山形って、やっぱり良いどごだな〜
「元気だが〜? 今は田植えの準備で忙しぇくて、毎日大変だ〜」父からメッセージと私の一番大好きな田植え前の田んぼの写真が送られてきた。期間限定の湖が一面に広がる様なそんな絶景を見れるのは田舎の特権。私が暮らすロサンゼルスは一年中似たような気候で、四季を意識する感覚が鈍ってきた今日この頃、父からの写真は故郷山形の初夏の空気を思い出させてくれます。そろそろ、夜にはカエル君達の合唱が聞こえるんだろうな〜。
山形からロサンゼルスに来て早1年。時が経つのはあっという間です。初めてこんなに長い期間山形から離れ、しみじみ望郷の念にかられる日々もあり、家族、友人といろんな所に遊びに行ったな〜と、過去の思い出が蘇ります。
あれは確か小学生の頃。人生初、山寺に家族と一緒に参拝に。山寺は山形を代表する観光名所で、千年以上の歴史を誇る由緒あるお寺です。歴史的偉人の松尾芭蝉が訪れ、句を詠んだことでも有名です。山寺は1000段を超える石段が続き、登った先の五大堂からは美しい山々の風景を眺めることができます。なんでも、石段を登るごとに煩悩から解き放たれ、悪縁切りのパワースポットでもあるとか。幼かった私は最初は何の気も無しに、玉こんにゃくをほおばりながらとぼとぼ石段を登っていました。中盤になって、むむっ、家族のメンバー数人の姿が見えない。どうやら登るのを断念した模様。父と祖父と私はひたすら登り続けます。だんだん足が上がらない、なんか貧乏ゆすりみたいなのが止まらない。初めての状態にビビり始めたその時、ようやく五大堂に到着! 幼いながらもあの美しい景色に感動したのを覚えています。家に帰る車内で、「まさか登りきるとは、思わねがった」と家族に言われ、ちょっぴり得意気になったプチ旅行でした。もしかすると、疲れた、もう嫌だ〜という煩悩からあの時だけ解き放たれていたのかもしれません。
「何すっぺ?」「温泉さでも行ぐが?」何もないそんな山形では、友人とよく日帰り温泉に出かけてました。まっ、何もないのが宝物だったりするんですけどね(笑)。とある年末年始のお休みに、書初めならぬ温泉初めに蔵王温泉へ。その年は雪もそこまで多くなく、年始に活動的になれました。山形の冬は行動範囲が雪でだいぶ制限されます。身の危険を感じるくらい真っ白な吹雪になることも。そんなことはさておき、約1時間30分の旅を終え、無事蔵王温泉へ到着。車から降りた瞬間、あの硫黄の匂いが。これぞ温泉! 気軽に温泉を味わえるのは山形の醍醐味。全市町村に温泉が湧き出ているんですよ〜。我々が行った温泉は、露天風呂が豊富な日帰り温泉施設。その日は青空のなか、澄んだ冬の空気と温泉を楽しめました。友人と他愛もない話で盛り上がっていたら、ん、なんかフラフラするぞ。のんびり温泉に浸かっていたらのぼせてしまいました。冬の露天風呂はあまりに心地良くて、ついつい時間を忘れてしまった〜。皆さんご注意を!
「今日は、かいもち食ってきたがら、まだ腹くっちぇ!」祖父がしばしば夕食前に言っていたフレーズ。初めてこの言葉を聞いた時、いったいかいもちとは何ぞや? と、頭いっぱいにクエスチョンマークだったのを思い出します。今でも祖父を偲ぶときは必ず出てくるこのフレーズ。このコラムを書いている今も、思い出し笑いが止まりません(笑)。かいもちは、いわゆる「そばがき」のことです。山形はそば王国。各地域で美味しい日本そばを味わえます。私の初かいもち体験は、確か中学生の時。我々姉妹の出身高校の近くに、祖父一押しのおそば屋さんがあります。姉を迎えに行ったその帰りに、そこで家族みんなでかいもち体験。「う、うまい!」あのもちもち感に衝撃を受けた春の昼下がり(笑)。あれ以来、家族一同かいもちファンになりました。
今、ロサンゼルスで地元山形のコラムを書いている。なんだか不思議な気持ちです。それと同時に、「山形はおもしゃいどごいっぺあんな〜(面白いところがたくさんあるな〜)」そう改めてしみじみ感じています。正直、ここに書ききれないくらい山形ネタは湧いてきます。田んぼの中で、ひときわオーラを放ちながら咲き誇る龍蔵桜。歴代最高気温を記録した山形の暑い夏を乗り切る冷やしラーメン。山形の秋の風物詩いも煮会。やわらかな灯りが煌めく雪灯篭祭り。きっと山形はちょっぴりPR下手。このコラムで山形ファンが少しでも増えてくれたら嬉しいな〜。(IACEトラベルロサンゼルス支店/金田実佳子)