じく、本籍地で取り寄せることが可能。