社会人こそ学ぶべし

石川 康晴・著
PHPビジネス新書・刊

 著者は、洋服ブランド「earth music&ecology」で有名な株式会社ストライプインターナショナル代表取締役社長。1994年、23歳で創業。現在30以上のブランドを展開し、グループ売上高は1300億円を超える。公益財団法人石川文化振興財団の理事長や、国際現代美術展「岡山芸術交流」の総合プロデューサーも務め、出身地である岡山の文化交流・経済振興にも取り組んでいる。今年3月に内閣府男女共同参画会議議員に就任した。主な著書に『アースミュージック&エコロジーの経営学(共著)』がある。
 著者が代表取締役社長を務める株式会社ストライプインターナショナル、その会社経営の原動力になっているのが、「学びなおし」である。著者自身、会社経営のかたわら、岡山大学経済学部に5年間通い、卒業。18年には京都大学経営管理大学院でMBA(経営学修士)を取得。そこから得た気付きをさまざまな経営判断や意思決定につなげてきた。また、公益財団法人石川文化財団の理事長も務めており、芸術文化支援事業のひとつとして現代アートの収集や展示を行っている。
 本書は著者の実体験をもとに、ビジネスですぐに応用できる「学びなおし」の方法を事例を交えながら紹介。次々と新規事業・サービスを立ち上げる「アパレルの革命児」が指南する、クリエイティブ人材になるためのコツが詰まっている。また、MBA理論、アート、遊び、地方といったさまざまな角度から「学び続けること重要性」について詳細に記されている。
「いいこと、しようぜ。」は、今年創業25年を迎えたストライプインターナショナルの新たなコーポレートメッセージである(英語表記で、Do good, but cook)。これは、著者が創業した頃に抱いていた思いであり、25周年を機に原点回帰しようと考え策定された。チャレンジをし続けていく一方で、当初の「遊び心」も忘れてはいけない。服を売ることだけではなく、人や社会、地域環境にとって「いいこと」をするのが私たちの仕事だと石川氏は語る。社会にインパクトを与えるには「大局観」をもち、新しいテクノロジーを導入するなど状況に応じた適切な判断を下すことが重要。そこで必要になってくるのが、学生と同じように、いやそれ以上に積極的に「学ぶ」姿勢だ。また、著者は「ビジネスパーソンこそアートに触れる」べきだと言う。アートに触れることで観察力と思考力が得られ、そこから創造力が鍛えられる。経営やビジネスで意思決定する局面において必要な「大局観」も養える。
 近年、リカレント教育(生涯教育)への注目が高まっており、社会に出てから教育機関に戻って学びなおすトレンドがでてきている。また、社会がダイバーシティーに向かい急速に価値観が多様化する一方で、AI(人工知能)やビックデータの活用を見据え、ビジネスパーソンには今以上の「想像力」が求められる。自分自身をアップデートするために本書を「学びなおしの教科書」として活用してみてはどうだろう。(西口あや)