河野 玄斗・著
KADOKAWA・刊
とかく現代は誘惑が多い。テレビをつければさまざまな番組が放送されているし、動画投稿サイトで映像が見放題、SNSでいつでもどこでも誰かと話せてしまう。それらの娯楽についつい時間を費やしてしまい、勉強、とりわけタメになる何かを身に着けることを怠ったために後で痛い目を見る人も多いのではないか。
この本は勉強の効率を突き詰め、誰でもすぐに使え、必要なことすべてを網羅的に、かつ、詳しく記した実用書である。学生であれば受験勉強、大人であれば資格勉強など、誰にでも勉強する機会はあるはずだが、ついつい誘惑に負け娯楽に走ってしまう、そんな人に読んでもらいたい一冊だ。
著者は小学2年生で公文の中学数学基礎課程を、小学3年生で高校数学基礎課程を終えた現役の東京大学医学部学生である。これだけ聞くと、「天才だから頭のつくりが違う」と思いがちだが、中学受験で第1志望校に落ちるなどの失敗経験もあるので、とてつもない努力家なのだと感じる。また、東大2年生の秋から司法試験の勉強を始め、たった8か月で司法予備試験(法科大学院に進学しない人が司法試験受験資格を得るための試験)に一発合格し、4年生の時に司法試験にも一発で合格している彼だが、司法試験勉強中の医学部の定期テストではギリギリ単位が取れる程度の点数を目標にしていたというのを聞くと、ごく一般的な学生という印象を受ける。では彼にあって他の人にないものとはなんだろうか。それは勉強を楽しんでいることである。
どうしたら彼のように勉強を楽しめるようになるのか。答えはこの本に書かれている。本書では誰もが知っているPDCAサイクルの大切さを導入部分で語った後、勉強する意義やモチベーションを保つポイント、「逆算勉強法」といった勉強を楽しむコツや効率的に学ぶノウハウを紹介。さらに勉強を成功に導く4つのテクニックと高校生向けに主要5教科(国語、数学、英語、理科、社会)の受験対策や司法試験体験談も収録している。
彼は闇雲に勉強するのではなく、目標を見据え計画したものを実行し、その改善点を見つけて次の計画に反映させることを繰り返すことが大切だと語る。目標は、「国を良くしたい」、「困っている人を助けたい」といった崇高なボランティア精神でなくても構わない。例えば、お金が欲しいから、将来高学歴な人と結婚したいからなど、俗っぽくても害がなければ良いというのである。それが誰かのためになれば結果オーライであり、さらに自己肯定感や幸福感といった自分のためにもなる。
何事も楽しめるかどうかは自分次第。今、何をすることが自分の幸福に繋がるのか考えて優先順位をつけ行動することは、結果として失敗したとしても悔いは残らないものである。娯楽の多いなか、後回しにしがちな勉強を楽しいものと捉え行動することでより良い自分になれるなら、むしろ勉強こそコスパ最高の娯楽であるといえる。(西口あや)