大統領令を乱発

野党「議会通して」NYタイムズ紙も苦言

 バイデン大統領は1月20日に就任すると、その日のうちに世界保健機構(WHO)への復帰など17の大統領令や布告などに署名(前号既報)、その後も25日に連邦政府機関による米国製品の購入を増やす大統領令に、27日に気候変動対策関連の大統領令に、28日には医療保険制度「オバマケア」の拡充や人工妊娠中絶を支援する団体への援助を可能にするよう命じる文書に署名した。29日までに25もの大統領令などに署名し、これらに基づく権限行使は40以上に上る。トランプ前大統領の就任時よりも多いペースとなっている。

 1月27日付ニューヨーク・タイムズ紙は「ジョー、大統領令を緩めよ」と題した社説を掲載、大統領令に頼るのではなく、重要な政策変更については議会を通じ法律を制定してやるべきだとバイデン大統領を批判した。

 連邦下院は民主党が過半数を制しているが、上院は共和党と同数の50議席でハリス副大統領が議長になるため過半数となるに過ぎず、法案採決を阻止する議事妨害「フィリバスター」を避けるために必要な60議席には届いていない。ニューヨーク・タイムズは、「二極化し、わずかの差で分割された議会では、行政措置を採用するか、議題が人質に取られるかのどちらかの選択肢しかないのかもしれない」と理解を示しつつも、「大統領令は政府に指針を提供することを目的にしており、既存の法律や憲法によって与えられた裁量の範囲内で行使されるべきものだ。新しい法律を作るわけでない」と苦言。また野党共和党から「行き過ぎであり、国の結束を求めるという公約を裏切ったとの非難が出ている」と指摘するなど大統領令乱発に「調子に乗るな」と言わんばかり。

 バイデン大統領は、議会での法案成立を経ず実行できるため大統領令を多発しているとみられる。大統領令は大統領が変われば簡単に変更できる。また連邦議会で大統領令を覆す法案が成立したり、裁判所が認めない場合は無効となる。