セクハラ認定で引責
ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事(民主党、63)が10日辞意を表明した。性的嫌がらせ(セクハラ)で辞任圧力が強まっていた中での苦渋の判断となった。同知事はセクハラの事実はないと今も否定しているが、州政府の業務停滞を避ける意味で引責辞任の意向を表明、2週間以内に実行される。NY州民主党委員会のジェイ・ジェイコブス委員長やチャック・シューマー連邦上院院内総務(民主党、NY州選出)、さらにバイデン大統領やペロシ連邦下院議長、デブラシオNY市長も知事は辞任すべきと発言していた。
クオモ知事は、新型コロナウイルスの感染拡大初期の昨年春から感染爆発が起きたニューヨークで陣頭指揮に立ちリーダーシップを発揮、政治手腕が高く評価されたが、ジェームズ司法長官が今月3日、特別検察官に指示した独立調査でクオモ氏が州職員など女性11人にセクハラをしていたとする報告書を発表、セクハラに関する連邦法と州法に違反したと断定したことで一気に信頼が失墜、州政府内でも孤立状態に陥った。
NY州議会の司法委員会はクオモ州知事に対する弾劾調査を進めており、13日まで同知事から追加資料や書面での反論を受け付けた後、弾劾手続きに向けた州議会の検討を月末まで行う予定だったが弾劾を待たずに辞任が決まったので、キャシー・ホークル(62歳)副知事が知事となる。フォークル副知事はもともとクオモ知事とは距離があると言われ、報告書が出るとすぐさまクオモ氏の「反発的で違法な行動」を非難する声明を発表。すでにフォークル氏の側近らはクオモ知事の補佐官などに連絡を取り、交代に向けて準備を進めているという。
最側近として秘書官を務めてきたメリッサ・デローザ氏(38)が8日深夜、辞任した。司法長官は、公表のなかでこうしたセクハラ行為を容認した職場環境にも言及、デローザ氏については被害者に対する不適切な言動をしたり、被害女性の機密情報を流すなど「報復行為」に関わっていたと指摘したほか、今年2月、クオモ知事が高齢者施設でのコロナによる死者を実際より少なく報告していた問題に関与したとして追及を受けた際は、トランプ政権(当時)との政治的対決のため死者数の公表を遅らせていたことを認めた。バイデン大統領はホワイトハウスで記者団に対し「クオモ氏の決断を尊重する」とコメントしている。
写真:辞意表明するクオモ知事(写真・NY州政府)
セクハラ認定から1週間
辣腕知事、女性で失脚
「親愛表現」と最後まで弁明
クオモNY州知事が10日、2週間以内に辞任することを発表した。これまでの発表や報告書によると、クオモ知事は公邸で部下の女性のブラウスの下に手を入れ胸を触ったほか、エレベーター内で自身の警備に当たる女性州兵の背中を首から背骨に沿って指で触るなどした。告発後に報復を受けた女性もいた。
ジェームズ司法長官は、今回の調査の「性質は民事」のため、州司法当局は刑事事件として立件しない方針としている。クオモ氏は会見で「誰にも不適切に触ったことはない」と反論。クオモ氏があいさつで老若男女を問わず抱き合ったり、キスをしたりすることはみんなにする。辞任は州政府が政府としての職務を続けるため」と述べた。
後任は現在のキャシー・ホークル副知事(62)が初の女性NY州知事に就任する予定。来年秋にニューヨーク州知事選が行われるが、出馬表明はしていないが現職離脱は政治家生命に大きな打撃となった。
来年秋の知事選には、後任知事のホークル氏や今回、クオモ知事による11人の女性へのセクハラ認定を公表し、クオモ氏を知事の座から追いやったジェームズ司法長官本人の出馬も取り沙汰されている。