「パルプ・フィクション」「キル・ビル」などオリジナリティーの高い作品で知られるクエンティン・タランティーノが脚本・監督する最新作。レオナルト・ディカプリオ、ブラッド・ピットのビッグスターが顔を合わせる話題作でもある。封切りの週末劇場成績はタランティーノ監督作品の中では最高の4000万ドルを突破した。
60年代のシャロン・テート惨殺事件をバックグランドに当時のハリウッド映画界をウィットとユーモアあふれるサスペンス仕立てで描き出す。
主人公は落ち目のテレビ俳優リック・ダルトン(ディカプリオ)と彼のスタントマンをつとめる友人のクリフ・ブース(ピット)。この二人にシャロン・テート(マーゴ・ロビー)、スティーブ・マックイーン(ダミアン・ルイス)、ブルース・リー、ロマン・ポランスキーら当時のハリウッド俳優や監督、さらにはチャールズ・マンソン率いるカルト集団の実在メンバーらを絡ませ観客の「先入観」を逆手に取ったストーリー展開を仕掛けていく。
1969年のロサンゼルス。リックは50年代にTVの西部劇シリーズで人気俳優となったが今はすっかり影が薄くなり、仕事の量が減るのと反比例で酒の量が増えるばかり。リックのスタントダブル兼アシスタントのクリフも余波を受けているが元々イージーゴーイングのせいかどっしりと構え、リックをなだめ元気づけるのが彼の役目でもある。
リックは最近ポランスキー監督と新進女優シャロン・テートが自宅の隣に引っ越してきたのを知りコネのチャンスをうかがっているがあまり期待できそうにない。リックのキャリアチェンジ、クリフのヒッピーたちとの関わりと並行し、ハリウッドの舞台裏やプレイボーイマンションでの華やかなパーティーなどいくつものエピソードをはさみながら、物語は妊娠8か月のシャロン・テートが惨殺された8月9日に向かってけだるい雰囲気の中でゆっくりと確実に進んでいく。
ディカプリオの劇中劇(リックが出演する西部劇)はノスタルジーと笑いを誘う強烈なアクセントになり、一方、ロビー扮するテートの存在はあまりにも新鮮。タランティーノならではのキッチュでクール、バイオレントな世界が広がっていく。2時間40分。R。 (明)https://www.sonypictures.com/movies/onceuponatimeinhollywood