桜の季節である。昨日、ビルの隣の花屋で桜の小枝を1本買ってきた。400円也。今朝起きたら満開である。テーブルの花瓶に生けた卓上の桜で花見を楽しんでいる。
ぼくのマンションから上野公園は歩いて数分。通常の散歩コースは東京藝術大学の正門前を通り過ぎて上野公園に入り、ゆっくり、ゆっくり歩む。植えこんだ黄色いチューリップが大噴水を取り巻いて美しい。若い夫婦が小さな子どもを遊ばせている。平和な光景だ。
さて、その上野の桜である。東京都はバリケードで物理的に散策できないように仮設工事している。1年で一番美しい上野の桜は昨年についで見られない。
これこそ異常でなくてなんだろう。
日本は新型コロナウイルスのパンデミックでパニック状態が続いている。毎朝、毎晩、コロナ、コロナである。「花見は止めて」と小池百合子都知事が懇願の声明、千葉、神奈川、埼玉首都3県知事も悲鳴の訴えである。
ぼくは79歳と高齢でかつ肝臓ガン。コロナに感染したらイチコロだが、このパニックの異常社会の方が怖い。
アメリカはトランプがコロナ蔓延初期、重要視しなかった。現在、死者が50万人超えたそうだ。南北戦争の犠牲者総数は62万人。それに次ぐ犠牲者が出ているというのにトランプはフロリダでゴルフを楽しんでいる。バイデンの大統領就任式サボって。
トランプを非難するアメリカ人はいないの?
パンデミックとは自然が新型コロナウイルスをこの地上のぼくらに贈り、反省を迫っているように思える。
もう一つ、3月11日は東日本大震災から満10年。ということは福島原子力発電所が爆発事故を起こして10年経ったということでもある。
3月3日、原発の危険性を生涯訴え通した小出裕章が、京都大学原子炉実験所を退職し、松本駅前で原発反対のデモに立った。「アベ政治の継続を許さない」と大書きしたプラッカードを持って、黙って。ごく普通の市民が通り過ぎてゆく。
小出は10年前の原発事故の際、注目された。原子力発電の危険性を核エネルギー研究者として生涯訴え続けた。「助教」という低い身分のまま。でも小出はめげない。松本の美ヶ原温泉で飲み歓談した。
コロナ蔓延から1年、フクシマ原発事故から10年。ことしの春は桜を観に行ってはいけない、という菅首相や小池知事らのお達しでぼくは自宅の卓上花見を楽しんでいる。
それなのに東京オリンピック・パラリンピックは断固やる、とお偉い方々は言う。なにかおかしいよね日本は。新鮮な東京レポートを送りたい。
(在京ジャーナリスト)