チャールズ・カヌーセン・著
南雲堂・刊
家族の都合により長期滞在した外国での暮らしを終え、日本へ帰国した後の帰国子女を対象に、英語力向上とソフトランディングをサポートする「帰国子女アカデミー」の校長が、帰国生を持つすべての家庭に贈る指南書『帰国子女 帰国の前に親子で読む本』。
海外生まれだったり、それまで当たり前のように通っていた慣れ親しんだ日本の学校を途中で抜けて家族とともに海外へわたる子供たち。まずは訪れた国の言葉や環境に戸惑い、友達づくりや学校生活に適応していくのも子供にとっては大きなストレスとなるはずだが、大人が思う以上の努力をして国際感覚や英語力を身につけていく。彼らは外国でやりたいことや行き先を自分で決めた「留学生」ではないため、すぐには受け入れられない環境の劇的な変化で鬱(うつ)になったり不登校になってしまう場合もあると聞く。そしてやっと慣れた海外生活の、やっとできた友人たちに別れを告げてまた家族の都合で日本の学校へ戻る時、立派な「帰国子女」となって日本で逆カルチャーチョックを味わうのだ。
そんな状況になったことなどなく、私のように子供時代をずーっと地元の小中学校で過ごし、大人になるまで近所の友達と遊んでいたような者からしたら、帰国子女というとなんだかちょっとかっこよくて憧れてしまう存在なのだが、当人たちは普通の子供の2倍も3倍も努力している。
著者のカヌーセン氏は、帰国生・バイリンガル生用英語塾「帰国子女アカデミー」の創立者・CEOで、日英両語でプログラミングを学ぶコーディングスクール「Kテック・アカデミー」と「KAISインターナショナルスクール」の創立者でもある。帰国子女アカデミー創立前は、渋谷教育学園渋谷、中央大学高等学校等で英語指導を行いつつ、本紙「週刊NY生活」ほかで海外赴任者向けに教育関連記事を定期的に執筆してきた。
本書の前半は帰国生が置かれる状況や帰国枠受験について、その帰国子女向けの英語クラスがある学校の選び方のほか、外国で身に付けた英語力を維持するだけでなく、向上させるうえで役立つさまざまな学習方法について考察している。後半では人付き合いや気持ちの面など、帰国してからぶつかる困難や課題を取り上げ、教師やカウンセラーの意見のほかに著者自身の見解も述べている。帰国後の日米教育のギャップ、いじめ、親に出来ることなどのほか、心のケアの必要性も暖かい目線で丁寧に説明されている。また、付録として「帰国子女のための国内外の大学オプション」、「帰国子女枠入試における英語試験の見本」などの情報も収録している。
この春、さまざまな理由から家族とともに海外で暮らし始めた人も多いだろう。これから自分の子供が帰国子女になる予定がある人には、いざ帰国する時の準備として役に立つだろうし、帰国してからの子供にふりかかる心の問題などに対してどう寄り添い、そして理解するための多くのアドバイスが得られる必読書となる。 (高田由起子)