美味しい漬け物のレシピ

舘野真知子・著
Tuttle Publishing・刊

 料理家・管理栄養士の舘野真知子さんが2年前に上梓した「きちんと美味しく作れる漬け物(成美堂出版)」では梅干し、ぬか漬け、白菜漬けなど定番の漬け物から山形の三五八漬け、東京のべったら漬け、長野の野沢菜漬け、京都の千枚漬けなど昔ながらのふるさと漬け、キャベツ、きゅうりはもとよりアスパラガスやセロリ、プチトマトなどモダンな即席漬けまで129品の漬け物を紹介している。特別な道具がなくても気軽に作れるレシピと分かりやすい手順説明、美しい写真が評判を集め、版を重ねている。その「きちんと美味しく作れる漬け物」を米国向けに翻訳、アレンジした本書が今月下旬に全米で販売される。
 舘野さんは栃木で8代続く農家に生まれ育った。管理栄養士として病院に勤務後、アイルランドの料理学校に留学。帰国後はメディアなどで活動した後、レストラン「六本木農園」の初代シェフを務め、現在は料理家として活躍、特に発酵食品の普及に力を注いでいる。仕事で日本全国を回り、伝統食品を知る中で発酵食品が多いことに気づいたことと、専業農家である実家に伝わる漬け物や保存食を紙面で残したい、との思いが漬け物本の出版となった。また、日本で国際交流を目的とした料理教室「Kitchen Nippon」の講師を長年務め、外国人向け日本料理のレシピが沢山たまり、海外での出版を考え始めた頃、日本食文化に精通するジャーナリスト、デボラ・サミュエル女史に出会い、自身の著書を数冊渡したところ、最も興味を持たれたのがまさかの漬け物本だった。デボラ女史監修のもと、1年半かけた翻訳とシミュレーションを経て米国での出版となった。版元であるタトル出版の創立者、チャールズ・タトル氏は第二次世界大戦後マッカーサー司令官の命を受け戦後の日本の出版業界再生のため日本へ渡り、任務終了後も日本にとどまり、洋書や洋雑誌の輸入と並行して日本の古書を米国の図書館に輸出するビジネスを始めた。以降タトル出版は60年以上に渡り「東洋の文化を西欧へ伝え、国際理解を深める良書を発行する出版社」を信条に文学や語学書、料理、芸術、手工芸、デザインなど、毎年150もの新刊を出版している。
 日本食がフレンチやイタリアンと並ぶ料理として定着して久しい。寿司や天ぷらだけではなく、肉じゃが、おひたし、きんぴらごぼうなどの家庭料理が好きだという米人が増えている。そんな米国人が市販の柴漬けでは物足らず、本書を読みながら自宅で腕まくりをして白菜漬けやキュウリのぬか漬けを作るようになるかもしれない。
 料理家として今後の抱負は?との質問に「発酵や伝統的なスタイルを尊重し、現代の日本の家庭料理の美味しさや魅力を伝える活動をしたいと思います。」と答える舘野さん。ニューヨークでは初めてとなるトークイベント「発酵食—美味しく食べて健康に!」を15日(火)午前11時から日本クラブで開催。発酵食品の魅力をおもてなし料理に役立つレシピと試食を交えて熱く語る。(砂)