吃音症ウエアラブル デバイスを作った
福岡由夏さん
福岡由夏さんは小学2年生、8歳の時に難発性吃音を発症した。国語の教科書を朗読するときに焦ってしまって、思うように言葉が口から出てこない。「あれ、なんで?」と最初はあまり気にしていなかったが、緊張したりするといつも言葉が詰まってしまい、自意識が高まってだんだん人と話すことに臆病になっていく自分がいた。周囲に理解されない幼少時代を過ごし、吃音症を発症した当時の教師や親からの不理解、同級生からのいじめやからかいがつらく、しかし吃音症の認知も進んでおらず、自分がなぜ普通に話せないのかを理解することができなかったという。当然周囲に自
分が吃(ども)る理由を説明することも出来ずに、練習しても周囲の友人達のように普通に話すことが出来ない自分自身に対する劣等感や孤独感は強まる一方でだった。でも小さい時から絵を描くのが好きで、人と話す必要がないのでこちらは気を楽にして没頭することができた。
多摩美大で情報デザインとサービスデザインを学び、同大卒業と同時にヤフー!ジャパンへデザイナーとして入社。同時に、東大大学院の情報学環に研究生として入学し、夜間授業に通っていた。しかし、入社2年目で退社し、単身ニューヨークへ。スクールオブビジュアルアーツのマスターコースに進み「社会を改革するデザイン」を専攻、昨年5月に修了して現在は米国でデザイナーとして働いている。
日本にいたときに、吃音症という言語障害に関するプロジェクトを数多く行ってきた。プロジェクトは、大きく分けて2つある。1つ目は、吃音症を疑似体験することが出来るウェアラブルデバイスを開発したこと。2つ目は、吃音症により生じる社交不安障害を軽減するためのVR(バーチャルリアリティ)アプリを作ったこと。
マイクロソフトのイマジンカップという次世代の技術コンテストで米国のセミファイナリストに選出されたが、ファイナリストとして世界大会出場することは叶わなかった。米国の吃音者団体とも連携し、認識周知に貢献できたと自負している。社交不安障害を軽減するアプリも緊張を緩和するノウハウが詰め込まれている。「自分自身が吃音症で苦しんできた経験を糧にして、誰よりも当事者達に寄り添い、自分自身のアウトプット能力を活かせるデザイナーとして、彼らがより生きやすい社会システムを作っていきたい」と話す。インタビューの間、一度も吃らずに普通に会話していたのが印象的だ。 (三浦良一記者。写真も)