州政府が発表5日後に何者かが撤去
ユタの砂漠で発見
ユタ州政府は11月23日、同州南東部の人里離れたレッドロック郡の砂漠峡谷地帯の岩盤に、誰が設置したのか不明の高さ3・6メートルの金属製正三角柱が埋まっていると発表した。州政府が公開した写真を25日付ニューヨーク・タイムズ紙などが大きく写真入りで報道し、3大ネットワークもテレビのニュースで報じたことから「謎のメタル柱」が大きな話題となった。しかし27日には忽然とその柱が姿を消し、州政府は「複数の人が撤去したことを確認した」とだけ発表、誰がどのように撤収したのかは不明なため、今もダブルミステリーとなっている。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、同州自然動物管理局の職員が、野生の羊の生態系を観察するためにヘリコプターで砂漠一帯を調査している時に、峡谷の窪地の岩盤にキラリと光る金属物質を発見、接近して鉄柱のような物体が岩に垂直に突き刺さっているのを確認した。
ヘリコプターが近くの丘に着陸して職員3人が徒歩で峡谷まで降りていく様子がビデオ撮影された。職員は金属中が刺さった周りを観察して、肩ぐるまをして鉄柱の上部付近を調査したが手がかりになるものは得られなかったという。また、硬い岩に鉄柱を埋め込んだような工事の痕跡は残っていなかった。岩の切目に綺麗に突き刺さっており、深さがどこまであるのはか分からないという。
現場は非公開で、自動車やクレーンなどの工事用重機が入り込めるような場所ではなく、道路からも徒歩で人間が簡単に到達できるような地区にはないことから州政府は「一体誰がなんの目的でこの物体を設置したのかは不明」と発表した。
ニュースはまたたくまに世界に広まり「宇宙人の仕業?」「映画の撮影に使ったのでは」「前衛芸術家のインスタレーション?」中には「ワイファイ・ルーターでは」など様々な憶測が飛びかった。
同地では「インディアナ・ジョーンズ」や「スタートレック」「ミッション・インポッシブル」などの映画の野外撮影が行われているため、同紙はユタ州映画協会にコメントを求めたところ「発見された物体は、映画の撮影に使われた関係物ではないと判断する」との回答を得た。
芸術専門紙「アート・ニュースペーパー」は「2011年にニューメキシコで亡くなったミネアポリスの彫刻家、ジョン・マックラキンの作風に近い」と述べている。州政府も「誰かの芸術表現かもしれないが、州政府の土地に無断で建造物を建てることは違法だ。黙認しないために公開した」としている。金属物質は、ステンレスの板を人工のリベットで止めるなど加工した跡が見られたという。写真からもそれが視認できる。
似た作品NYの画廊に
その砂漠で発見された謎の3角柱に酷似していると指摘されたマックラキンの作品が彼が所属したマンハッタンのチェルシーにあるデビッド・ツイナーギャラリー(西20丁目537番地)にあるという情報を得た。早速行ってみた。作品はプライベートコレクションとしてロビーに一般展示とは別に階段の横にひっそりと設置されていた。鏡面で磨かれた状態で州政府が発表したようなリベットのようなものは確認できなかった。ギャラリーのオーナー、デビッド・ツイナー氏は「(ユタの物体は)これは明らかにジョンの作品だと思う」と当初NYタイムスにコメントしていたが、後日関係を否定した。
州政府では劣化の状態から1940年代から50年代に設置されたものと見ているが真相は謎だ。一部ツイッター情報では、27日深夜の解体作業を目撃したハイカーがいて、4人の男性が6時間かけて解体し「砂漠にゴミを捨ててはいけない」と言って手押しトロッコを使って撤去して行ったというが、そのグループが何者かは依然不明だ。
(写真右)マックラキンの作品(1日、NYの画廊で三浦良一撮影)