魅惑のアメリカ旧国道「ルート66」をフォーカス
ルート66ファンの皆さん、こんにちは! 先月「梅雨がなければ」というお話をしたのもつかの間、日本は本格的な梅雨に突入しました。東京ではあまり強い雨は降りませんが、毎日小雨が断続的に降りしきり、筆者の小さな希望も儚く消えていきました(笑)。
さて、7月です! ルート66には待望の季節、6月〜8月は各地でさまざまなイベントが企画されます。そしてイベントと言えば切っても切れないのが、そう「音楽ライヴ」ですね。夏は音楽の祭典、アメリカでは6月下旬から独立記念日の週末にかけて行われるミルウォーキーでのサマーフェストを皮切りに10月まで多数の音楽イベントが開催され、ルート66上の出発点でもあるイリノイ州シカゴではブルース、ジャズ・フェスティバル、そして9月にはワールド・ミュージック・フェスティバルがあります。そのほか今年はミズーリ州レバノン、ニューメキシコ州トゥクムキャリ、イリノイ州スプリングフィールド、さらにはアリゾナ州キングマン等の各地でもいろいろな祭典があるようです。前置きが少し長くなりましたが、今月の魅惑の旧街道を行くシリーズのシーズン3、第4話は音楽の話をしたいと思います。
2014年のある夜、しばらく訪れていなかったルート66をまた走り始めようと思い立ち、そのお伴に何か良い音楽がないかと検索していたところに引っかかったのが「Road Crew」というバンドでした。アルバムのタイトルは「Songs from the Mother Road」。何ということ! こんなにぴったりなものは他にあるのか? と半信半疑でさらに検索すると、CDジャケットはセミアコっぽいギターの後ろにルート66の姿。これを私がネットで購入するのに3秒とかからなかったことは容易に想像できますよね?(笑)どのくらい感動したかといえば、手前味噌で恐縮なのですが16年1月より不定期で更新している筆者のルート66に関する個人ブログ「toshi66.com」でも第1話の題材として少し触れたぐらいなのです。
Road Crewは11年にテキサス州アマリロで開催されたある祭典で、International Route 66 Associationより「Bobby Troup Artistic Award」を受賞、その後テキサス州ルート66アソシエーションよりルート66の公式音楽大使として、ルート66上のフェスティバルでの演奏はもちろん、各地で公演活動にも精を出しています。
4人のメンバー全員がそれぞれ実力者。ご紹介しますと、まずメインボーカルを担当するひとり Don King Jr.は80年代にカントリーミュージック界で100曲以上の楽曲をチャートに送り込むことに成功し、Alabama、Crystal Gail、Reba McEntireらとも一緒に活動。15年にAmerica’s Old Time Country Music Hall of Fameに殿堂入りしました。ドラムスを担当するJason Harmonは敬虔なクリスチャンの家庭に生まれ育ち、その音楽活動も教会クリスチャン系の音楽と、少し変わった経歴の持ち主。Jasonの持つレコーディングとプロダクションおよびエンタメテクノロジーの知識と技術はバンドの屋台骨を安定させています。
ギター担当のWoody Bomarは、ミュージシャンでありながら起業家であり、「音楽の都」ナッシュビルに自身の音楽会社を経営していました。Woodyは元来ソングライターであり、Conway TwittyやLoretta Lynと共に80年代のヒット曲を連発しました。また現在でもカントリー音楽協会、アメリカーナ音楽協会、さらにはソングライターズ・ギルドの会員でもあるようです。そして最後のひとり、筆者が一番仲良くしてもらっているのがボーカルとギターを担当するJoe Loeschです。Joeは70年代のポップグループ「Solid Gold」のリーダーでした。彼らの代表作「Solid Gold 50‘s」と、MonkeysのMichael Nesmithと書き上げた「My Share of the Sidewalk」で大きな成功をつかみました。Joeはボイストレーナーとしても著名でそれに関する賞も数多く受賞しています。
と、ここまで紹介してきましたが、彼らの音楽は筆者の大好きな明るく軽快なノリのロカビリーベースのカントリーミュージック。現在リリース中の3枚のアルバム、いずれも真っ直ぐ伸びるルート66を空や山に吸い込まれるようにオープンカーで突っ走っていくには最高のお供です! ぜひ聴いてみてください!
実はRoad Crewの皆さんをご紹介したのは、その音楽の素晴らしさだけでなく、本当に親切で素敵な方々だからです。さきほど「一番仲良くしてもらっている」と書きましたが、ただの一ファンである筆者にも、まったく驕った素振りも見せず友人として接してくれ、一緒の時間を楽しんでくれます。筆者は15年、イリノイ州エドワーズビルで開かれた「Miles of Possibility」という年次会合に参加した際に初めて本人たちと遭遇できました。会う前にJoeとは1、2度メールでやり取りをしたので、当日初顔合わせ時もまるで以前から知ってるかのように気さくに振る舞ってくれた姿に感動したのを憶えています。その時Joeは、「私は1955年に父に連れられセントルイスからロスアンゼルスまで初めてルート66を走り、ディズニーランドのグランドオープニングに行ったんだ。それがルート66との出会いで、その時に経験した『地球上で最も幸福な地』と同じぐらい感動したんだよ」と語ってくれました。
今日もRoad Crewは精力的に活動しています。皆さんもルート66に出られる際は是非彼らのスケジュールもチェックして、その素晴らしい音楽と人柄に触れてみてください。(後藤敏之/ルート66協会ジャパン・代表、写真も)