セント・ジェームスのボーダーストライプ・シャツ

イケメン男子服飾Q&A

 ようやく暖かい日が多くなってきました。ニューヨークの今の時期は正に新緑
の季節、1年のなかで最も気持ちの良い季節ですね。今回はフランスの老舗のニットメーカーについてお話をいたしたく。
 セント・ジェームスという名の会社なのですが、フランス・ノルマンディーにある都市の名でもあり、同地にて1889年に創業しました。近くにモンサン・ミッシェルがあり、同社のロゴの図柄にも取り入れられております。周辺の干潟地においては羊の餌となる草がたくさんあって羊牧に適しており、近代以降 羊毛紡績並びに綿紡績共に盛んとなった地域なのです。
 セント・ジェームスとは元々英語ですが、フランスの会社ですので本来は「サンジャム」といった発音になるのですが、アメリカでも日本においてもセント・ジェームスの方が通りがいいような感じがします。
 ノルマンディー地方は歴史的に英国とフランスの争いごとが起き、そのために両国の人たちの交流が盛んな地域であり、今日においてもティーの習慣、食事など英国的なライフスタイルの方が多い地域なのです。 
 同社の歴史的看板商品はボーダーストライプのセーターです。海に面した地域なので、天気が良くない時でも安全上目立つ必要があるからなのですが、漁師の人たちが着るセーターは羊毛で、なぜかと言うと海に落ちた際、体温を逃がさない性質があるからなのです。またフランス海軍の水兵さんには上質の綿素材でしっかりと織り上げたボーダーの長袖や七分袖のネックが横に広いボート・ネックです。どちらも一般の人たちにも着られるようになってロングセラーとなりました。ちなみに当地においてはborder stripeよりもBreton stripeの方が通りは良いかと。
 御存知のように歴史的にニューヨークには英国、フランス両国の影響が色濃く残っております。建国100年の際、フランスから自由の女神が贈られたことがその証左です。そしてこれからは海や湖においてウォーター・スポーツの季節。男性が着ますとよりたくましく見え、女性が着ますとより可愛いらしく見えるシャツだと思うのです。マジソン街には同社の店舗もあります。
けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス・カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。