アーティスト
菊地 麻衣子さん
「日常の中で、もしこれがこうだったらどうしよう。そうはならなくて安心するのだけれども、がっかりもする。ファンタジーとは違う白昼夢。自分のワクワク、ドキドキ、怖い気持ちを他の人にも伝えたい」。ビジュアルアーティスト、シアターアーティストとして活動する菊地麻衣子さんは、1月に開催される国際的な舞台芸術祭「アンダー・ザ・ラダー・フェスティバル」で自作「デイドリーム・チュートリアル」を上演する。
ニューヨークには60〜70年代に全盛期だったパペットシアターの文化が根付いていて、ブロードウエーでもパペットが使われ、パペットシアターを見る機会があちこちにあるという。
パペットとの出会いは偶然だった。小さい頃からモノ作りが好きだった菊地さんは、武蔵野美術大学を卒業して働いたものの閉塞感があり、美術を学び直そうと渡米。ニュージャージーの大学編入後にプラット・インスティチュート大学院に進学した。卒業を前に1単位足りないことに気づき楽しそうだからと取ったのがパペットのクラス。「イスなどを人間が操ることもパペット。人がモノを動かすことで作る舞台芸術」と知った。「現実っぽいけど非現実的なことがパぺットなら表現できる」と、卒業後に講師のセオドラ・スキピタレスさんのアシスタントになった。思い起こせば、精神分析科医の父親が持つ「箱庭」で遊ぶことも好きだった。
そこからは続々と名だたる劇場で発表の機会を得る。2012年にはセントアンウェアハウスが若手に発表の場を与えるパペットラボでのレジデンスに。祖父の顔でマスクを作った「デイドリーマー・アンソロジー」は同ディレクターに気に入られ、特例で翌年もラボに参加、「ピンク・バニー」を発表した。ラ・ママ劇場で上演したら来年はソロ上演をと声がかかり、英語の早口言葉を6人が演じる作品を制作。「ピンク・バニー」は16年にジャパン・ソサエティーでも上演した。今年上演する「デイドリーム・チュートリアル」は一昨年から発展途上の作品を発表し続け、数か月前からザ・パブリック・シアターのレジデンスに選ばれ、その一環で今回初めて世界的な場で発表する。
「あれ、これなんだろう。変な夢を見たような感じ」と、観客がそうつぶやくという菊地さんの作品。ニューヨーク舞台芸術界の注目が集まっている。東京都出身。 (小味かおる)
■デイドリーム・チュートリアル=12日(日)午後1時、19日(日)午後7時、ザ・パブリック・シアター(ラフィエット通り425番地)で上演。入場料は25ドル。詳細はウェブサイトhttps://publictheater.orgを参照。